Obaiya Arabian Classic: PA-G1 Riyadh Dirt 2000m

毎回Purebred Arabianの情報を集めるのは苦労する。血統は公式関係とAll Breed Pedigree Queryをメインとして確認するものの、不明なところは残る。サウジアラビア調教馬はJockey Club of Saudi Arabiaでデータを集めた。オマーン調教馬が出てきて面食らったが、Horse Racing Club(rhrc.om)が見つかったので戦績の確認ができた。またアメリカ産馬はEquibaseで、フランス産馬はFrance Galopで情報を取れるだけといったところ。

サウジアラビア国内のレーティングではトップとなる128を持ち去年の勝ち馬でもあるTilal Al Khalediahは前日の芝G1 Al Mneefah Cupに回っており、同陣営のAsfan Al Khalediahがレート127で大将格となる。レートは別として現時点の充実度ではAsfan Al Khalediahが上回ると評価されているのではなかろうか。続いてレート126がNajeeb Alzaman、123がVizhirとなっているが、Asfan Al Khalediahがちょっと抜けているのではないか。AlkhalediahはAsfanに加えて、QaswaratとSaloumの3頭体制でレースに挑む。

斤量61kgの定量戦で、4歳馬は56kg、牝馬には2kgのアローワンス。

公式のレースカードが出ましたが、アラビア文字からアルファベットへの転写でブレがでてるのかな。

Al Mufham S B: Big Easy - Tabarak Al Rahman by Biribi

オマーン産馬、オマーン調教。レート110、B. Alhajri厩舎、M. Al Balushi騎乗。

7歳馬で、2021年にAl Rahba競馬場で開催された2000mのOman Derby勝ちという実績がある。なお、Oman Derbyは国内産馬に対して2kgのアローワンスが設定されており、斤量56kgでの出走だった。58kgを背負う外国産馬には厳しい条件のようである。

近走成績はいまいちで今シーズンはAl RahbaのShatti Al Jissah Hで2着しているが、前走のIbriでのBeit Almarah Fortは7着となっている。

Asfan Al Khalediah: Laith Al Khalediah - Mistahilat Al Khalidiah by Dormane

サウジアラビア産馬、サウジアラビア調教。レート127、N. Mutlk厩舎、A. Alawfi騎乗。

13戦13勝の5歳馬。去年のSaudi Cupイベントでは芝G2 Al Mneefah Cup勝ちの実績もあるが基本はダートでの出走である。前走は1400mのGulf Cup Arabian Horsesだが、8馬身半差で圧勝。2000mではTaif Arabian Horses Derbyを6馬身1/4差ととにかく強い。今年は陣営のエース格だったTilal AL Khalediahを芝に追いやってメインを張ることになった。

Dergham Athbah: Af Albahar - Mandragore Al Maury by Dormane

UAE産馬、サウジアラビア調教。レート118、L. Gaitan厩舎、A. Moreno騎乗。

7歳馬。前哨戦となるAl-Dareyah Cupの勝ち馬。

Hiab al Zaman: Hilal Al Zaman - My Shelby Cobra by Kaolino

アメリカ産馬、バーレーン調教。レート114、F. Nass厩舎、A De Vries騎乗。

ノースカロライナ産の7歳馬。バーレーンのFawzi Nass厩舎の所属になっているものの、Bahrain Turf Clubではヒットせず当地での出走実績は確認できない。2021年にSam HoustonのG3 Texas Arabian Derbyを勝ち、Lone StarのG3 Texas Arabian Stallion Sも勝った。翌2022年にPimlicoのG1 UAE President Cup Sを勝ったのがアメリカでの最後のレースで、次のキャリアは2023年のMeydan G1 Al Maktoum Challenge Round 2であった。これを4着して昨年のObaiya Arabian Classicで8着というのがEquibaseで追跡できる限りのキャリアである。

アメリカはアラブ馬の生産においても世界最大規模ですが、その使途はアマチュアのレクリエーション向けやレイニング競技用などであり、競馬開催はPimlicoのG1 UAE President Cup Sを筆頭とし、テキサス州を中心に開催されているようです。

Honey Proof: Nf Proof - Sweet Honey Aa by Burning Sand

アメリカ産馬、アメリカ調教。レート116、R. Tuley厩舎、J Montalvo騎乗。

ミシシッピ産の5歳馬。重賞勝ちはなく、去年のG2 Texas Arabian Stallion Sでの2着が大きな実績といえる。前走はSam Houstonの条件戦を勝っている。

Najeeb Al Zaman:Hilal Al Zaman - Labwah by Asad Saif

フランス産馬、サウジアラビア調教。レート126、A. Almosa厩舎、C. Ospina騎乗。

5歳馬。フランス時代はローマで勝っている記録がある。おそらくCapannelle競馬場だろう。2022年のG1 Qatar Arabian Trophy Des Poulainsで7着になったのを最後に移籍した。去年のTaif Arabian Horses Derbyの2着馬だが、Asfan Al Khalediahとの差は大きい。というかフランス時代はAl Ghadeer、サウジアラビア時代はAsfan Al Khalediahと怪物級に出くわしてしまうのが可哀そうではある。

Nenawa: Dahess - Gharnooga by Al Hasim

フランス産馬、サウジアラビア調教。レート114、A. Almosa厩舎、A. Alfairouz騎乗。

8歳の牝馬。フランス時代は南部のToulouseやアキテーヌDax、La Testeで5戦して未勝利、その後はイタリアやドイツでも出走しているが勝てなかった。サウジアラビアでは1400m戦での勝ちがあるが、中距離では厳しそう。

Qaswarat Al Khalediah: Laith Al Khalediah - Mistahilat Al Khaldiah by Dornmane

サウジアラビア産馬、サウジアラビア調教。レート116、N. Mutlk厩舎、A. Alfouraidi騎乗。

短めの距離に実績を持つ6歳馬だが、2000mにも対応可能。去年のPrince Abdullah Alfaisal CupではAsfan Al Khalediahに2馬身半の2着。

Saloum Al Khalediah: Hatim Al Khalediah - Sapok Al Khalediah

サウジアラビア産馬、サウジアラビア調教。レート112、N. Mutlk厩舎、N. Alanazi騎乗。

6歳馬。今シーズンは未勝利。

Vica Grine: Af Albahar - Darka Du Falgas by Darike

フランス産馬、フランス調教。レート110、J.F. Bernard厩舎、J. Eyquem騎乗。

6歳馬。Bernard厩舎所属のフランス調教馬となっているが、モロッコで出走している。France Galopでキャリアを確認すると前走はカサブランカのG3勝ちとなっており、Anfa競馬場で開催されたMorocco International Meetingのメイン競走であるダート2100mのGrand Prix De Sa Majeste Le Roi Mohammed VIのことかと思われる。

Vizhir: Manark - Cherazade by Dormane

フランス産馬、サウジアラビア調教。レート123、B. Almousa厩舎、M. Aldaham騎乗。

9戦5勝の4歳馬。フランスでの出走はない。半兄にG1 H.H. Sheikh Zbs Al Nahyanで2着のCh’Ezzaがいる。Ch'Ezzaは先週のAmir Swordの出走表に名前があったが、出走していなかった。この辺り情報がつかみきれないのでわからない。

サウジアラビアのThe Final Champion Of The Race Coursesの勝ち馬。Jockey Club of Saudi ArabiaとFrance Galopのデータに齟齬があり、France Galopでは1月5日に1800mのG1を勝ったことになっているのだが、JCSAでは該当するレース結果が存在しない。しかしながらJourdegalopではG1 Prince Sultan Bin Abdulaziz CupにてTilal Al Khalediahを短頸差で下したという記事が確認できる。Youtubeでもレース映像を確認できるのでJCSAのResultsがおかしいのかな。

H.H. The Amir Sword: G1 Doha Turf 2400m

こちらは純血アラブのG1。サラブレッド戦と同じで総賞金が250万ドルのレースである。三冠戦の最終レグに指定されている。カタールは芝がメインなのでアラブ馬もフランス産がほとんどとなっている。
Al Shaqabがオーナーなんだからそりゃ来るよね、Al Ghadeer。Al DohaやCh'Ezzaはフランスで完全にAl Ghadeerに負けているが、上位であることは変わらず、あとは地元のAbbesがどこまで対抗できるか。まあ、Al Ghadeerがどんな勝ち方をするか見るレースだろう。

AA Feel the Burn: Burning Sand - Rich Sister by Th Richie

アメリカ産の5歳馬。Qatar International Derbyを2着で、Sheikh Joaan Bin Hamad Trophyを3着。

Abbes: TM Fred Texas - Raqiyah by Amer

フランス産の7歳騙馬。父系はアメリカで祖父がBurning Sand。
去年の勝ち馬で、現在のカタール最強馬。昨シーズンは8戦6勝で、負けたのはフランスに遠征したLongchampのArabian World CupとPresident of The UAE Cupの2戦。フランス遠征でもDeauvilleのPrix Manganateは勝っている。今シーズンはAbu DhabiのJewel CrownとDohaの前哨戦Sheikh Joaan Bin Hamad Trophyを勝っている。

Al Ghadeer: Al Mourtajez - Gharra by Matador

フランス産の5歳騙馬。去年のLongchampのG1 Arabian World Cupを快勝したアラブ最強馬。Dohaでは2022年にG3 Qatar Derbyを勝った実績がある。

Al Tammtam: TM Fred Texas - Tameemah by Amer

フランス産の6歳騙馬。フランス時代はToulouseで1勝を挙げている。カタールに来てからはArabian Derby Trialを勝っているが、Qatar International Derbyは6着に終わった。

Bin Al Tair: Al Tair - Al Yzea by Munjiz

フランス産の7歳馬。上級戦での実績はない。

Ch'Ezza: AF Albahar - Cherazade by Dormane

フランス産の6歳馬。ToulouseのG1 H.H. Sheikh Zbs Al Nahyanを2着、LongchampのG1 President Of The UAE Cup勝ち、DeauvilleのG1 Prix Manganateを2着、LongchampのG1 Arabian World Cupを3着、Abu DhabiのG1 Jewel Crownを3着という成績で上位なのだが、Al Ghadeerに勝てる目が見えない。

Djalnor: No Risk Al Maury - Djalmina by Dormane

フランス産の8歳馬。ハンデキャップ戦で勝っている程度。

Hareeb: Mared Al Sahra - Princesse Monlau by Munjiz

フランス産の6歳馬。ハンデキャップ戦を勝ち上がり、Class 2勝ちまで出世している。前走はSheikh Joaan Bin Hamad Trophyで3着。

Al Doha: Al Mourtajez - Topaze Du Croate by Dormane

フランス産の5歳牝馬。DoncasterのG1 President Of The UAE Cupの勝ち馬だが、ChantillyのQatar Derby Des Pur-Sang Arabes De 4 AnsとLongchampのArabian World CupではAl Ghadeerの2着に敗れている。ちょっと逆転は難しい。

Divine Princess: Amer - Nacree Al Maury by Kesberoy

フランス産の7歳牝馬。アラブの大種牡馬Amerの直仔。母父がKesberoyで1世代古い血統構成。

Mezown: Al Mamun Monlau - Muzoon by Amer

フランス産の5歳牝馬。Arabian Oaks Trial2着からArabian Oaks2着。前走は1600mのG2のH.H. Sheikh Abdullah Bin Khalifa Al Thani Cupで8着。

H.H. The Amir Trophy: G3 Doha Turf 2400m

国際格付けはG3ですが、カタールの国内格付けはG1となっている。中東の開催も国際格付けに移行するトレンドだなとは思うところ。

賞金の総額は250万アメリカドルで、出走メンバーの上位はG1級と言ってよいレベルだろう。
日本から3頭が遠征して出走するほか、前年の勝ち馬で香港のRussian Emperorが今年も出走する。GodolphinはRebel's Romanceを用意したし、移籍したSimca Milleも出走する。

地元Dohaの前哨戦は芝2200mのSheikh Joaan Bin Hamad Rifleで、勝ったSimca Mille、2着のHaunted Dream、3着のJeff Koonsが出走する。

Simca Milleが能力を十全に発揮すれば最有力で、Rebel's RomanceやZeffiroが続くような見立て。

Haunted Dream: Oasis Dream - Red Halo by Galileo

カタール調教の5歳騙馬。去年までイギリスで走るハンディキャップホースで、12月にカタールでG3 Al Safliya Cupを勝った。前走はSheikh Joaan Bin Hamad Rifleで2着。

Israr: Muhaarar - Taghrooda by Sea The Stars

5歳馬。Gosden厩舎のG2 Princess of Wales'sの勝ち馬。母はOaksやキングジョージを勝ったTaghrooda。11月にはバーレーンでG2 Bahrain International Trophyに出走して2着。

North Bridge: Maurice - Amazing Moon by Admire Moon

日本馬その1。ノースブリッジ。去年G2のアメリカジョッキークラブカップを勝っている。

Passion And Glory: Cape Cross - Potent Embrace by Street Cry

8歳騙馬。GodolphinのクラシックディスタンスランナーでイギリスではG3 Glorious Sを勝っている。去年はバーレーンのリステッド勝ちがある。

Point Lonsdale: Australia - Sweepstake by Acclamation

5歳馬。みんな大好き母SweepstakeってことでBroomeの全弟である。本馬もクラシックで期待されていたが2000 Guineasで10着に大敗した後は1年近く出走できなかった。4歳になって復帰戦のG3 Alleged Sを勝ったが、去年は全体としてまた今一つの結果に落ち着いてしまった。G1 Champions Sで4着の後、11月にはBahrain International Trophyに出走して3着に入っている。

12F戦はCoronation CupとキングジョージとどちらもG1だったこともあるがあまり良い結果になっていない。

Rebel's Romance: Dubawi - Minidress by Street Cry

6歳騙馬。Godolphin所属のグローブトロッター。2022年にドイツでG1を連勝して、BC Turfも勝った。去年は不調に陥っていたが、12月にKemptonのオールウェザーに現れリステッドのWild Flower Sを勝った。

Russian Emperor: Galileo - Atlantic Jewel byFastnet Rock

香港の7歳騙馬で去年の勝ち馬。香港でもChampions And Chater Cupの連覇やHong Kong Gold Cup勝ちの実績を持つが、近走は低迷している。もっとも香港は得意とする2400mのレースが少なく、2000mだとRomantic Warriorらがいるとなって引きずりおろされてしまったところはある。

Simca Mille: Tamayuz - Swertia by Pivotal

5歳馬。去年はドイツでG1 Grosser Preis Von Berlinを勝って念願のG1馬となった。凱旋門賞など最上位ではちょっと心許ないがそれ以外なら十分な能力を持っている。今年になってカタールに移籍し、1月のSheikh Joaan Bin Hamad Rifleを勝ってこのレースに挑むことになった。

Zeffiro: Deep Impact - Wild Wind by Danehill Dancer

日本馬その2。ゼッフィーロ。去年のG2アルゼンチン共和国杯を勝ち、遠征したHong Kong Vaseが2着である。京都記念で観たかった感もあるものの、良い条件のレースに遠征したともいえる。

Jeff Koons: Frankel - Quidura by Dubawi

4歳馬。去年末にカタールに移籍してQatar Derbyを勝った。前走はSheikh Joaan Bin Hamad Rifleで3着。

Satono Glanz: Satono Diamond - Cherry Collect by Oratorio

日本馬その3。去年は京都新聞杯を勝ってダービーは11着、神戸新聞杯を勝って菊花賞は10着と前哨戦を勝つも本番のクラシックでは駄目だった。日経新春杯3着からの遠征。現状サトノダイヤモンド産駒で唯一の重賞馬である。

2年目のJustify

2022年に産駒デビューを迎えたJustifyでしたが、初年度の産駒実績は欧州でのものを含めて重賞勝ち4頭を出すものの、G1勝ちはなく、アメリカのFirst Crop LeadingではBolt D'Oro、Good Magicに次ぐ3位に終わりました。産駒獲得賞金は約250万ドルで、リーディングのBolt D'Oroの約280万ドルに大きな差があるわけではありませんが、2022年産駒デビューの種牡馬は全体でもG1勝ちがGood MagicのBlazing SevensとGirvinのFaizaで2勝にとどまり小粒であった印象は否めませんでした。(2021年のGun Runnerが凄すぎただけということも否定できませんが)

とはいえ、初年度にG1勝ちが果たせなかったことは、無敗の三冠馬として引退したJustifyに掛けられた期待からはやや失望を抱かせる結果といえなくもないのですが、2023年にこの結果が一変しました。何と言ってもBCでJuvenile Fillies、Juvenile Fillies Turfを勝たせ、この年の2歳馬からは4頭のG1馬が出ています。これはアメリカの種牡馬としては1987年のMr. Prospector以来となる結果だそうで、これにより初年度15万ドルから10万ドルにまで下げていた種付け料が、2024年はPrivateの設定になりました。一部では20万ドルという数字が出ています。

そういうわけで、この2年分を振り返って記録に残しておきます。

北米の種牡馬統計で利用しやすいのはBlood-HorseのStallion RegisterかThoroughbred Daily NewsのSire Listですが、今回はThoroughbred Daily NewsのSire ListでStandsをNA and EU、Regional EarningsをWorldwideに設定したリストを使用します。賞金額に多少の差異があるものの誤差のレベルといいたいところなんですが、Stallion RegisterではSaxon Warriorが出てこないのでちょっとわかりません。Coolmore IREならSioux Nationが出てくるので、その近くにいないとおかしいんですけどね。そういった理由で今回はTDNです。

First Crop

2022年のFirst Cropリーディングは3位、2歳馬リーディングで6位というのがJustify初年度の実績です。

2歳馬リーディングのトップ10は順にInto Mischief、Bolt D'Oro(新種牡馬)、No Nay Never、Violence、Good Magic(新種牡馬)、Justify(新種牡馬)、Practical Joke、Frosted、Army Mule(新種牡馬)、Cross Trafficというメンバー。Into Mischiefが突き抜けていますが、G1を3勝して2歳女王となったWonder Wheelの寄与が大きいです。

Justifyは登録産駒が150頭で71頭出走し、29頭が勝ち上がり、合計36勝です。勝ち上がり率は41%で2歳戦では悪くありません。ブラックタイプ勝ちが6頭で、うち4頭が重賞を勝っていますが、G1勝ちはありませんでした。平均勝利距離は6.60Fで2歳戦なら平均から少し長め寄りといったラインでしょう。

2022年にデビューした初年度産駒は、早くも6月にアイルランドでStatuetteが重賞勝ちを決め、良好なスタートを切ったように見えました。続いてアメリカでは7月にJust Cindyも重賞を勝ち、欧州と北米、芝とダートの両面で活躍馬を出せるところを見せています。8月にはまたもアイルランドでAspen Groveも重賞勝ちを果たし、この先の2歳G1戦線に期待が持たれましたが、その後は11月のChampions DreamがAqueductの重賞を勝つくらいで、G1ではChampagne Sで2着に入ったVerifyingがいる程度に終わりました。

Statuette: Justify - Immortal Verse by Pivotal

マイラーImmortal Verseを母に持ち、Aidan O'Brien厩舎から2歳の5月にデビューして3馬身差で快勝しています。1ヶ月後にCurraghのG2 Airlie Sに出走してこれも勝って2戦2勝とした後は出走がなく、3歳シーズンも早々にクラシック時期を全休し、後半にはレースに出てくるということになっていましたが、結局出走していません。

Mill PrincessにSadler's Wells、Pivotalと組んでJustifyが来る形で、さすがはCoolmoreの良血馬といったところ。半姉のTenebrismは2歳G1 Cheveley Park Sの勝ち馬であり、父がJustifyとCaravaggioの違いで血統が酷似しているもののCaravaggioは母方にフロリダの血統が濃く刻まれているのが特徴。Statuetteにはその部分が不足しているように見えます。

Just Cindy: Justify - Jenda's Agenda by Proud Citizen

6月のChurchill Downsでデビュー戦を勝つと、SaratogaのG3 Schuylerville Sを勝っています。その後はSpinaway S、Alcibiades SとG1に出走するも大敗しました。

母Jenda's Agendaは4勝馬でブラックタイプのCaesar's Wish Sを勝っています。Menifeeが入ってStorm Catクロスを作ります。また、祖母Just JendaにHarlanとPine BluffからHaloクロスが作られているのもちょっとポイントになりそうです。近親にはNyquistやSahara Skyが出ています。

Aspen Grove: Justify - Data Dependent by More Than Ready

5月デビューで2戦パッとしない結果に終わっていますが、3戦目にCurraghのG3 Newtownanner Sに出走し、最低人気ながら初勝利を重賞で勝ち取りました。しかしその後はいまいちで、今年はIrish 1000 Guineasにも出走するが最下位に終わりました。転機は北米で、Belmont Oaks Invitational Sに遠征すると直線最後に鋭く抜け出して勝利しています。続いてSaratoga Derby Invitational Sに出走しますが、ここは5着に終わりました。そのまま北米移籍となっていますが、E.P. Taylor Sでは6着で力的にはやや落ちるでしょう。

近親にはSoldier Of Fortuneが出る他、Intense FocusやSkitter Scatterが出るなどStorm Catとの相性は良いようです。母Data DependentはMore Than Ready×Machiavellian×Danehillという構成で、こちらにもHaloクロスが見えてきますね。

Champions Dream: Justify - Dancinginthedreams by Tapit

デビューはやや遅く9月のSaratoga。これを勝つと、BelmontのChampagne Sで5着を挟んで、11月にG3 Nashua Sを勝ちました。3歳になるとフロリダに渡ってTampa BayからKentucky Derby路線を狙うもののSam F. Davis S、Tampa Bay Derbyと大敗して脱落しています。

母DancinginthedreamsはG2 Pocahontas Sの勝ち馬。Menifeeが入ってStorm Catクロスを作ります。また、ダイレクトにTapitを入れてPulpitクロスを作りに行っており、PulpitPulpitで重要なのですが、In Realityのクロス付きでUnbridledが入ることも重要なポイントです。

Justa Warrior: Justify - A Z Warrior by Bernardini

7月にElis Parkでデビュー勝ちすると、そのままブラックタイプ競走Elis Park Debutante Sを勝ちました。Churchill DownsのG3 Pocahontas Sでは11着に敗れ、上位との差がありました。

母A Z WarriorはG1 Frizette S勝ちで、BernardiniにCarson City、Deputy Ministerと遡る血統構成は、A.P. IndyMr. ProspectorDeputy Ministerをクロスさせます。また、Bernardiniは母父にQuiet Americanを持っていることがポイントになります。

Justique: Justify - Grazie Mille by Bernardini

7月にDel Marでデビューして初勝利を挙げると、少し間を開けてG2 Chandelier Sを3着の後に、11月のDel Marのリステッド競走Desi Arnaz Sを勝ちました。その後も西海岸の重賞に顔を出していますが勝利はなく、近走は芝に切り替えてきています。

Raise Youからの牝系で半兄にはMo Townが出ています。BernardiniとCarson Cityを使ってJusta Warriorと酷似した構成で、A.P. IndyMr. Prospectorがクロスします。

Verifying: Justify - Diva Delite by Repent

8月のSaratogaでデビュー勝ちすると、G1 Champagne Sに出走して2着に入りました。そしてBC Juvenileにも出走していますが、ここは6着で2歳のキャリアを終えています。3歳になるとOaklawnのG2 Rebel Sに出走しますが4着どまりで、KeenelandのG1 Blue Grass Sを2着してKentucky Derby出走にこぎつけました。Kentucky DerbyではKingsbarnsと競りながらレースを引っ張りますが、競りつぶされて16着に大敗しました。その後はG3 Indiana Derbyを勝ち、G1 H. Allen Jerkens Memorial Sを2着と活躍しています。現在、初年度産駒では活躍馬の筆頭格です。

母はG3 Florida Oaksを勝っていて、半姉にはMidnight Bisouが出ています。

Arabian Lion: Justify - Unbound by Distorted Humor

10月にSanta Anitaでデビューしています。2歳ではデビュー戦勝利のみで、最後にG2 Los Alamitos Futurityで5着という記録があります。3歳になってからはG3 Robert B. Lewis Sを4着、G3 Lexington Sを2着でKentucky Derbyに間に合わず、Preakness SのアンダーカードでSir Barton Sを勝ちました。そこからG1 Woody Stephens Sを勝って、これがJustify産駒のG1初勝利となっています。さらにH. Allen Jerkens Memorial Sで3着と短距離で結果を出しつつありますが、Santa Anita Sprint Championship Sを7着に敗れたことでBCへの出走はなりませんでした。2023年いっぱいで引退し、今年からSpendthriftで種牡馬入りし、種付け料は3万ドルと発表されました。

Personal Ensignの一門で、Personal Ensign、A.P. IndyDistorted Humor、Justifyと組まれて、A.P. IndyMr. Prospectorがクロスします。

良血出身でG1も勝ちましたからやることはやったというところでしょうか。Justifyの評価が急激に上がったので、他に先んじて種牡馬入りするのはアリなんだろうと思います。

Red Riding Hood: Justify - Ballydoyle by Galileo

本格的に出てきたのは3歳になってからで、Dundalkのオールウェザーで初勝利とすると、EpsomのOaksにも出走していますが最下位に終わりました。適距離を探るように低迷を続けましたが、8月にCurraghのG3 Snow Fairy Sを勝って2勝目。中距離あたりが良さそうに見えますが、G1 British Champions Fillies And Maresでは6着に終わっています。

母BallydoyleはG1 Prix Marcel Boussacを勝ち、1000 Guineasで2着の活躍馬です。Mr. P's PrincessにStorm CatGalileo、Justifyと入るCoolmoreの自信作といえるでしょう。もちろんStorm CatMr. Prospectorをクロスします。母の全姉はMisty For Meでその産駒にはRoly Poly、U S Navy Flagの姉弟が出ています。とにかく2歳から早く仕上がる早熟な一族で、マイルまでこなすことが特徴です。Galileo直仔のMisty For Meは中距離をこなせましたし、Red Riding Hoodも中距離に向いているのはGalileoの影響かなと。

Unless: Justify - Clemmie by Galileo

3歳の5月に初勝利し、8月のCurraghでリステッド勝ちを果たしました。

母ClemmieはG1 Cheveley Park S勝ちで、その全兄がChurchillです。クールモアなのでGalileo×Storm Cat繁殖牝馬。Kangra Valleyを基点に、近年勢いのある牝系です。

初年度産駒からの活躍馬はこれくらいになりますが、上位馬に牝馬が目立つ特徴を有しています。

Statuette、Just Cindy、Aspen Grove、Justa Warrior、Justique、Red Riding Hood、Unlessが牝馬で明らかにフィリーサイアーという感じですね。

Second Crop

2023年のSecond Cropリーディングは獲得賞金が1000万ドルを超えて1位になりました。以下Good Magic、Bolt D'Oroとなっており、First Cropリーディングの上位3頭がひっくり返っています。

Justifyは2歳リーディングを獲得しており、2歳だけで500万ドルに迫る賞金を獲得しました。2022年にInto Mischiefが記録した2歳戦の獲得賞金記録を更新しています。

2世代目の2歳戦績は140頭が登録され、71頭が出走し、勝ち馬26頭で、42勝を挙げました。重賞馬6頭でG1馬が4頭出るというすさまじいものです。上級戦での活躍が目立ったため、平均勝利距離は7.04Fに伸びています。

一方で3歳を迎えた初年度産駒の戦績は登録169頭から出走が106頭で勝ち上がり45頭で62勝でした。重賞馬4頭でG1は2頭で2勝というのが先に見た通りです。この数字と内容では大して見るべきところはなく、欧州供用馬を含めた3歳リーディングでは12位になってしまいます。そもそも3歳と2歳の獲得賞金にほぼ差がないことがおかしいのですが、それだけ2023年の2歳馬が突出していたということでもあります。

2歳でG1馬が4頭出て、これはアメリカ供用の種牡馬としてはMr. Prospectorが1987年に記録して以来のことです。

Just F Y I: Justify - Star Act by Street Cry

8月のSaratogaでデビュー戦を勝利すると、Aqueduct開催のG1 Frizette Sを勝ってBC Juvenile Filliesに挑戦しました。このレースでは血統及び前走の勝ちっぷりからTamaraが人気を集め、ニューヨークのプレップを勝った無敗のG1馬としては軽く見られていました。レースでは序盤から逃げるTamaraを追走して直線を向いて先頭に出て、Jody's Prideの追い上げを凌ぎ切っての勝利。3戦無敗で2歳女王となりました。

Stellar JayneとStarrerを出したTo The Huntの牝系で、Starrerを手に入れたオーナーブリーダーGeorge Krikorianが手元で育てているファミリーです。Brookfield Farmの関与もある牝系であり、Mr. Prospectorに加えてRelaunchがクロスするところにその残滓を見る思いがします。In Realityを見てFoggy Noteを無視するのはいけないのですが。

Hard To Justify:  Justify - Instant Reflex by Quality Road

7月にSaratogaの芝戦でデビュー勝ちし、そのまま芝路線を進みました。東の2歳芝牝馬としては順当にG2 Miss Grillo Sに進んでここも勝つとBC Juvenile Fillies Turfに進み、先にカナダでG1勝馬となっていたShe Feels Prettyや遠征馬Porta Fortunaを下して3戦無敗の芝女王になりました。

母Instant Reflexはスプリンター。BourtaiからBantaの流れになるファミリーの傍系でWertheimerのG1馬Corrazonaを経由する一族です。近親にはJuly Cup勝ちのスプリンターStarmanが出ています。ベースにSeattle Slewを持ち、Quality RoadにSeeking The GoldMr. Prospectorの力のある所を使っています。

Opera Singer: Justify - Liscanna by Sadler's Wells

7月に2戦目で勝ち上がると、G3 Newtownanner Sを勝ってそのままG1 Prix Marcel Boussacを持って行きました。

母LiscannaはMrs. E.M. Stockwellの名義で出走し、G3勝ちがあります。繁殖入りしてからすでにHit It A BombとBrave Annaを出しており、Opera Singerは3頭目のG1馬となりました。Evie StockwellはCoolmoreのトップJohn Magnierの母でOpera Singerの生産は彼女の名義で行われています。

City Of Troy: Justify - Together Forever by Galileo

7月にCurraghでデビューすると間髪入れずにNewmarketのG2 Superlative Sを勝ちました。そこからは間隔を空けてG1 Dewhurst Sも勝って3戦全勝でシーズンを終えました。Newmarketですでに2戦しており、クラシックシーズンに向けて極めて期待の高い馬で、2000 Guineasの前売りは一本被りになっています。

母Together ForeverはFillies Mile勝ちのG1馬で、多数の活躍馬が出ているChain Storeの牝系に属しますTogether Foreverの半兄にLord Shanakill、全妹にForever Togetherが出ています。Sadler's Wells≒Nureyevのクロスで攻めるGalileo牝馬

Buchu: Justify - Flowering Peach by Galileo

Keenelandの芝G2 Jessamine Sを勝った牝馬。BC Juvenile Fillies Turfにも出走し、6着でした。

近親にMedaglia D'Oroが出ています。Giant's Causewayが入ってStorm Catクロスができ、Galileo×Storm Catと同じ系統となります。

Ramatuelle: Justify - Raven's Lady by Raven's Pass

フランスでデビューし、G3 Prix Du Bois、G2 Robert Papinと序盤の2歳重賞を連勝してPrix Mornyに出走して2着。その後の2歳戦には出走しませんでした。これで5戦3勝、2着2回という安定した戦績です。7月にCity Of TroyとRamatuelleが重賞を勝ったことでJustifyの2世代目が注目を集めることになりました。

母父はRaven's PassでGone West直系もまた一つの成功パターンであることが示唆されています。

Living Magic: Justify - Living The Life by Footstepsinthesand

重賞への出走はないものの、My Dear SとChelsey Flower Sとリステッドを2勝して6戦3勝です。

FootstepinthesandにMachiavellian、Sadler's Wellsと入り、Storm CatクロスとともにJustifyに対して重要な血統を押さえているというイメージです。要素詰込み系。

Valentine Candy: Justify - Taste Like Candy by Candy Ride

デビュー戦勝ちのあとG1 Hopeful Sは9着ですが、12月になってOaklawnのブラックタイプ競走を2勝しました。現状ではG1クラスのレース強度についていけないというところでしょうか。

A.P. Indyのクロスを持ちます。

Just Steel: Justify - Irish Lights by Fastnet Rock

3戦目で勝ち上がるとG1に挑ますが、Hopeful Sを7着、Breeders' Futurityを6着と力不足でした。その後ブラックタイプ競走のEd Brown Sに勝っています。

母Irish LightsはオーストラリアでG1 Thousand Guineasを勝っています。Change Waterの牝系に属し、Hennessyが入ってクロスします。

2年目の主な活躍馬でした。1年目から見せているフィリーサイアーらしさは変わらず、BCの2歳牝馬戦でダートと芝を両取りしています。2歳リーディングでは2歳トップの獲得賞金となったJust F Y Iと同じく3位になったHard To Justifyの存在が大きく、この2頭で約200万ドルにも及びます。他に、Opera Singer、Buchu、Ramatuelle、Living Magicが牝馬です。

また、欧州のCity Of Troyと合わせて3戦無敗の2歳G1馬を3頭持つということになって、これもまあ前例はなさそう。

In Southern Hemisphere

JustifyはオーストラリアのCoolmore分場にシャトルされ、その初年度はG1勝ちこそありませんが、オーストラリアでもFirst Cropリーディングを獲得する活躍を見せました。

Learning To Fly: Justify - Ennis Hill by Fastnet Rock

G3 Widden Sでデビューして勝利し、高額賞金のInglis Millennium、G2 Raisling Sと無傷の3連勝を挙げました。続いてG1 Golden Slipperに出走しましたが、落馬により競走中止となりました。

Inglis Millenniumの賞金が大きいため、オセアニアでの稼ぎ頭となっています。

母Ennis Hillはオーストラリアで1000mの重賞勝ち馬です。Fastnet RockにStravinsky、Centaineといかにもオセアニアという血統構成をしています。

Air Assault: Justify - Elegant Eagle by Zabeel

シーズン終盤の5月にアデレードのMorphettvilleでG3 Sires' Produce初勝利を挙げました。3歳シーズンもリステッドを勝っています。

母Elegant Eagleはシャトルサイアーが多用される繁殖で、半兄にGo Indy Goが出ています。

Star Of Justice: Justify - Fair Isle by Fastnet Rock

ニュージーランド産馬で、ニュージーランドで3歳になってデビューして2戦目で勝ち上がり。AshburtonのG3 Barneswood Farms Sを勝ちました。New Zealand 1000 Guineasは8着。

母Fair IsleはFastnet Rock×Stravinsky×Zabeelという血統で、Nureyevが入っているとありがたみがあるような気がします。

Legacies: Justify - Abyssinie by Danehill Dancer

デビュー戦勝ちから、ListedのAnzac Day Sを勝ちました。3歳シーズンはG3 McNeil Sを2着しています。

Storm Boy: Justify - Pelican by Fastnet Rock

2021年産まれの現2歳馬。12月にデビューすると、月末にはG3のB.J. McLachlan Sを勝ちました。

祖母はニュージーランドの名牝Seachangeです。

改めて種牡馬Justify

カタログでは"THE ONLY TRIPLE CROWN WINNER TO RETIRE UNBEATEN"などと書かれておりますが、そりゃさっさと引退しただけですやんくらいには思うところもあります。だって、三冠達成時点で無敗ってんならSeattle Slewも無敗でしたし。キャリアの違いは時代の違いもあるし、もちろんそれぞれが置かれている状況も違うわけで、これはフェアではない言い方とも思うのですが、ちょっと乱暴に言うと競走馬としてのJustifyには勝ち逃げという感じはあったわけです。

さて、ここまで2世代の産駒がデビューしたとはいえ、種牡馬としての見通しはまだまだ分かりません。何と言っても1年目の産駒と2年目の産駒の2歳実績が違いすぎて、今年の3歳戦でどのように出てくるか読めないのです。それでも2年目の産駒が今後の標準となるのであればとんでもない種牡馬になるのではないでしょうか。

今年3歳となると実績馬はもちろんアメリカでJust F Y I、ヨーロッパでCity Of Troyの無敗馬がそれぞれどんな結果をもたらすのかに注目です。一方アメリカの芝牝馬ということでHard To Justifyは序盤に目標となるレースがありませんがそこはChad Brownが実例豊富なので、Wonder Again SからBelmont Oaks Invitational Sを取りに行くのだろうなというあたり。一方で北米供用ということを考えるとKentucky Derby路線に乗ってくる牡馬が欲しいところでしょうか。

北米ダートから欧州芝まで産駒の活躍フィールドが広く、短距離に限定されるということもないように見え、オセアニアでも十分な結果を出しており、まさに万能種牡馬と思われます。

繁殖牝馬との組み合わせではCoolmoreの繁殖が多い関係からGalileoやSadler's Wellsを持つ血統が多くなってきています。加えて、Storm Catが何らかの形でクロスしてくるのが強めのパターンになっているのでしょう。もっともStorm CatGalileoが入るような繁殖牝馬はそもそものレベルが高いということもありますが。ただ、初年度でこのパターンが少ないことが、全体的な初年度産駒の不振という印象を持たせている気がします。

Mr. Prospectorのクロスも頻出で、まずGalileoが入る場合はMiswakiがあるのでそのクロスが発生します。北米の繁殖牝馬の場合はMr. Prospectorに加えてA.P. Indyをクロスさせるパターンが多く、Quiet Americanを抱えるBernardiniがその筆頭です。またTapitを使うパターンも出てきており、有望と思います。BernardiniTapitで共通点を見るならばQuiet AmericanやUnbirdledというTartanのFappianoを持つことでしょう。

一方Haloも有力なポイントとなっていそうで、Mr. ProsepctorのうちでMachiavellianが目立つのもこの要素かと思います。1本だけだとかなり遠くなるので、クロスするような仕掛けがあると面白いのかと判断しています。

オーストラリアではそもそもFastnet Rockの繁殖牝馬が多いのですが、それらを相手に活躍馬がしっかり出てくるのは重要なポイントで大きく外すことにはならないのでしょう。Danehill自体嫌ってくることはなさそうで、またSadler's WellsやNureyevのラインにも親和的に見えることから、総じて現地の繁殖牝馬の血統構成はJustifyにとって有利なのではないかと思います。今後の問題は種牡馬価値が高くなりすぎていつまでオーストラリアにシャトルできるかの方ではないでしょうか。

cf. Mr. Prospector 1987

さて、2歳のG1馬が4頭出たということで比較に挙げられたMr. Prospectorの1987年です。1980年代半ばはMr. Prospector産駒がプレミアムで、ちょうど1985年産まれが2歳となった年です。この時点でいくらでも活躍馬を挙げられそうですが、2歳でG1を勝った4頭は次の通りです。

ビッグネームは無論Forty Niner。2歳時6戦5勝で、BCには出走していませんがEclipse Awardで2歳牡馬チャンピオンに選ばれています。台頭したのが3歳になってからでここには上がっていないSeeking The GoldとともにKentucky DerbyではWinning Colorsに分からせを食らいました。

Classic CrownとOver AllはBC Juvenile Filliesに出走して、6着、7着に終わっています。

Ravinellaは3歳になると英仏の1000ギニーを勝って、古馬になるとアメリカに移籍して芝マイラーとして活躍を続けました。

cf. Gun Runner 2021

2歳リーディングでの比較となると2021年のGun Runnerを持ってくることになります。

2021年のGun Runnerは新種牡馬で、2歳リーディングを獲得しました。その原動力となったEcho Zuluは4戦全勝でBC Juvenile Filliesを含むG1を3勝という活躍です。他にはGuniteがHopeful Sを勝ってG1馬は2頭でした。これ以外にBC Juvenileで2着に入ったPappacapが有力な産駒でした。

産駒獲得賞金は約430万ドルでこれは当時としては記録的なものでした。直後の2022年にInto Mischiefが約480万ドルで更新し、さらに2023年にJustifyが更新することになりました。

ただ、Gun Runnerの強みはこの初年度産駒が3歳になって大暴れしたことで、3歳でG1馬が4頭、牡馬で2歳の活躍馬だったGuniteやPappacapがいまいちだったにもかかわらず、Early Voting、Taiba、Cyberknifeが台頭してくるという層の厚さを見せました。牝馬でもEcho Zuluが順調さを欠いたものの、SocietyやWicked Haloが出てきました。

そういった面ではJustifyは今年の3歳馬がどこまで伸びるかに注目となりそうで、年明けから早速Pilot CommanderがSanta AnitaのG2 San Vicente Sで2着に入ったり、Just SteelがOaklawnのリステッドで2着になっています。

Hong Kong Vase: Sha Tin Group 1 Turf 2400m

香港のこの路線にはRussian Emperorがおり、今年もシーズン終わりのChampions And Chater Cupを勝っていたのだが、今シーズンは1600mのSha Tin Trophyを最下位の10着、2000mのJockey Club Cupをブービーの8着と距離のことがあるにしてもさっぱりな内容でVaseに出てこられる状態ではなくなってしまった。結果として香港馬はSenor Tobaが筆頭ということで遠征馬相手に立ち回れるレベルではないだろう。

日本からはシャフリヤールが取り消されてしまったもののジェラルディーナを筆頭にレーベンスティールとゼッフィーロを加えた3頭が出走する。欧州馬はBC FM Turf2着のWarm Heartが出走するほか、Junko、West Wind Blowsも名を連ねている。

Junko: Intello - Lady Zuzu by Dynaformer

イギリス産馬、4歳、レーティング117、13戦6勝。

Wertheimerのオーナーブリードで、今年になってクラシックディスタンスに転向し、ドイツでGrosser Preis Von Bayernを勝った。Conseil De ParisではIresineの3着ともう少し上積みが欲しいところ。

Senor Toba: Toronado - Bahamas by Teofilo

オーストラリア産馬、6歳、レーティング115、27戦5勝。

オーストラリア時代はQueensland Derbyで2着の実績馬。香港では適距離のレースが少なく、Hong Kong Vaseになると海外馬に及ばず苦しんでいる。年始からは中東遠征も行ったが結果を残せないままである。

Zeffiro: Deep Impact - Wild Wind by Danehill Dancer

ゼッフィーロ、日本産馬、4歳、レーティング114、12戦5勝。

前走でアルゼンチン共和国肺を勝った。牝系はMonevassiaを通じるMiesqueのファミリーで近親がラヴズオンリーユーなど。ここはStorm Catが入っていてほしかったところだろう。

Five G Patch: Camelot - Uliana by Darshaan

アイルランド産馬、5歳、レーティング113、18戦4勝。

O'Brien厩舎で2戦2勝のあと香港へ。まあデビューが3歳夏になった時点で厳しい。今年のChampions And Chater Cupで3着があるが、実績といえばその程度。

West Wind Blows: Teofilo - West Wind by Machiavellian

アイルランド産馬、4歳、レーティング113、15戦5勝。

今年の秋にオーストラリアに遠征してTurnbull SとCaulfield Cupで2着。前走はFlemingtonのChampions Sで9着から香港に転戦してきた。Gold Tripと勝ち負けしているような戦績ではちょっと物足りない。

La City Blanche: Cityscape - Etoile Blanc by Nedawi

アルゼンチン産馬、5歳、レーティング106、香港で11戦1勝。

2021年にアルゼンチンのSan IsidroでG1 Gran Premio Jockey Clubを勝ったZodiacalが香港に移籍して改名されたもの。香港では特に実績がない。

Geraldina: Maurice - Gentildonna by Deep Impact

ジェラルディーナ、日本産馬、5歳、レーティング115、22戦6勝。

去年はエリザベス女王杯勝ちから有馬記念3着と充実していたが、今年は宝塚記念4着程度で結果が振るっていない。香港にはQueen Elizabeth II Cupにも遠征したが6着に終わっている。これが引退レースになりそうで、Hong Kong Vaseでワンチャン狙うのは悪くはなく、Warm Heartをとらえられるかというレースになるだろう。

Lebensstil: Real Steel - Tokai Life by Tokai Teio

レーベンスティール、日本産馬、3歳、レーティング115、6戦3勝。

レース間隔をあけて使われていて、セントライト記念勝ちからG1挑戦がHong Kong Vaseとなった。最速の上り3Fで差し切れるかどうかだからシンプルではある。

Warm Heart: Galileo - Sea Siren by Fastnet Rock

アイルランド産馬、3歳、レーティング117、9戦5勝。

EpsomのOaksには間に合わなかったものの、Royal AscotのG2 Ribblesdale Sを勝つとIrish Oaksに出走して5着。その後Yorkshire OaksでG1勝ちを果たすと続くPrix Vermeilleも勝った。しかし凱旋門賞には向かわずBC FM Turfに遠征し、Inspiralに最後は差されるものの2着を確保した。

12F戦を得意にしており、本番でもレースを引っ張る立場になるだろう。日本馬は後ろから行くタイプが揃っており、Warm Heartをとらえられるかという勝負になる。

Hong Kong Sprint: Sha Tin Group 1 Turf 1200m

Lucky Sweynesseというエースを出さずにドバイのAl Quoz SprintはSight Successが4着、Duke Waiが5着という結果を出すあたり香港のスプリント路線は魔境である。

Lucky Sweynesse: Sweynesse - Madonna Mia by Red Clubs

ニュージーランド産馬、5歳、レーティング125、20戦14勝。

香港スプリント路線の覇者であるが、去年のHong Kong Sprintでは直線で行き場がなく6着に沈んでいる。今シーズンは2着を2回のあとJockey Club Sprintで勝ってきたが、以前ほどの強さはないように見える。

Wellington: All Too Hard - Mihiri by More Than Ready

オーストラリア産馬、7歳、レーティング117、25戦12勝。

香港のスプリント路線で長く上位に定着している。去年のHong Kong Sprintの勝ち馬だが、その前からLucky Sweynesseが頭角を現しており、以後はLucky Sweynesseに勝てないレースを続けている。前走Jockey Club Sprintは3着。

Mad Cool: Dark Angel - Mad About You by Indian Ridge

マッドクール、アイルランド産馬、4歳、レーティング115、10戦5勝。

父Dark Angelに母父Indian Ridgeでは日本でやっていくのは厳しいだろうと思っていたらスプリンターズSで2着に来たので驚いた。

Sight Success: Magnus - Tarp by Bletchley Park

オーストラリア産馬、7歳、レーティング115、30戦9勝。

去年の2着馬だが、G2ではちょっと不足というイメージである。MeydanのAl Quoz Sprintでは4着であった。

Victor The Winner: Toronado - Noetic by Cape Cross

オーストラリア産馬、5歳、レーティング114、11戦6勝。

去年から香港で出走し、1200mばかりで11戦6勝。重賞では前走のJockey Club Sprintが2着で、これからの馬というところである。

Aesop's Fables: No Nay Never - How's She Cuttin' by Shinko Forest

アイルランド産馬、3歳、レーティング112、12戦2勝。

3歳のスプリンター。シーズン最後に実績をあげ、LongchampのPrix De L'AbbayeとBC Turf Sprintを共に3着。

Duke Wai: Per Incanto - Swan Lake by Green Perfume

ニュージーランド産馬、8歳、レーティング111、48戦9勝。

香港で長く走っているスプリンターだが、重賞クラスで勝ち切るだけの強さはないように見える。

Jasper Krone: Forsted - Fancy Kitten by Kitten's Joy

ジャスパークローネ、アメリカ産馬、4歳、レーティング110、16戦6勝。

スプリンターズSを4着のあと、BC Turf SprintからHong Kong Sprintというローテーションになった。

Lucky With You: Artie  Schiller - Heredera by Northern Meteor

オーストラリア産馬、6歳、レーティング95、22戦6勝。

重賞レベルに出走するには厳しい実績。

Highfield Princess: Night Of Thunder - Pure Illusion by Danehill

フランス産馬、6歳、レーティング117、38戦14勝。

去年ほど絶対的ではないが、欧州最強のスプリンター。そうはいっても香港の1200mはかなり難しいように思う。

Hong Kong Mile: Sha Tin Group 1 Turf 1600m

去年と同じくGolden SixtyとCalifornia Spangleの勝負となるだろうが、Golden Sixtyが4月以来のレース、California Spangleは今季があまり良くなさそうである。日本からは前走マイルチャンピオンシップの1着Namur、2着Soul Rushに加えてマイルG1の実績馬SerifosやDanon The Kidと揃えてきた。

Golden Sixty: Medaglia D'Oro - Gaudeamus by Distorted Humor

オーストラリア産馬、8歳、レーティング125、29戦25勝。

香港最強馬の名に恥じず、持ちレート125はこの日の出走馬中のトップレート。

8歳となった今シーズンは出走しておらず、4月のChampions Mile以来のレースとなる。去年はCalifornia Spangleに破れ2着に終わったが、その後Stewards' CupとChampions Mileで完勝して格の違いを見せた。

22-d Royal StatuteのファミリーでNiarchos家の所有となったKonafaの分岐である。Hector ProtectorやBosra Shamを産んだKorveyaは祖母Leos Lucky Ladyの半姉にあたる。その他、GodolphinのModern Gamesなど近親に活躍馬が多数出ている。

California Spangle: Starspangledbanner - Pearlitas Passion by High Chaparral

アイルランド産馬、5歳、レーティング123、20戦11勝。

香港のダービー戦線でRomantic Warriorと覇を競った香港の次期マイルエース。去年のHong Kong MileでGolden Sixtyに勝つも、その後はGolden Sixtyの牙城を崩せず苦しんでいる。今シーズンはSha Tin Trophyを勝ったが、Jockey Club Mileでは4着で、斤量差を考えても負けすぎたことが不安材料である。

北米で発展した4-r族の傍流に属しており、カナダからフランスを経てアイルランドに渡ったGay Apparelの牝系である。近親にLily Of The Valley、Mubtaahji、ノーヴァレンダが出ている。

Danon The Kid: Just A Way - Epic Love by Dansili

ダノンザキッド、日本産馬、5歳、レーティング118、18戦3勝。

3連勝した2歳以降勝ちがない状態が続いているが、去年のHong Kong Cupで2着に入るなど実力は十分である。今年は大阪杯で3着した他は良績がない。香港ではQueen Elizabeth II Cupに出走して5着だった。MileもCupも相手が結構強いので、厳しいレースになりそう。

Serifos: Daiwa Major - Sea Front by Le Havre

セリフォス、日本産馬、4歳、レーティング118、11戦5勝。

前走はマイルチャンピオンシップで8着。

Soul Rush: Rulership - Eternal Bouquet by Manhattan Cafe

日本産馬、5歳、レーティング118、17戦6勝。

前走マイルチャンピオンシップは2着。

Tribalist: Farhh - Fair Daughter by Nathaniel

イギリス産馬、4歳、レーティング116、16戦6勝。

重馬場に強くフランスで重賞3勝のマイラー

Beauty Eternal: Starspangledbanner - Ithacan Queen by Savabeel

オーストラリア産馬、5歳、レーティング115、12戦8勝。

前哨戦のG2 Jockey Club Mileの勝ち馬で、昨シーズンの終わりから重賞を3勝して台頭してきた。

Beauty Joy: Sebring - Impressive Jeuney by Jeune

オーストラリア産馬、7歳、レーティング115、27戦9勝。

西オーストラリアで4戦4勝として香港に移籍。マイル路線で活躍しているが、近走は勝ちきれないレースばかりである。Jockey Club MileはBeauty Eternalに届かず2着。

Lim's Kosciuszko: Kermadec - Jacquetta by Keeper

オーストラリア産馬、6歳、レーティング112、22戦17勝。

シンガポールダービー馬。ニュージーランドの名門Trelawney Studがオーストラリアで生産し、華やかさはないがニュージーランドで脈々と継がれてきたファミリーである。

去年、Singapore DerbyとLion City Cupと地元のG1を2勝し、21戦17勝で2着3回の実績を誇る紛れもないシンガポールの最強馬。去年はなぜかHong Kong Sprintに遠征してきたが14頭中の最下位に終わっている。

180年の歴史と約20年前に建設された素晴らしいKranji競馬場を有しながら来年にはその幕を下ろすシンガポール競馬。シンガポール調教馬がパート1のG1に出走するのはこれが最後になる可能性が高い。10年前にはまだ国際G1レースを開催していたというのにね。

Voyage Bubble: Deep Field - Raaheights by Rahy

オーストラリア産馬、5歳、レーティング111、13戦5勝。

香港は北半球産馬と南半球産馬が入り乱れるため年齢表記が分かりにくいが、Romantic Warriorらより一つ下の世代のHong Kong Derby馬である。前走はJockey Club Mileで3着だが、前2頭には差を付けられていた。

逃げ先行タイプのマイラーだが、Hong Kong Derbyでは謎の勝ち方をしている。

Encountered: Churchill - Enrol by Pivotal

アイルランド産馬、4歳、レーティング110、21戦8勝。

前走はハンデ戦のG3Ladies' Purse勝ちでやや格落ち。

Cairo: Quality Road - Cuff by Galileo

アイルランド産馬、3歳、レーティング112、8戦3勝。

オールウェザーでの実績もあったが遠征したUAE Derbyでは10着に大敗した。その後Irish 2000 Guineasに出走してPaddingtonの2着だから能力は十分のはずである。前走はLeopardstownのリステッドで3着。

Namur: Harbinger - Sambre Et Meuse by Daiwa Major

ナミュール、日本産馬、4歳、レーティング115、13戦5勝。

去年の桜花賞で1番人気ながら大敗したが、前走のマイルチャンピオンシップでは最後方から段違いの末脚を繰り出して勝利。後ろからまとめて差せる展開になればナミュールだろう。

キョウエイマーチの末裔となる7-d族で、マルシュロレーヌを出したとはいえ、この牝系の基本は芝マイラーということを強く認識させてくれる。

Divina: Maurice - Verxina by Deep Impact

ディヴィーナ、日本産馬、5歳、レーティング112、18戦5勝。

府中牝馬S勝ち。関谷記念や中京記念で2着の実績があり、マイルが得意と考えていいだろう。前走はエリザベス女王杯で7着だが、これは気にせずに良さそう。

母はヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナ