2年目のJustify

2022年に産駒デビューを迎えたJustifyでしたが、初年度の産駒実績は欧州でのものを含めて重賞勝ち4頭を出すものの、G1勝ちはなく、アメリカのFirst Crop LeadingではBolt D'Oro、Good Magicに次ぐ3位に終わりました。産駒獲得賞金は約250万ドルで、リーディングのBolt D'Oroの約280万ドルに大きな差があるわけではありませんが、2022年産駒デビューの種牡馬は全体でもG1勝ちがGood MagicのBlazing SevensとGirvinのFaizaで2勝にとどまり小粒であった印象は否めませんでした。(2021年のGun Runnerが凄すぎただけということも否定できませんが)

とはいえ、初年度にG1勝ちが果たせなかったことは、無敗の三冠馬として引退したJustifyに掛けられた期待からはやや失望を抱かせる結果といえなくもないのですが、2023年にこの結果が一変しました。何と言ってもBCでJuvenile Fillies、Juvenile Fillies Turfを勝たせ、この年の2歳馬からは4頭のG1馬が出ています。これはアメリカの種牡馬としては1987年のMr. Prospector以来となる結果だそうで、これにより初年度15万ドルから10万ドルにまで下げていた種付け料が、2024年はPrivateの設定になりました。一部では20万ドルという数字が出ています。

そういうわけで、この2年分を振り返って記録に残しておきます。

北米の種牡馬統計で利用しやすいのはBlood-HorseのStallion RegisterかThoroughbred Daily NewsのSire Listですが、今回はThoroughbred Daily NewsのSire ListでStandsをNA and EU、Regional EarningsをWorldwideに設定したリストを使用します。賞金額に多少の差異があるものの誤差のレベルといいたいところなんですが、Stallion RegisterではSaxon Warriorが出てこないのでちょっとわかりません。Coolmore IREならSioux Nationが出てくるので、その近くにいないとおかしいんですけどね。そういった理由で今回はTDNです。

First Crop

2022年のFirst Cropリーディングは3位、2歳馬リーディングで6位というのがJustify初年度の実績です。

2歳馬リーディングのトップ10は順にInto Mischief、Bolt D'Oro(新種牡馬)、No Nay Never、Violence、Good Magic(新種牡馬)、Justify(新種牡馬)、Practical Joke、Frosted、Army Mule(新種牡馬)、Cross Trafficというメンバー。Into Mischiefが突き抜けていますが、G1を3勝して2歳女王となったWonder Wheelの寄与が大きいです。

Justifyは登録産駒が150頭で71頭出走し、29頭が勝ち上がり、合計36勝です。勝ち上がり率は41%で2歳戦では悪くありません。ブラックタイプ勝ちが6頭で、うち4頭が重賞を勝っていますが、G1勝ちはありませんでした。平均勝利距離は6.60Fで2歳戦なら平均から少し長め寄りといったラインでしょう。

2022年にデビューした初年度産駒は、早くも6月にアイルランドでStatuetteが重賞勝ちを決め、良好なスタートを切ったように見えました。続いてアメリカでは7月にJust Cindyも重賞を勝ち、欧州と北米、芝とダートの両面で活躍馬を出せるところを見せています。8月にはまたもアイルランドでAspen Groveも重賞勝ちを果たし、この先の2歳G1戦線に期待が持たれましたが、その後は11月のChampions DreamがAqueductの重賞を勝つくらいで、G1ではChampagne Sで2着に入ったVerifyingがいる程度に終わりました。

Statuette: Justify - Immortal Verse by Pivotal

マイラーImmortal Verseを母に持ち、Aidan O'Brien厩舎から2歳の5月にデビューして3馬身差で快勝しています。1ヶ月後にCurraghのG2 Airlie Sに出走してこれも勝って2戦2勝とした後は出走がなく、3歳シーズンも早々にクラシック時期を全休し、後半にはレースに出てくるということになっていましたが、結局出走していません。

Mill PrincessにSadler's Wells、Pivotalと組んでJustifyが来る形で、さすがはCoolmoreの良血馬といったところ。半姉のTenebrismは2歳G1 Cheveley Park Sの勝ち馬であり、父がJustifyとCaravaggioの違いで血統が酷似しているもののCaravaggioは母方にフロリダの血統が濃く刻まれているのが特徴。Statuetteにはその部分が不足しているように見えます。

Just Cindy: Justify - Jenda's Agenda by Proud Citizen

6月のChurchill Downsでデビュー戦を勝つと、SaratogaのG3 Schuylerville Sを勝っています。その後はSpinaway S、Alcibiades SとG1に出走するも大敗しました。

母Jenda's Agendaは4勝馬でブラックタイプのCaesar's Wish Sを勝っています。Menifeeが入ってStorm Catクロスを作ります。また、祖母Just JendaにHarlanとPine BluffからHaloクロスが作られているのもちょっとポイントになりそうです。近親にはNyquistやSahara Skyが出ています。

Aspen Grove: Justify - Data Dependent by More Than Ready

5月デビューで2戦パッとしない結果に終わっていますが、3戦目にCurraghのG3 Newtownanner Sに出走し、最低人気ながら初勝利を重賞で勝ち取りました。しかしその後はいまいちで、今年はIrish 1000 Guineasにも出走するが最下位に終わりました。転機は北米で、Belmont Oaks Invitational Sに遠征すると直線最後に鋭く抜け出して勝利しています。続いてSaratoga Derby Invitational Sに出走しますが、ここは5着に終わりました。そのまま北米移籍となっていますが、E.P. Taylor Sでは6着で力的にはやや落ちるでしょう。

近親にはSoldier Of Fortuneが出る他、Intense FocusやSkitter Scatterが出るなどStorm Catとの相性は良いようです。母Data DependentはMore Than Ready×Machiavellian×Danehillという構成で、こちらにもHaloクロスが見えてきますね。

Champions Dream: Justify - Dancinginthedreams by Tapit

デビューはやや遅く9月のSaratoga。これを勝つと、BelmontのChampagne Sで5着を挟んで、11月にG3 Nashua Sを勝ちました。3歳になるとフロリダに渡ってTampa BayからKentucky Derby路線を狙うもののSam F. Davis S、Tampa Bay Derbyと大敗して脱落しています。

母DancinginthedreamsはG2 Pocahontas Sの勝ち馬。Menifeeが入ってStorm Catクロスを作ります。また、ダイレクトにTapitを入れてPulpitクロスを作りに行っており、PulpitPulpitで重要なのですが、In Realityのクロス付きでUnbridledが入ることも重要なポイントです。

Justa Warrior: Justify - A Z Warrior by Bernardini

7月にElis Parkでデビュー勝ちすると、そのままブラックタイプ競走Elis Park Debutante Sを勝ちました。Churchill DownsのG3 Pocahontas Sでは11着に敗れ、上位との差がありました。

母A Z WarriorはG1 Frizette S勝ちで、BernardiniにCarson City、Deputy Ministerと遡る血統構成は、A.P. IndyMr. ProspectorDeputy Ministerをクロスさせます。また、Bernardiniは母父にQuiet Americanを持っていることがポイントになります。

Justique: Justify - Grazie Mille by Bernardini

7月にDel Marでデビューして初勝利を挙げると、少し間を開けてG2 Chandelier Sを3着の後に、11月のDel Marのリステッド競走Desi Arnaz Sを勝ちました。その後も西海岸の重賞に顔を出していますが勝利はなく、近走は芝に切り替えてきています。

Raise Youからの牝系で半兄にはMo Townが出ています。BernardiniとCarson Cityを使ってJusta Warriorと酷似した構成で、A.P. IndyMr. Prospectorがクロスします。

Verifying: Justify - Diva Delite by Repent

8月のSaratogaでデビュー勝ちすると、G1 Champagne Sに出走して2着に入りました。そしてBC Juvenileにも出走していますが、ここは6着で2歳のキャリアを終えています。3歳になるとOaklawnのG2 Rebel Sに出走しますが4着どまりで、KeenelandのG1 Blue Grass Sを2着してKentucky Derby出走にこぎつけました。Kentucky DerbyではKingsbarnsと競りながらレースを引っ張りますが、競りつぶされて16着に大敗しました。その後はG3 Indiana Derbyを勝ち、G1 H. Allen Jerkens Memorial Sを2着と活躍しています。現在、初年度産駒では活躍馬の筆頭格です。

母はG3 Florida Oaksを勝っていて、半姉にはMidnight Bisouが出ています。

Arabian Lion: Justify - Unbound by Distorted Humor

10月にSanta Anitaでデビューしています。2歳ではデビュー戦勝利のみで、最後にG2 Los Alamitos Futurityで5着という記録があります。3歳になってからはG3 Robert B. Lewis Sを4着、G3 Lexington Sを2着でKentucky Derbyに間に合わず、Preakness SのアンダーカードでSir Barton Sを勝ちました。そこからG1 Woody Stephens Sを勝って、これがJustify産駒のG1初勝利となっています。さらにH. Allen Jerkens Memorial Sで3着と短距離で結果を出しつつありますが、Santa Anita Sprint Championship Sを7着に敗れたことでBCへの出走はなりませんでした。2023年いっぱいで引退し、今年からSpendthriftで種牡馬入りし、種付け料は3万ドルと発表されました。

Personal Ensignの一門で、Personal Ensign、A.P. IndyDistorted Humor、Justifyと組まれて、A.P. IndyMr. Prospectorがクロスします。

良血出身でG1も勝ちましたからやることはやったというところでしょうか。Justifyの評価が急激に上がったので、他に先んじて種牡馬入りするのはアリなんだろうと思います。

Red Riding Hood: Justify - Ballydoyle by Galileo

本格的に出てきたのは3歳になってからで、Dundalkのオールウェザーで初勝利とすると、EpsomのOaksにも出走していますが最下位に終わりました。適距離を探るように低迷を続けましたが、8月にCurraghのG3 Snow Fairy Sを勝って2勝目。中距離あたりが良さそうに見えますが、G1 British Champions Fillies And Maresでは6着に終わっています。

母BallydoyleはG1 Prix Marcel Boussacを勝ち、1000 Guineasで2着の活躍馬です。Mr. P's PrincessにStorm CatGalileo、Justifyと入るCoolmoreの自信作といえるでしょう。もちろんStorm CatMr. Prospectorをクロスします。母の全姉はMisty For Meでその産駒にはRoly Poly、U S Navy Flagの姉弟が出ています。とにかく2歳から早く仕上がる早熟な一族で、マイルまでこなすことが特徴です。Galileo直仔のMisty For Meは中距離をこなせましたし、Red Riding Hoodも中距離に向いているのはGalileoの影響かなと。

Unless: Justify - Clemmie by Galileo

3歳の5月に初勝利し、8月のCurraghでリステッド勝ちを果たしました。

母ClemmieはG1 Cheveley Park S勝ちで、その全兄がChurchillです。クールモアなのでGalileo×Storm Cat繁殖牝馬。Kangra Valleyを基点に、近年勢いのある牝系です。

初年度産駒からの活躍馬はこれくらいになりますが、上位馬に牝馬が目立つ特徴を有しています。

Statuette、Just Cindy、Aspen Grove、Justa Warrior、Justique、Red Riding Hood、Unlessが牝馬で明らかにフィリーサイアーという感じですね。

Second Crop

2023年のSecond Cropリーディングは獲得賞金が1000万ドルを超えて1位になりました。以下Good Magic、Bolt D'Oroとなっており、First Cropリーディングの上位3頭がひっくり返っています。

Justifyは2歳リーディングを獲得しており、2歳だけで500万ドルに迫る賞金を獲得しました。2022年にInto Mischiefが記録した2歳戦の獲得賞金記録を更新しています。

2世代目の2歳戦績は140頭が登録され、71頭が出走し、勝ち馬26頭で、42勝を挙げました。重賞馬6頭でG1馬が4頭出るというすさまじいものです。上級戦での活躍が目立ったため、平均勝利距離は7.04Fに伸びています。

一方で3歳を迎えた初年度産駒の戦績は登録169頭から出走が106頭で勝ち上がり45頭で62勝でした。重賞馬4頭でG1は2頭で2勝というのが先に見た通りです。この数字と内容では大して見るべきところはなく、欧州供用馬を含めた3歳リーディングでは12位になってしまいます。そもそも3歳と2歳の獲得賞金にほぼ差がないことがおかしいのですが、それだけ2023年の2歳馬が突出していたということでもあります。

2歳でG1馬が4頭出て、これはアメリカ供用の種牡馬としてはMr. Prospectorが1987年に記録して以来のことです。

Just F Y I: Justify - Star Act by Street Cry

8月のSaratogaでデビュー戦を勝利すると、Aqueduct開催のG1 Frizette Sを勝ってBC Juvenile Filliesに挑戦しました。このレースでは血統及び前走の勝ちっぷりからTamaraが人気を集め、ニューヨークのプレップを勝った無敗のG1馬としては軽く見られていました。レースでは序盤から逃げるTamaraを追走して直線を向いて先頭に出て、Jody's Prideの追い上げを凌ぎ切っての勝利。3戦無敗で2歳女王となりました。

Stellar JayneとStarrerを出したTo The Huntの牝系で、Starrerを手に入れたオーナーブリーダーGeorge Krikorianが手元で育てているファミリーです。Brookfield Farmの関与もある牝系であり、Mr. Prospectorに加えてRelaunchがクロスするところにその残滓を見る思いがします。In Realityを見てFoggy Noteを無視するのはいけないのですが。

Hard To Justify:  Justify - Instant Reflex by Quality Road

7月にSaratogaの芝戦でデビュー勝ちし、そのまま芝路線を進みました。東の2歳芝牝馬としては順当にG2 Miss Grillo Sに進んでここも勝つとBC Juvenile Fillies Turfに進み、先にカナダでG1勝馬となっていたShe Feels Prettyや遠征馬Porta Fortunaを下して3戦無敗の芝女王になりました。

母Instant Reflexはスプリンター。BourtaiからBantaの流れになるファミリーの傍系でWertheimerのG1馬Corrazonaを経由する一族です。近親にはJuly Cup勝ちのスプリンターStarmanが出ています。ベースにSeattle Slewを持ち、Quality RoadにSeeking The GoldMr. Prospectorの力のある所を使っています。

Opera Singer: Justify - Liscanna by Sadler's Wells

7月に2戦目で勝ち上がると、G3 Newtownanner Sを勝ってそのままG1 Prix Marcel Boussacを持って行きました。

母LiscannaはMrs. E.M. Stockwellの名義で出走し、G3勝ちがあります。繁殖入りしてからすでにHit It A BombとBrave Annaを出しており、Opera Singerは3頭目のG1馬となりました。Evie StockwellはCoolmoreのトップJohn Magnierの母でOpera Singerの生産は彼女の名義で行われています。

City Of Troy: Justify - Together Forever by Galileo

7月にCurraghでデビューすると間髪入れずにNewmarketのG2 Superlative Sを勝ちました。そこからは間隔を空けてG1 Dewhurst Sも勝って3戦全勝でシーズンを終えました。Newmarketですでに2戦しており、クラシックシーズンに向けて極めて期待の高い馬で、2000 Guineasの前売りは一本被りになっています。

母Together ForeverはFillies Mile勝ちのG1馬で、多数の活躍馬が出ているChain Storeの牝系に属しますTogether Foreverの半兄にLord Shanakill、全妹にForever Togetherが出ています。Sadler's Wells≒Nureyevのクロスで攻めるGalileo牝馬

Buchu: Justify - Flowering Peach by Galileo

Keenelandの芝G2 Jessamine Sを勝った牝馬。BC Juvenile Fillies Turfにも出走し、6着でした。

近親にMedaglia D'Oroが出ています。Giant's Causewayが入ってStorm Catクロスができ、Galileo×Storm Catと同じ系統となります。

Ramatuelle: Justify - Raven's Lady by Raven's Pass

フランスでデビューし、G3 Prix Du Bois、G2 Robert Papinと序盤の2歳重賞を連勝してPrix Mornyに出走して2着。その後の2歳戦には出走しませんでした。これで5戦3勝、2着2回という安定した戦績です。7月にCity Of TroyとRamatuelleが重賞を勝ったことでJustifyの2世代目が注目を集めることになりました。

母父はRaven's PassでGone West直系もまた一つの成功パターンであることが示唆されています。

Living Magic: Justify - Living The Life by Footstepsinthesand

重賞への出走はないものの、My Dear SとChelsey Flower Sとリステッドを2勝して6戦3勝です。

FootstepinthesandにMachiavellian、Sadler's Wellsと入り、Storm CatクロスとともにJustifyに対して重要な血統を押さえているというイメージです。要素詰込み系。

Valentine Candy: Justify - Taste Like Candy by Candy Ride

デビュー戦勝ちのあとG1 Hopeful Sは9着ですが、12月になってOaklawnのブラックタイプ競走を2勝しました。現状ではG1クラスのレース強度についていけないというところでしょうか。

A.P. Indyのクロスを持ちます。

Just Steel: Justify - Irish Lights by Fastnet Rock

3戦目で勝ち上がるとG1に挑ますが、Hopeful Sを7着、Breeders' Futurityを6着と力不足でした。その後ブラックタイプ競走のEd Brown Sに勝っています。

母Irish LightsはオーストラリアでG1 Thousand Guineasを勝っています。Change Waterの牝系に属し、Hennessyが入ってクロスします。

2年目の主な活躍馬でした。1年目から見せているフィリーサイアーらしさは変わらず、BCの2歳牝馬戦でダートと芝を両取りしています。2歳リーディングでは2歳トップの獲得賞金となったJust F Y Iと同じく3位になったHard To Justifyの存在が大きく、この2頭で約200万ドルにも及びます。他に、Opera Singer、Buchu、Ramatuelle、Living Magicが牝馬です。

また、欧州のCity Of Troyと合わせて3戦無敗の2歳G1馬を3頭持つということになって、これもまあ前例はなさそう。

In Southern Hemisphere

JustifyはオーストラリアのCoolmore分場にシャトルされ、その初年度はG1勝ちこそありませんが、オーストラリアでもFirst Cropリーディングを獲得する活躍を見せました。

Learning To Fly: Justify - Ennis Hill by Fastnet Rock

G3 Widden Sでデビューして勝利し、高額賞金のInglis Millennium、G2 Raisling Sと無傷の3連勝を挙げました。続いてG1 Golden Slipperに出走しましたが、落馬により競走中止となりました。

Inglis Millenniumの賞金が大きいため、オセアニアでの稼ぎ頭となっています。

母Ennis Hillはオーストラリアで1000mの重賞勝ち馬です。Fastnet RockにStravinsky、Centaineといかにもオセアニアという血統構成をしています。

Air Assault: Justify - Elegant Eagle by Zabeel

シーズン終盤の5月にアデレードのMorphettvilleでG3 Sires' Produce初勝利を挙げました。3歳シーズンもリステッドを勝っています。

母Elegant Eagleはシャトルサイアーが多用される繁殖で、半兄にGo Indy Goが出ています。

Star Of Justice: Justify - Fair Isle by Fastnet Rock

ニュージーランド産馬で、ニュージーランドで3歳になってデビューして2戦目で勝ち上がり。AshburtonのG3 Barneswood Farms Sを勝ちました。New Zealand 1000 Guineasは8着。

母Fair IsleはFastnet Rock×Stravinsky×Zabeelという血統で、Nureyevが入っているとありがたみがあるような気がします。

Legacies: Justify - Abyssinie by Danehill Dancer

デビュー戦勝ちから、ListedのAnzac Day Sを勝ちました。3歳シーズンはG3 McNeil Sを2着しています。

Storm Boy: Justify - Pelican by Fastnet Rock

2021年産まれの現2歳馬。12月にデビューすると、月末にはG3のB.J. McLachlan Sを勝ちました。

祖母はニュージーランドの名牝Seachangeです。

改めて種牡馬Justify

カタログでは"THE ONLY TRIPLE CROWN WINNER TO RETIRE UNBEATEN"などと書かれておりますが、そりゃさっさと引退しただけですやんくらいには思うところもあります。だって、三冠達成時点で無敗ってんならSeattle Slewも無敗でしたし。キャリアの違いは時代の違いもあるし、もちろんそれぞれが置かれている状況も違うわけで、これはフェアではない言い方とも思うのですが、ちょっと乱暴に言うと競走馬としてのJustifyには勝ち逃げという感じはあったわけです。

さて、ここまで2世代の産駒がデビューしたとはいえ、種牡馬としての見通しはまだまだ分かりません。何と言っても1年目の産駒と2年目の産駒の2歳実績が違いすぎて、今年の3歳戦でどのように出てくるか読めないのです。それでも2年目の産駒が今後の標準となるのであればとんでもない種牡馬になるのではないでしょうか。

今年3歳となると実績馬はもちろんアメリカでJust F Y I、ヨーロッパでCity Of Troyの無敗馬がそれぞれどんな結果をもたらすのかに注目です。一方アメリカの芝牝馬ということでHard To Justifyは序盤に目標となるレースがありませんがそこはChad Brownが実例豊富なので、Wonder Again SからBelmont Oaks Invitational Sを取りに行くのだろうなというあたり。一方で北米供用ということを考えるとKentucky Derby路線に乗ってくる牡馬が欲しいところでしょうか。

北米ダートから欧州芝まで産駒の活躍フィールドが広く、短距離に限定されるということもないように見え、オセアニアでも十分な結果を出しており、まさに万能種牡馬と思われます。

繁殖牝馬との組み合わせではCoolmoreの繁殖が多い関係からGalileoやSadler's Wellsを持つ血統が多くなってきています。加えて、Storm Catが何らかの形でクロスしてくるのが強めのパターンになっているのでしょう。もっともStorm CatGalileoが入るような繁殖牝馬はそもそものレベルが高いということもありますが。ただ、初年度でこのパターンが少ないことが、全体的な初年度産駒の不振という印象を持たせている気がします。

Mr. Prospectorのクロスも頻出で、まずGalileoが入る場合はMiswakiがあるのでそのクロスが発生します。北米の繁殖牝馬の場合はMr. Prospectorに加えてA.P. Indyをクロスさせるパターンが多く、Quiet Americanを抱えるBernardiniがその筆頭です。またTapitを使うパターンも出てきており、有望と思います。BernardiniTapitで共通点を見るならばQuiet AmericanやUnbirdledというTartanのFappianoを持つことでしょう。

一方Haloも有力なポイントとなっていそうで、Mr. ProsepctorのうちでMachiavellianが目立つのもこの要素かと思います。1本だけだとかなり遠くなるので、クロスするような仕掛けがあると面白いのかと判断しています。

オーストラリアではそもそもFastnet Rockの繁殖牝馬が多いのですが、それらを相手に活躍馬がしっかり出てくるのは重要なポイントで大きく外すことにはならないのでしょう。Danehill自体嫌ってくることはなさそうで、またSadler's WellsやNureyevのラインにも親和的に見えることから、総じて現地の繁殖牝馬の血統構成はJustifyにとって有利なのではないかと思います。今後の問題は種牡馬価値が高くなりすぎていつまでオーストラリアにシャトルできるかの方ではないでしょうか。

cf. Mr. Prospector 1987

さて、2歳のG1馬が4頭出たということで比較に挙げられたMr. Prospectorの1987年です。1980年代半ばはMr. Prospector産駒がプレミアムで、ちょうど1985年産まれが2歳となった年です。この時点でいくらでも活躍馬を挙げられそうですが、2歳でG1を勝った4頭は次の通りです。

ビッグネームは無論Forty Niner。2歳時6戦5勝で、BCには出走していませんがEclipse Awardで2歳牡馬チャンピオンに選ばれています。台頭したのが3歳になってからでここには上がっていないSeeking The GoldとともにKentucky DerbyではWinning Colorsに分からせを食らいました。

Classic CrownとOver AllはBC Juvenile Filliesに出走して、6着、7着に終わっています。

Ravinellaは3歳になると英仏の1000ギニーを勝って、古馬になるとアメリカに移籍して芝マイラーとして活躍を続けました。

cf. Gun Runner 2021

2歳リーディングでの比較となると2021年のGun Runnerを持ってくることになります。

2021年のGun Runnerは新種牡馬で、2歳リーディングを獲得しました。その原動力となったEcho Zuluは4戦全勝でBC Juvenile Filliesを含むG1を3勝という活躍です。他にはGuniteがHopeful Sを勝ってG1馬は2頭でした。これ以外にBC Juvenileで2着に入ったPappacapが有力な産駒でした。

産駒獲得賞金は約430万ドルでこれは当時としては記録的なものでした。直後の2022年にInto Mischiefが約480万ドルで更新し、さらに2023年にJustifyが更新することになりました。

ただ、Gun Runnerの強みはこの初年度産駒が3歳になって大暴れしたことで、3歳でG1馬が4頭、牡馬で2歳の活躍馬だったGuniteやPappacapがいまいちだったにもかかわらず、Early Voting、Taiba、Cyberknifeが台頭してくるという層の厚さを見せました。牝馬でもEcho Zuluが順調さを欠いたものの、SocietyやWicked Haloが出てきました。

そういった面ではJustifyは今年の3歳馬がどこまで伸びるかに注目となりそうで、年明けから早速Pilot CommanderがSanta AnitaのG2 San Vicente Sで2着に入ったり、Just SteelがOaklawnのリステッドで2着になっています。