Irish Champion S: G1 Leopardstown Turf 10F

エントリー時点では南アフリカのSee It AgainとDouble Superlativeの名前があったのだが、やっぱりということで出走馬が出た時点で消えていた。勝ち負けは別にして出てくればそれだけで注目したかったのだけど、まあこうなるよね。そしていつの間にかフランス勢も消え去っていた。

さて、最終的に8頭が残った今年のIrish Champion Sであるが、A.P. O'Brien厩舎から4頭が出馬予定である。古馬ではそのツートップであるAuguste RodinとLuxembourg、昨年と一昨年の勝ち馬が揃って出走する。また、3歳からはDoncasterのSt. Legerと両にらみでLos Angelesがエントリーを残していたが、この後の凱旋門賞への出走も絡んでIrish Champion Sへの出走となった。ここにいつものペースメイカーであるHans Andersenが加わる。この4頭ならまだAuguste Rodinだろうということで、Ryan MooreはAuguste Rodinの予定である。一方で今年ナンバーツーを務めているW.M. LordanはSt. LegerでIllinoisに騎乗するので、騎手の調整は大変なようである。

Auguste Rodinが出走するものの、どうでるかは走らせてみないとわからないので人気は3歳馬のEconomicsに集中した。もう一頭の3歳馬Ghostwriterも有力視される1頭である。

といったあたりで実質的にはO'Brien厩舎のAuguste RodinとLos AngelesにEconimicsとGhostwriterでの勝負だが、これだとGhostwriterが一枚落ちる印象。LuxembourgとShin Emperorがここに続き、Royal Rhymeでは厳しく、Hans Andersenはペースメイカーとしての役割をこなせるかどうかでしかない。

一方、St. LegerはLos Angelesがいなくともクールモアが前売り人気で上位を占めている。G2 Queen's Vaseの勝ち馬で前走のGreat Voltigeur SではLos Angelesの2着だったIllinois、3戦無敗の上り馬でG3 Gordon Sを勝ったJan Brueghel、G3 Irish St. Leger Trialを勝ったGrosvenor Squareと揃っていて、まあ十分な陣容だろう。Illinoisは勝ちきれていないが安定した戦績で、G1 Grand Prix De ParisとG2 Great Voltigeur Sでともに2着なら文句は言えない結果である。

こちらにも登録していたContinuousは翌日にLongchampで開催されるPrix Foyに回ることになって、これだと凱旋門賞視野ということなのだろう。5頭立てでFeed The FlameとIresineが出走予定となっているが凱旋門賞へのテストとしては相手関係が薄い。反面BluestockingとEmily Upjohnに加えてOpera Singerが予定しているPrix Vermeille、Look De VegaとAmbiente FriendlyにSosieが加わるPrix Nielはそれなり。

日曜日といえばアイルランドはフェスティバル開催がCurraghに移り、Irish St. Legerには今年負けなしのKypriosが準備しており、さらにGiavellottoとVaubanが絡んでくるそれなりのメンバーとなっている。また、クールモアが2歳G1に牡馬牝馬それぞれ無敗馬を送り込む。National Sには母Immortal VerseのHenri Matisse、Moyglare Stud Sには母Mecca's AngelのBedtime Storyと母Quiet ReflectionのLake Victoriaがそれで、もう血統を見るだけでくらくらする。こちらは牝馬戦がFrankel祭なのに対して牡馬戦ではまったくFrankelが出てこないという対照的な出走馬構成であるところも注目。

さて、Irish Champion Sに話を戻すが、International SやPrince Of Wales's Sに出走している馬が多いので、重複する部分は結構省いている。

Auguste Rodin: Deep Impact - Rhododendron by Galileo

A.P. O'Brien厩舎の4歳馬。Ryan Moore騎乗。キングジョージ5着以来の出走となる。走ってみないとわからないタイプなので考えるのがむなしくなるがLeopardstownは去年も勝っているのでと。

これまで14戦して8勝、2着が2回でG1を6勝しており、その中には2つのダービーとBCが含まれている。これだけなら素晴らしいのだが、残る4戦が着外どころかその3回で二桁着順に飛ぶという極端な戦歴である。特に今年はDubai Sheema Classicの12着とキングジョージの5着が非常に印象を損ねている。

今年で引退種牡馬入りだろうが、陣営のコメントはころころと変わるのでシーズン終盤にどのレースを選んでくるかはちょっと分からない。噂通りジャパンカップなら欧州調教のディープインパクト産駒がどれほどのレースを見せてくれるのかという興味はある。

Hans Andersen: Frankel - Shadow Hunter by Arcano

A.P. O'Brien厩舎の4歳馬。Chris Hayes騎乗。

G1でのペースメイカーで定着した感があり、Auguste RodinやCity Of Troyの露払いを務めるというところだが、前走のInternational Sは自身がレースを作る前にCity Of Troyが地力で勝負していたりとちょっとうまく役割を果たせていない気もする。

Luxembourg: Camelot - Attire by Danehill Dancer

A.P. O'Brien厩舎の5歳馬。Declan McDonogh騎乗。今年はちょっと安定を欠くというか、前走の様にAuguste Rodinと同じく飛んでしまってはいつ勝つのかという気にもなるだろう。

Royal Rhyme: Lope De Vega - Dubai Queen by Kingmambo

K.R. Burke厩舎の4歳馬。Clifford Lee騎乗。G3 Brigadier Gerard Sの勝ち馬だが、G1では苦戦しており、前走のInternational Sは6着に終わっている。

Economics: Night Of Thunder - La Pomme D'Amour by Peintre Celebre

William Haggas厩舎で今シーズン3戦全勝の3歳馬。Tom Marquand騎乗。

2歳のデビュー戦は4着に終わっているが、今年は4月の初戦で勝ち上がるとYorkのG2 Dante SでAncient Wisdomを6馬身差に下した。この時はゲートで鼻をぶつけて出血していたというのだからモノが違うということになったが、Derbyを回避して休養に入り8月になってフランスで復帰した。DeauvilleのG2 Guillaume D'Ornanoを快勝して健在であることを示している。

父はマイラーのNight Of Thunderだが、母はPeintre Celebre × Krisという血統で2500mの重賞勝ち実績があるLa Pomme D'Amourである。

Ghostwriter: Invincible Spirit - Moorside by Champs Elysees

Clive Cox厩舎の3歳馬。Richard Kingscote騎乗。

Eclipse S、International Sと続けてCity Of Troyの3着という結果で、評価基準としていいラインを作ってくれそう。

Los Angeles: Camelot - Frequential by Dansili

A.P. O'Brien厩舎の3歳馬。Dylan Browne McMonagle騎乗。

通算では6戦5勝で、負けたのはDerbyの3着があるのみ。Irish Derbyを勝って前走はG2 Great Voltigeur Sを勝っている。当初はSt. Leger目標と言われていたが、状況が変わった。大きいのは凱旋門賞に出走する公算が高くなったことで、それならSt. Legerよりこちらの方が臨戦として上だろう。また、St. LegerはIllinoisで十分という状況になったことも要因としてある。

Allez Les Troisの牝系でFacteur Chevalの同族だが、末の娘であるViolanteからの分岐となり、Facteur Chevalとは3世代のズレが生じる。KingmamboDanehillのごり押しクロスとなるが、Camelot産駒はCamelotの母系にアプローチしている方がよい結果になりやすい。

Shin Emperor: Siyouni - Starlet's Sister by Galileo

矢作厩舎の3歳馬。坂井瑠星騎乗。Sottsassの全弟として注目を集める日本ダービーの3着馬。

日本でデビューし、G3 京都2歳Sを勝って年末のG1 ホープフルSで2着に入った。3歳の今年はG2 弥生賞の2着からクラシックに挑んで皐月賞が5着、ダービーが3着という結果。Irish Champion Sから凱旋門賞を狙うという遠征プランで、全兄のSottsassが凱旋門賞を勝ったのは4歳だがSiyouni産駒は典型的には3歳がピークなのでこのタイミングの遠征は正しい。Sottsassもトータルで見れば3歳の方が良い成績なわけで。

父Siyouniはフランスに居を構える種牡馬としては20万ユーロと段違いの種付け料を誇る。SottssasやSt. Marks Basilicaを始めとして、Paddington、Tahiyraなど活躍馬は多数で現役にもフランス中距離路線のトップホースであるMqse De Sevigneを有している。Nureyev≒Sadler's Wellsのクロスから多くの活躍馬を出し、Galileoはその中でも突出気味である。それ以外ではDanzigMr. Prospectorをクロスさせるパターンも豊富で、Shin Emperorは母にMiswakiクロスがあり、継続的なMr. Prospectorクロスが効果的と言えるのではないか。

母Starlet's SisterはSottssasの他に、父MyboycharlieからSistercharlie、父AcclamationからMy Sister Natを出した名繁殖である。

International S: G1 York Turf 10F56yd

なんで13頭も出てくるんだとも思うが、現状の欧州中距離は古馬ではAuguste RodinとLuxembourgが軸なもんで、この2頭をまとめてキングジョージで使ってしまったらInternational Sが手薄になるのはまあそうだろう。City Of TroyがEclipse Sを快勝した時点でクールモアの使い分けは決まったのだろうが、ContinuousはG3 Royal Whip Sに持っていくくらいならこっちでもとは思わなくもなく。

今年前半の中距離G1でいろいろ勝ち馬が出ているもののMqse De Sevigneはフランスで牝馬限定戦を中心にしたローテーションだし、Haya ZarkはそのMqse De Sevigneに負けた。CurraghでAuguste Rodinを下したWhite Birchは登録しても出てこない。

といったあたりでマイルや12F路線からのチャレンジャーがいてこの頭数。City Of Troyはどうしようもなくとも、それ以外なら何とかなりそうという思惑はありそうか。

Alfaila: Dark Angel - Adhwaa by Oasis Dream

Owen Burrows厩舎、Jim Crowley騎乗。

Shadwell所有の5歳馬。父がDark Angelということもあってか最初は短めの距離で使われていたが、3歳の夏から9FのG3 Strensall SとDarley Sを連勝して中距離路線に入ってきた。去年はG2 York Sを勝ち、G1初出走となったIrish Champion Sでは5着に終わっている。今年はAscotのG1 Prince Of Wales's Sから出走して4着、前走ではYork Sの連覇を決めた。充実しており、相手が格段に軽いとはいえ同じ舞台のYork Sを連覇していることは無視できない。

Dark Angel産駒は時折中距離までこなす産駒も出てくるが、G1では欧州の9F以上では実績がない。9F勝ちはいずれもアメリカやドバイのコースである。AlflailaはYork競馬場で重賞3勝しておりこのコースを得意としているというか、Yorkなので勝負できているということはあるかもしれない。

Docklands: Massaat - Icky Woo by Mark Of Esteem

Harry Eustace厩舎、Hayley Turner騎乗

OTI Racing所有の4歳馬。主としてマイル戦を走っており、今期は3戦してすべて2着という結果である。重賞級というイメージはないが、前走はAscotのG1 Queen Anne Sで2着にきて驚いた。マイルより長い距離では未勝利の時期にWolverhamptonのオールウェザー戦で8.5Fに出走しただけである。

父MassaatはTeofilo産駒で7Fから8Fで実績があり、2000 Guineasの2着馬である。Docklandsは初年度世代で、オーストラリアのCoco Jambooと並ぶ活躍馬である。2世代目からはドイツでG3 Schwartzgold Rennenを勝ったQueues Likelyがいて重賞レベルの実績持ちはこれくらい。母父がMark Of Esteemというところからも分かるように母系の更新は遅く、近親に目立った活躍馬はおらず、半姉Ickymasho、半兄Harbour Viewsが重賞レベルで実績を残している程度。

Durezza: Duramente - More Than Sacred by More Than Ready

Tomohito Ozeki厩舎、Cristophe Lemaire騎乗。

Carrot Farmの4歳馬で去年の菊花賞馬である。今年は金鯱賞2着で始動したものの、春の天皇賞は15着と惨敗した。

母More Than SacredはMore Than Ready産駒のオーストラリア産馬でG1 New Zealand Oaksなどを勝った。Raffles Racingのオーナーブリードで引退後にノーザンファーム繁殖牝馬として輸入したが、Durezzaが出るまで活躍馬に恵まれなかったようだ。Durezzaがデビューした後の2022年12月に繁殖牝馬として上場され、Yulong InvestのYuesheng Zhangが落札して現在はアイルランドで繁殖として活動しているらしい。Welsh Flameの流れを汲む2-f族で近親にはFlame Of TaraからSalsabilやMarju姉弟が著名である。

Hans Andersen: Frankel - Shadow Hunter by Arcano

A.P. O'Brien厩舎、W,M. Lordan騎乗。

4歳馬。もうお馴染み、クールモア陣営のペースメイカー。

Israr: Muhaarar - Taghrooda by Sea The Stars

John & Thady Gosden厩舎、William Buick騎乗。Shadwell所有の5歳馬。前走はAscotのListed勝ち。過去にNewmarketのG2 Princess Of Wales's S勝ちがあり12Fで実績を残しているが、今年は10F路線にシフトしてきている。

母はOaksやキングジョージを勝ったクラシックディスタンスの名牝Taghrooda。13-c族のうちAlbanillaの血を引く名族でイニシャルがEとくれば、近親には本流たるAga Khan生産のOaks馬Ezeliyaが出てくる。父がスプリンターのMuhaararではあるが、やはりこのファミリーはクラシックディスタンスこそが本領というところはあろう。

Maljoom: Caravaggio - Nictate by Teofilo

William Haggas厩舎、Tom Marquand騎乗。Sheikh Ahmed Al Maktoum所有。

マイル路線の5歳馬。今年はQueen Anne Sで3着、Sussex Sで2着と結果を残している。

祖母Woodmavenの血統にアメリカ色が強く母NictateはBuckpasserの恩恵を強く受ける。Archとの相性が良い牝系で、Arkansas Derbyを勝ったArcharcharchが出ている他、1000 Guineasで2着のArch Swingやロシアのオークス馬S Aranchaも出ている。

Royal Rhyme: Lope De Vega - Dubai Queen by Kingmambo

K.R. Burke厩舎、Clifford Lee騎乗。Sheikh Mohammed Obaid Al Maktoum所有。4歳馬の中距離ランナー。今年はG3 Brigadier Gerard Sを勝っているが、G1となるとちょっと物足りない。前走は同条件のG2 York Sで4着、4頭立ての最下位であった。

母Dubai QueenDubawiの半妹である。

Zarakem: Zarak - Harem Mistress by Mastercraftman

J. Reynier厩舎、Maxime Guyon騎乗。Ecurie Benaroussi SofianeとHaras D'Etrehamの共有。

4歳馬。去年はフランスで5連勝しているが、パリではなく南部の競馬場であった。目立つ成績としてはVichyのListed Prix Frederic De LagrangeでDouble Majorを下してステイヤー路線に行かせたことくらいか。自身はパリでLongchampのG2 Conseil De Parisで6着となっている。今年はG2 Prix D'Harcourtを勝って、一番人気に支持されたPrix Ganayで8着に終わるも、前走のPrince Of Wales's Sでは2着と浮き沈みが激しい。

父ZarakはZarkavaを母とする良血馬でG1 Grand Prix Saint-Cloudを勝ってHaras Bonnevalで種牡馬入り。3世代目となる今年の3歳からPoule D'Essai Des Poulainsを勝ったMetropolitanが出た。他にZagrey、Haya Zarkを出しており、フランスで注目を集める若手種牡馬である。

Bluestocking: Camelot - Emulous by Dansili

Ralph Beckett厩舎、Rossa Ryan騎乗。

Juddmonteの4歳牝馬。前走はキングジョージで2着。Yorkでは今年のG2 Middleton Fillies Sを圧勝しており相性は良さそう。ややレース間隔が詰まっているのは気に掛かる。

父がCamelotということもあってか3歳では12Fを使われていたが、今年は10Fに出てきて成功している。母がG1 Matron S勝ちのマイラーEmulousでその全弟に中距離の活躍馬First Settingが出ている。

Ambient Friendly: Gleneagles - Roxity by Fastnet Rock

James Fanshawe厩舎、Robert Havlin騎乗。The Gredley Family所有。

EpsomのDerbyを2着、CurraghのDerbyを3着としてきた3歳馬。Irish Derbyでは一番人気を背負い、3歳クラシック路線の上位馬と言って差し支えないがCity Of Troyの印象が強すぎてやや影が薄くなってはいるか。City Of Troyと勝負するには厳しそうだ。

Calandagan: Gleneagles - Calayana by Sinndar

F-H Graffard厩舎、S. Pasquier騎乗。

Aga Khan所有の3歳騙馬。フランスでG2 Prix Noaillesを勝ったものの去勢されていたためレース選択が限られ、G3 Prix HocquartからAscotのG2 King Edward VII Sに出走して圧勝で3連勝を決めた。レース内容からは12Fが合っていそう。

Aga Khanに引き取られたLagardereの遺産である16-b族の出身で、近親にはClodovilや南アフリカのダービー馬Aragostaが出ている。父GleneaglesはスプリンターのMill Streamを出している実績もあるが、やはり本質的にはクラシックディスタンスを得意としそうなタイプが多く、本馬の場合はSinndarを父とする母Calayanaや近親のAragostaがやや長めの距離を得意としており、血統背景からも12Fがベストになるのではないかと思われる。

City Of Troy: Justify - Together Forever by Galileo

A.P. Obrien厩舎、Ryan Moore騎乗。

クールモアが誇る3歳、6戦5勝のEpsom Derby馬。Derbyの後はSandownで古馬相手のEclipse Sを快勝しており、今となっては2000 Guineasで9着に惨敗したのは何だったのかと言いたくなる。それだけ冬場の調整に失敗していたということなのだろう。

Derbyでも快勝しているが、やはり10F路線の方が向いているような印象は受ける。

Galileo牝馬の母に対してミスプロを追加してくるJustifyはマッチしてそうで、Yarn=Preachの姉妹クロスで早熟なスピードを持ち込みそうなところにGhostzapperA.P. Indyが適度な重さをもたらすように思われる。

Sadler's Wells≒Nureyevで組まれた母Together Foreverは2歳のG1 Fillies' Mileを勝っており、その全妹Forever TogetherはOaks馬である。9-e族でも盛況なGeneral Storeの牝系で他にHeatseeker、Lord Shanakill、Havana Greyが近親に出ている。また近縁としてジャンタルマンタルの名を上げることもできる。

Ghostwriter: Invincible Spirit - Moorside by Champs Elysees

Clive Cox厩舎、Righard Kingscote騎乗。

3歳馬。去年はデビューから3連勝でG2 Royal Lodge Sを勝っている。今年は2000 Guineasからスタートして4着。Prix Du Jockey Clubも4着ときて、前走はSandownのEclipse Sを3着。前走ではCity Of Troyとは結構な力量差があるように思われた。

こちらも9-e族の名牝系でZafonicやZamindarを出したZaizafonの末裔で、祖母Marching Westがその全妹である。

Savabeelをしっかり見る記事

略歴

Savabeelは2001年9月23日産まれのオーストラリア産馬。オーストラリアで現役時14戦3勝で、G1を2勝した。3歳いっぱいで現役を引退するとニュージーランド北島の馬産の中心地であるワイカト地方にあるWaikato Studで種牡馬入り。ニュージーランドとオーストラリアで多くのG1馬を輩出し、ニュージーランドでのリーディングサイアー獲得は8回に及ぶ。

血統背景

父Zabeelはオセアニアの大種牡馬Sir Tristramの後継種牡馬として名高く、Sir Tristram系の嫡流としてその父系を現代にまで伸ばしている。

Savannah SuccessはオーストラリアとニュージーランドでG1を2勝した名牝である。New Zealand Oaksでは名手Lance O’Sullivanを鞍上に迎え2馬身半差で快勝した。3歳で引退すると繁殖入りし、オーストラリアでDanehillを付けた後Zabeelを付けるためにニュージーランドに渡っている。ニュージーランドで産んだ初仔がGarrison Savannahで、続けてZabeelを父とする二番仔がSavabeelであった。Zabeelを付けたのは一年だけで、すぐにオーストラリアに戻っているためSavabeelはオーストラリアで産まれている。Savabeelの活躍を受けて半兄Garrison Savannah、半弟Arlingtonも種牡馬入りしているが、いずれも芳しい結果は残せなかったようだ。

そのファミリーは19世紀にドイツで生まれオーストラリアに輸入されたWhite And Blueを基点とするオセアニアの土着牝系で、1-o族に属している。Savabeelが出たのはクイーンズランドに流れた分岐で、同系のDanelaghから同じくZabeelを父としてVengeance Of RainとDizelleの兄妹が出て同時期にそれぞれ香港とオーストラリアでG1を勝ったことが注目されるだろう。また、後にG1を6勝したBlack Heart Bartが従弟に出ている。Vengeance Of Rainは1歳上、Dizelleとは同年齢だったが、G1勝ちではSavabeelの方がDanelaghの兄妹より先であった。DizelleはZabeelの4×2という特徴的なクロスを有するPinotを産み、Victoria Oaksを勝った彼女は繁殖牝馬として日本に渡っている。

生産者

Savabeelの生産者名義はGlenlogan ParkとGraeme A. Rogersonの連名である。

Glenlogan Parkはクイーンズランドで有数の規模を誇る生産者で、祖母Alma Materを所有しておりSavannah Successの生産者でもあった。

Rogersonはニュージーランド最多勝調教師であり、2012年にはニュージーランドの競馬殿堂入りを果たしている。ニュージーランドの他にシドニーとドバイにも拠点を有し、Savannah Successを調教師として管理し牝馬チャンピオンに育て上げた。彼は生産者としても長く活動しており、現在でも80頭を超える繁殖牝馬を有している。その生産の著名な例としてWinxの母Vegas Showgirlがあり、現役引退後に売却している。自身をコマーシャルブリーダーと位置づけているようで、活発に繁殖馬の取引を行っているようだ。

競走成績

Savabeelは当歳で母Savannah SuccessとともにWestbury StudのGerry Harveyに売却されたが、後のSavabeelをRogersonが買い戻している。そしてRogersonを中心としたシンジケートの所有として、そのRandwickの厩舎で調教された。したがってその現役生活はシドニーエリアを中心としたものとなった。

2歳の2月にKensingtonの名を冠したRandwick競馬場の開催における2歳のハンデキャップ戦で、Savabeelはデビュー勝ちを収めた。人気サイドではなかったものの、1000mで4.5馬身差をつける快勝であった。しかし2歳ではこの1勝のみで、G2 Pago Pago Sでは1着が後の香港スプリント王者Absolute ChampionであるGenius And Evil、2着には翌シーズンの最優秀三歳馬にして後の大種牡馬Fastnet Rockという好メンバーで6着、G1 Champagne Sではここでシドニー2歳三冠を達成したDance Heroの前に3着という結果に終わった。

3歳の春シーズンはSavabeelのキャリアハイライトとなった。RandwickやRosehillの3歳戦の重賞を使われ1800mのG2 Gloaming Sで2着と距離が延びて結果が出たところで、10月には2000mのG1 Spring Champion Sを勝って2勝目を挙げると、その月のうちにメルボルンに遠征しシーズン前半の中距離チャンピオンを決めるG1 Cox Plateに出走した。ここには古馬勢として前年のシドニーで3歳戦を席巻したニュージーランド最強馬Starcraft、三連勝中で一番人気に支持されたElvstroem、充実一途のGrand Armee、Moonee Valleyを得意とする前年勝者Fields Of Omagh、牝馬ながらに香港ダービーを勝ったElegant Fashionといったメンバーが集まり、3歳でG1を勝ったばかりのSavabeelは13頭中の6番人気という評価であった。SavabeelはこのレースでFields Of Omaghに1馬身差をつけて勝利した。3歳馬で48.5kgの斤量に助けられた面はあるものの、これだけのメンバーが揃ったCox Plateを勝ったことでSavabeelの評価は上がる。連闘で出走したVictoria Derbyを2着として春シーズンを終えている。

3歳の秋はG1 C.F. Orr Sから始動してElvstroemの2着とするものの、その後は振るわず3歳のシーズンをもって引退した。

通算では14戦3勝でG1を2勝。2000mがベストだが、2500mのVictoria Derby、1400mのC.F. Orr Sでそれぞれ2着しており、距離への対応力はあったと考えられる。

種牡馬成績

引退後はWaikato Studにて種付け料35000NZドルで種牡馬入り。二年目の産駒からScarlett LadyがQueensland Oaksを勝ったのを皮切りに、33頭のG1馬を出し、合計で55勝としている。またステークス馬は145頭に到達し、父Zabeelの持つ166頭の記録に近づいている。

Savabeelは今年で23歳になるが昨シーズンも100頭を超える種付けをこなしており、健康状態に問題はないとされる。2024シーズンの種付け料はニュージーランド最高額の10万NZドルを維持する。

現役時のオーナーだったRogersonは種牡馬シンジケートにも加わっており、毎年2頭の牝馬を種付けに送っているという。

ニュージーランドのサイアーリーディングは少し複雑で、ニュージーランドのみの賞金を集計し一般的にNZリーディングサイアーとみなされるGrosvenor Awardに加えて、ニュージーランドとオーストラリアの賞金を合算したDewar Awardと全世界の賞金をまとめたCentaine Awardの3つの評価系が存在する。

Savabeelは2014/15シーズンから8年連続でGrosvenor Awardを獲得し、2022/23シーズンではProisirに奪われたが、2023/24シーズンはリーディングを奪い返した。加えてDewar Awardは2015/16シーズンから2019/20をOcean Parkに取られるがそれ以外では独占し7度、Centaine Awardは2015/16から連続で8度獲得している。

Grosvenor Awardを9回獲得しており、これは20世紀半ばの大種牡馬Foxbridgeが記録した11回に次ぎ、近年ではこの領域でZabeelを凌いでいたVolksraadの8回を超えた。Dewar Awardはオーストラリアでの出走割合が多かったZabeelが15回という圧倒的な実績を持っておりこちらはまだまだ及んでいないが、これに関しては初年度にOctagonalを擁して早々にタイトルを獲得していたZabeelが凄すぎるのである。一方でSavabeelはその種牡馬生活の序盤にWaikato StudではO'Reillyの全盛期、Windsor Park StudではHigh Chaparralシャトル期に重なっており、種牡馬タイトル獲得まで時間がかかっていた。

とはいえ現在では祖父Sir Tristramと父Zabeelを継いで同時代でずば抜けた実績を誇る種牡馬となっているSavabeelだが、自身の後継種牡馬は未だ心許ない状況である。初期の活躍馬には牝馬が多く、または名マイラーKawiのように騙馬かという状況で、牡馬のG1勝ちは2017年にNew Zealand 2000 Guineasを勝つEmbellishを待たねばならなかった。そのEmbellishはCambridge Studで種牡馬入りし、初年度世代が3歳になったばかりである。Tasmania DerbyやG3 Food Services Chairman's Sを勝ったBold Soulが代表産駒となっている。

なお近年になってSavabeel後継の状況は改善しており、オーストラリアのNewhaven ParkはCool Aza Beelを種牡馬入りさせ、Savabeelの牡馬としては初めてG1を2勝したMo'Ungaも2024/25シーズンから同スタッドに導入されることが決まっている。またSavabeelを繋養するWaikato StudはNew Zealand 2000 Guineas勝ちのNoverreを後継候補として確保した。これらは種牡馬Savabeelが実績を積み上げたことで、牡馬が容易に去勢されなくなったことが理由の一つに挙げられる。

Sir Tristram父系

Savabeelの父系はCambridge Studによってニュージーランドに導入されたSir Tristramを起点としてSir Tristram系、あるいはこのSir Tristramの祖父からSir Gaylord系とされることが多い。

Sir Tristram自身は名オーナーRaymond Guestの生産で、父はそのRaymond Guestの代表馬であるSir Ivor、さらにその父がSir Gaylordである。

Sir GaylordSecretariatの半兄としても知られ、Kentucky Derbyの最有力馬と目されながら直前に故障で引退を余儀なくされた。種牡馬としてはヨーロッパで成功し、Sir IvorHabitatを擁してTurn-To父系の一分岐であるSir Gaylord系を構成した。他に後継種牡馬としてDrone、Lord Gaylord、Lord Gayle、牝馬ではGay MatildaやGay Missile、GailyがSir Gaylordの産駒として知られる。

Sir Ivorはその代表産駒でイギリスで2000 GuineasとDerbyを勝った二冠馬であり、かつ同年中にアメリカに渡りWashington DC Internationalを勝った名馬である。種牡馬としてのSir Ivor牝馬の活躍が目立つフィリーサイアーであり、Sir Tristram以外の父系は大きく発展することはなかった。母父として極めて優秀でありGreen DesertAlzaoShareef DancerEl PradoGoodbye Halo、Avianceなどその活躍馬は枚挙に暇がない。現代では直接母父の位置に来ることはもうないとはいえ、血統表において牝馬の父として入る場合に極めて重要な種牡馬であるといえる。

Sir Tristramの母方はHyperionの半妹All Moonshineを三代母にするという良血である。All Moonshineの産駒に名種牡馬Mossboroughが出ている他、牝駒のEye Wash、French Polish、All My Eyeがそのファミリーを大きく発展させ、Selene牝系の中核を成している。

Sir Tristramの競争実績は評価できるレベルではなかったものの、Cambridge Studの創設にあたりその軸となる種牡馬を求めていたPatrick Hoganがその血統に惚れ込みニュージーランドに導入された。気性の悪さなども懸念されたが種牡馬入り直後からSovereign RedやGrosvenor、中期にはKaapstad、そして後年にZabeelを出してニュージーランドのみならずオセアニアを舞台に空前の成功を収めることになった。現在ではGrosvenorやKaapstadからの直系は衰退し、Zabeelのラインによって支えられている。

Zabeelの直系ではSavabeelの他に、OctagonalからLonhroを経てPierroに繋がるラインがあり、Pierroの後継種牡馬として一番手のPierataは現在Yulong Studに繋養され、初年度産駒がデビューしたところである。2歳のG1馬は出なかったが、Golden Slipperで2着のColemanを出している。こちらは牡馬産駒に対する去勢傾向がやや緩やかでOctagonal、Lonhro、Pierataがそれぞれ初年度産駒で後継となって父系の更新が速く、Savabeelとは対照的である。

Sir Gaylord父系全体で見ると21世紀になってからは衰退が著しく、現在ではZabeel直系とトルコで活躍するLuxorが残る程度になっている。こうしたなかで異系としての需要が出てきており、Octagonal、Lonhro、Denmanは北半球へのシャトル実績を有し、OctagonalからはLaverockが出た。

産駒実績

Savabeel産駒をG1馬を中心に見ていく。Waikato Studに繫養されていることから、母父にはWaikato Studで一つ前の世代の種牡馬にあたるPinsやO'Reillyが多く、さらにその前にはCentaineを持つパターンが目立つ。これら種牡馬はすべてGarry ChittickのWaikato Studをニュージーランドで最高の牧場に発展させた功労者たちである。

ニュージーランド種牡馬事情を鑑みると、2001年から2004年までMontjeuがWindsor Park Studにシャトルされており、2005年にはHigh Chaparralに切り替わった。Savabeelの種牡馬入りは2005年とHigh Chaparralシャトル初年度とぶつかっている。このHigh Chaparralニュージーランド初年度産駒はSo You ThinkやShoot Outを出す彼の種牡馬キャリア最大のプレミアムで、初年度がそこと被ったSavabeelには影響があったように思われる。

Stud Record as of the end of the season 2023/24

Crop Foal Runner Winner Wins SW GW G1 Winner
2006/07 86 69 50 153 6 3  
2007/08 91 79 62 221 11 5 Scarlett Lady
2008/09 83 73 53 192 10 6 Sangster, Diademe, Brambles
2009/10 89 73 45 168 8 4 Soriano, Costume
2010/11 97 84 62 250 7 6 Kawi, Lucia Valentina
2011/12 53 47 34 113 7 4 Shillelagh, Savarina, Sound Proposition
2012/13 133 104 78 260 12 7 Pasadena Girl
2013/14 134 110 88 282 12 11 Hall Of Fame, Nicoletta
2014/15 115 96 77 252 13 9 Savvy Coup, Concert Hall, Hasahalo, Embellish
2015/16 112 96 76 269 10 7 Prise De Fer, The Chosen One, Savy Yong Blonk, Sword Of Osman
2016/17 134 111 83 259 11 7 Probabeel
2017/18 112 90 69 207 15 11 Atishu, Mo'Unga, Amarelinha, Cool Aza Beel
2018/19 109 89 69 169 9 7 I Wish I Win, Noverre, The Perfect Pink
2019/20 124 108 76 174 8 6 Skew Wiff, Major Beel
2020/21 106 71 35 55 5 4 Orchestral
2021/22 75 14 6 7 1 1  

2006年産

初年度産駒となる2006年産馬はよく言って平凡なレベルにとどまっている。重賞馬は3頭出したが、G1には届かなかった。

Tullamore 2006 out of Trocair by Flying Spur

騙馬。初年度の筆頭活躍馬で、1600mから2400mで5勝、G2 Brisbane Cupを勝った。

My Emotion 2006 out of Midnight Rock by Rory's Jester

牝馬。1200mから1600mで3勝、G2 Moonee Valley Fillies Classic、G3 VRC Thoroughbred Breeders Sを勝った。Thoroughbred Breeders Sの勝利が種牡馬Savabeelに取って初の重賞勝ちであった。

2007年産

Savabeelにとって初めてのG1馬Scarlett Ladyが出て種牡馬としての評価を高めた世代である。重賞馬5頭で計12勝を挙げており、この世代の活躍はSavabeelにとって大きな飛躍のきっかけとなっている。

Scarlett Lady 2007 out of On Call by Ironclad

牝馬。1400mから2400mまでで8勝。G1 Queensland Oaksを勝ち父に初G1をもたらした。

デビュー5戦目に勝ちあがるとそこから連勝を続け、G2 Travis S勝ち後にオーストラリアのクイーンズランド開催に遠征した。オーストラリアでも勢いが止まらず、G3 The Roses S勝ちからG1 Queensland Oaksを勝って3歳のキャリアを終えた。

4歳になってもオーストラリア遠征を敢行しているが、結果は伴わなかった。遠征の合間にG1 New Zealand Sを勝っている。

Floria 2007 out of Aria by Centaine

牝馬。1300mから2400mまでで5勝。オーストラリアの牝馬戦線で長く活躍しG2 Brisbane Cupなど重賞3勝。

Lady Kipling 2007 out of Akela by Al Akbar

牝馬。マイル戦で活躍し通算11勝を挙げた。G2を2勝し、G1では2着を3回記録している。

2008年産

前年の世代に続いて3歳シーズンでG1馬が出て、オーストラリアでも通用するクラシックディスタンスの産駒を出せる種牡馬となった。

Sangster 2008 out of Quinta Special by Spectrum

騙馬。1200mから3200mで6勝。ニュージーランドのチャンピオンステイヤーとなった。

2歳のシーズン終盤に1200mのデビュー戦を勝ち上がった。3歳になるとオーストラリアに遠征し、G1 Spring Champion Sを3着、G3 Norman Robinson Sを2着と2000mのレースで上位に入って、G1 Victoria Derbyを勝った。3歳春のキャンペーンが終わると一時ニュージーランドに戻り、1400mのG1 Waikato Draught Sprintで一叩きしてオーストラリアの秋競馬に遠征した。なお、Waikato Draught Sprintは距離が全くあっておらず最下位であった。秋シーズンは揮わず最大目標のAustralian Derbyは9着に終わっている。

4歳になるとニュージーランドでローテーションが組まれ、距離が伸びてくると結果を出して2000mのG1 International Sと3200mのG1 Auckland Cupを勝った。三度オーストラリアに遠征すると2400mのG1 The BMWで3着とやはり距離が長いレースで結果を残している。

正統的なクラシックディスタンスランナーかつステイヤーであり、前シーズンのScarlett LadyがQueensland Oaksを勝ったのに続いて、本馬がVictoria Derbyを勝ったことはSavabeelがダービー・オークス路線のクラシックな走者を出すタイプの種牡馬であるという印象を強くすることになった。

Diademe 2008 out of Bling by O'Reilly

牝馬。7勝を挙げたマイラー

3歳になってデビューするが、4歳になった3戦目の1600m戦で勝ち上がるとそのまま3連勝、重賞挑戦しても勢いは鈍らずG2 Cal Isuzu Sを2着、G2 Rich Hill Mileを3着からG3 Westbury Classicで重賞初勝利となった。G1 NZ Thoroughbred Breeders Sで3着とするとシーズンの最後はオーストラリアのブリスベンに遠征したが、結果ははかばかしくなかった。5歳のシーズンはCal Isuzu Sで重賞2勝目。6歳ではWestbury Classicを再び勝って、NZ Thoroughbred Breeders SでG1勝利に届いた。その後は連闘でオーストラリアのG1 Queen Of The Turf Sに出走したが8着、さらにG3 Dark Jewel Classicを6着が最後の出走となった。

Brambles 2008 out of Prickle by Pins

騙馬。オーストラリアで出走し1400mから2400mで6勝を挙げた。

メルボルンのPeter G Moody厩舎からデビューし、地元で2勝を挙げると3歳秋にシドニー続いてブリスベンに遠征している。DoombenのG3 Rough Habit Plateを勝つと、さらにG3 Grand Prix S、G1 Queensland Derbyとブリスベン開催の3歳馬のトップに立った。古馬になってからステイヤーとしての活躍が期待されたものの、ケガにより2年のブランクを余儀なくされ、復帰したときには5歳になっていた。リステッドやハンデ戦を中心に調整され、6歳でG1 Turnbull Sで2着となって復活を示した。その後ようやくステイヤーとして期待された路線に戻ることになったが、結果は伴わず、Melbourne Cupの15着を最後に引退となった。

Bramblesの世代はVictoria DerbyをSangsterが勝っているし、South Australian DerbyはZabeel産駒のZabeelionaire、Queensland Oaksを勝ったQuintessentialも含めてクラシックディスタンスではニュージーランド産馬の活躍が目立っていた。Queensland Derbyでは上位4頭までをニュージーランド産馬で占める結果となっている。Bramblesはこのとき連勝中で一番人気を背負い、QuintessentialとZabeelionaireをまとめて下して大変な期待を受けた。ケガから復帰してもこの路線のニュージーランド馬優位は変わらず、Bramblesも上位の顔ぶれに戻ってきたがTurnbull SとCaulfield CupではLucia Valentinaに敵わなかった。最後のレースとなったMelbourne Cupは欧州産馬とニュージーランド産馬が大半を占め、オーストラリア産馬はほとんど出走してこず、遠征馬にワンツーを食らうという有様であった。2014年、Admire Raktiが悲劇に見舞われたMelbourne Cupである。

2009年産

Soriano 2009 out of Call Me Lily by Just A Dancer

牝馬。1200mから2000mで9勝。2014/15のニュージーランド中距離チャンピオン。

2歳のデビュー戦を勝ってG1挑戦となったが勝てず、3歳のシーズンもG1 Levin Classicで3着があるとはいえ、G3を勝つのがやっとであった。NZ DerbyとNZ Oaksにも出走しているが2400mが長かったこともあってかそれぞれ10着、14着と大敗している。

古馬になって実力を上げると成績も安定して上位に顔を出すようになり、4歳シーズンのG1ではSpring Classicを4着、Zabeel Classicを3着、New Zealand Sを4着と結果を残し、G2 Awapuni Gold Cupを勝った。5歳シーズンがキャリアのハイライトで2000mのG1でZabeel ClassicとHarbie Dyke Sを勝って、1600mのG1 Thorndon Mileでは2着と夏場にピークを迎えている。この活躍が決め手となって、中距離カテゴリーのチャンピオンに選出された。6歳になると衰えを見せG2を2勝しているが、G1では苦戦した。

Costume 2009 out of Disguised by O'Reilly

牝馬。1400mから2040mで6勝。古馬になってから本格化した中距離ランナー。

3歳でデビューし1400m戦を勝ち上がるが、3歳での実績はほぼない。4歳になると条件戦を勝ち上がりプレミア開催に姿を見せるようになって本格化し、1月にはG1 Thorndon Mileで2着とすると続くG1 Harbie Dyke Sを勝った。5歳のシーズンはHastingsの春G1を3戦し、距離が足りないFoxbridge Plate、Windsor Park Plateでは勝負に参加しなかったが、2040mのLivamol Classicを勝った。その後オーストラリアに遠征してG1 Mackinnon Sに出走、帰国後はG2 Rich Hill Mileに出走したがどちらも大敗しており、5歳の実績はLivamol Classic勝ちだけであった。

Chintz 2009 out of Charmed by O'Reilly

牝馬。G2 Rich Hill Mile勝ちのマイラー。4歳がキャリアのピークで、オーストラリアに遠征した5歳シーズンは不調に陥り引退した。

2010年産

KawiとLucia Valentinaを擁するプレミアム世代。Kawiはニュージーランドの短距離路線で長く活躍し、Lucia Valentinaはオーストラリアの2000m路線で存在感を持っていた。この世代の活躍はSavabeelをリーディングサイアーに押し上げるのに十分なものであった。

Kawi 2010 out of Magic Time by Volksraad

騙馬。1200mから2000mで活躍し通算15勝。ニュージーランドのG1を7勝し、2016/17シーズンの中距離チャンピオン、2017/18シーズンのスプリントマイルチャンピオンに選出された。

デビューは3歳になってからで2戦目に勝ち上がった。Levin ClassicでG1初挑戦となるもののこの時は11着に終わっている。その後条件戦に戻って実績を上げると、4歳の後半から重賞に姿を見せるようになりG3 Taranaki Cupを勝っている。シーズンの最後にG1 Easter Hを3着として4歳シーズンを終えている。5歳になるとシーズン序盤にHastingsのG1 Challenge SでG1初勝利とし、ニュージーランド古馬G1路線を歩んでZabeel ClassicとThorndon Mileも勝ってG1を3勝した。

2016/17シーズンもHastingsで始動し、G1 Challenge SとG1 Windsor Park Plateを連勝するとオーストラリアに遠征した。当時のオーストラリア中距離にはWinxがいたため、Cox Plateなど主要レースを避けて西オーストラリアのG1を狙ったが3戦して結果を掴めないまま帰国となった。ニュージーランドに戻るとG1 WFA Classicを勝ってシーズンでG1を3勝。この年のニュージーランドでは中距離路線に強力なコンテンダーがいなかったこともあってVolkstok'n'barrellなどを抑えて中距離チャンピオンに選出されている。2017/18シーズンもシーズン前半でHastingsのG1に出走したがここで勝ち切れず、それでも夏にG1 Captain Cook Sを勝った。このシーズンはずっと勝ちきれない結果で衰えも感じさせたが、マイルから短距離で安定した結果を残し、この年G1 BCD Group Sprintの6着を最後に引退した。シーズンでCaptain Cook Sの1勝しか挙げられなかったものの、スプリント・マイルでの年度表彰を受けた。ニュージーランドの短距離路線がMelody Belleの時代となる直前のことである。

Kawiは古馬で3シーズンに渡って一線級で活躍し、G1を7勝という実績を持つ割には印象度が低い。同時期にMongolian KhanやBonnevalがオーストラリアでの活躍も含めてどちらも2シーズン続けて年度代表馬になったことに比べると、オーストリア遠征がうまくいかなかったことは大きなマイナスになっていそうである。もっとも当時のオーストラリアにはWinxが君臨しており、2400mで戦えたMongolian KhanやBonnevalと異なり、マイルから中距離が主戦場でWinxと真っ向ぶつかることは考慮されるべきであろう。またKawiの引退後に短距離路線はMelody BelleとAvantageが台頭したことでKawiの印象を薄くしてしまったかもしれない。

Lucia Valentina 2010 out of Staryn Glenn by Montjeu

牝馬。1200mから2000mで7勝。オーストラリアでG1を3勝した2000mのスペシャリスト。

3歳になってTaurangaのデビュー戦を勝ち上がり、G3 Wellington Sを勝った。続くG2 Great Northern Guineasでは落馬競走中止となり、G2 New Zealand Bloodstock Royal Sを2着としてオーストラリアに移籍となった。シドニーの秋開催では、G1 Vinery Stud Sを勝ってAustralian Oaksは3着で3歳シーズンを終えた。

4歳ではFlemingtonのG1 Turnbull Sを、5歳ではRandwickのG1 Queen Elizabeth Sを勝った。また5歳では香港のHong Kong Cupにも遠征しており、この時はレースレコードをたたき出したエイシンヒカリの前に5着という結果であった。2400mまでは十分にこなせる範囲で、G1 Caulfield Cupでも3着に入っている。

Savvy Nature 2010 out of Generous Nature by Carnegie

騙馬。オーストラリアで活躍し、G2 Mitchelton Wine Vaseなど3勝、香港に移籍して2勝を挙げるとオーストラリアに復帰して引退した。

2011年産

初年度産駒のデビュー以降、Scarlett LadyがQueensland Oaksを勝つまでやや低調だった影響からか、この世代は産駒数を大きく減らしている。そのような状況で3頭がG1に届き、Savabeelの優秀さを示している。

Shillelagh 2011 out of Trocair by Flying Spur

牝馬。1600mまでで8勝。初年度産駒の活躍馬Tullamoreの全妹で、兄が届かなかったG1タイトルを手に入れた。

3歳シーズンの終盤に北島の南部にあるWoodvilleの競馬場でデビュー勝ち。4歳になると条件戦を連勝するが、レースレベルが上がると通用しなかった。4勝目を挙げると5歳になってメルボルンに渡っている。オーストラリアでも条件戦からの出走だったが、2戦目で勝ちあがると重賞級となり、G3 Hong Kong Jockey Club Sでは2着となった。その後シドニーのChris Waller厩舎に転厩している。6歳になってG1に姿を見せるようになると、Kennedy Mileを勝った。その後7歳まで現役を続け、G1 Empire Rose S勝ちや、G1 Australian Cupで2着という実績を残している。

上位で安定するタイプではなく、何かがハマると上位に来るし、それが突き抜けてG1を2勝したというイメージ。牝馬にしては遅い7歳まで現役を引っ張っているが、7歳でもG1勝ちを重ねたので成功の部類だろう。

Savaria 2011 out of Amathea by O'Reilly

牝馬。異なる距離で通算5勝のオークス馬。

G3 Lowland SでPlatinum Witnessと同着で重賞初勝利としてNew Zealand Oaksに出走すると、今度はPlatinum Witnessを3/4馬身差に下して頂点に立った。その後Australian Oaksに遠征したが6着。古馬になってからはニュージーランド古馬戦線で戦っていたがG1レベルにはなかった。3200mのG3 Wellington Cupを勝っている。

Sound Proposition 2011 out of Ebony Babe by Ebony Grosve

牝馬。マイル戦を中心に6勝。

3歳でデビュー。2勝を挙げてNZ Derbyに出走し、上位2頭には離された3位入線だったがのちに失格となっている。4歳になって復帰するとG1 Easter Sを勝った。翌シーズンも現役を続けたが、New Zealand Sで3着になったのが目立つ程度。

Easter Sはニュージーランドのシーズン最後のG1だったが、本馬が勝った時は2着のTrojan Warriorとともに人気薄の決着であった。これが以前よりレースレートが低迷して降格危機にあったEaster Sに止めを刺す形となってしまい翌シーズンからG2に降格となっている。なお、Sound Propositionは翌シーズンにTauranga SとZabeel Classicで最下位、Trojan WarriorもTechnology Sを最下位でHarbie Dyke Sがブービーと降格に説得力を持たせる結果となってしまっている。

Saavoya 2011 out of Royal Prize by Prized

牝馬。1600mと2000mでG2を勝った4勝馬

2012年産

これまでの活躍を受けて産駒数が大きく増えた世代となったが、結果は伴わずG1馬はPasadena Girlのみとなった。重賞級まで見てもColdplay、Splurge、Clarify、Spirit Birdなど7頭にとどまる。一方でNew Zealand Derby2着馬のWhat's The StoryはSavabeel産駒として初の後継種牡馬入りを果たしている。

Pasadena Girl 2012 out of Nina From Pasadena by Redoute's Choice

牝馬。オーストラリアで2歳G1を勝つなど3勝。

Flemingtonでデビューから連勝し、G3 Thoroughbred Breeders Sを勝った。シドニーに向かいRandwickのG1 Sires' Produceは4着だったが、続くG1 Champagne Sを勝った。3歳は春にメルボルン牝馬路線でG1 Thousand GuineasとG1 Victoria Oaksで4着となった。その後はさっぱりで、アデレードのG1 Australasian Oaksの10着を最後に引退した。

Coldplay 2012 out of Forty Two Below by O'Reilly

牝馬ニュージーランドで重賞を4勝、G2 Cal Isuzu SとG2 Rich Hill Mileを勝っている。

Splurge 2012 out of Splashing Out by O'Reilly

騙馬。重賞2勝、G2 Manawatu Challenge Sの勝ち馬。

Clarify 2012 out of Clareta by Pauillac

騙馬。G3 Manawatu Cupの勝ち馬。

What's The Story 2012 out of Tall Story by Carnegie

牡馬。Savabeelにとって初めての後継種牡馬となったNZ Derby2着馬。

3歳でデビューして勝ち上がるが上位戦では苦戦していた。2勝目を挙げてNZ Derbyに挑戦すると短頭差の2着と奮闘した。そこからAustralian Derbyに遠征したが6着に終わる。古馬になってからは順調さを欠き、4歳の初戦で5着になると跛行が見られ1年半近いブランクを経て復帰するもそこで最下位に終わり以降はレースに出走することがなかった。

条件戦までの2勝にとどまったが、デビュー戦の1200mでの勝ちっぷりが良く、またNZ Derbyの2着が評価されたか、オーナーにも加わっていたニュージーランドのNorwegian Farmに種牡馬として迎え入れられた。母Tall Storyの半姉がG1を3勝したTall Poppy、祖母Fun On The RunもG1馬という血統背景で去勢されなかったことが種牡馬への道を開いたと言える。Norwegian Farmにとっては唯一の繫養種牡馬で、”The first Group One performed son of Champion sire SAVABEEL to go to stud in New Zealand"と謳っている。

種牡馬としての環境は恵まれたとは言い難く、初年度と二年目の産駒は数頭が勝ち上がるものの2勝馬は香港でデビューから連勝したSuper Joy N Funのみであり、彼にしても2勝目以降はやや苦しんでいる。

2013年産

この世代は重賞馬が11頭出ており、増えた産駒数に見合った結果を残した世代といえる。

Hall Of Fame 2013 out of Around The Clock by Galileo

騙馬。1800mまでで11勝。香港に移籍し、Dances With Dragonと改名したニュージーランドG1馬。

2歳で勝ち上がり。3歳になるとRiccartonのGuineas TrialとListedを連勝してNew Zealand 2000 Guineasに出走し2番人気に支持されたが10着に終わった。Ellerslieのプレミア開催で勝って、G1 Levin Classicに出走すると2000 Guineasで2着のSavile Rowをハナ差で下して勝利。その後はWaikato Guineasで5着、Cambridge Breeders Sも5着といまいちで、オーストラリアのDoombenに遠征して出走したListedも5着で3歳を終えた。

4歳になると香港に移籍した。香港での登録名はDances With Dragonで漢字表記は興龍共舞であった。香港では7歳のシーズンまで現役を続け33戦6勝のキャリアであった。その大部分はClass 2やClass 3のレースに出走しているが、6歳のシーズンでは4勝を挙げ、重賞レベルにたどり着いた。シーズンの最後にG3 Premier Plateを勝っている。7歳のシーズンは重賞路線で出走し、年末のHong Kong Cupを最後に引退した。

Nicoletta 2013 out of Celtic Crown by Doneraile Court

牝馬。5勝を挙げた遅咲きのマイラー

3歳でデビュー、G3 Desert Gold Sを勝って、G2 Sir Tristram Fillies Classicを2着に入り、New Zealand Oaksは4着だった。4歳になると2000mのG1を狙うが、Harbie Dyke Sで3着、New Zealand Sは6着で、マイル戦ではThoroughbred Breeders Sで3着。G1ではまだ少し力不足だった。

5歳のシーズンはG3 Taranaki Breeders Sを勝って、G2 Tauranga Sを2着と好調なスタートであったが、その後は不調に陥っていた。シーズン終わりのG1 New Zealand Thoroughbred Breeders Sに出走したときは全く圏外とみなされていたが、単騎逃げの形から追走馬が先に失速する展開の利がありゴール前で一気に詰め寄られるものの凌ぎ切って大穴を演出した。

Rattan 2013 out of Grand Princess by Last Tycoon

騙馬。香港の活躍馬。通算42戦7勝の成績を残し、G2 Sprint Cupを勝ってG1 Chairman's Sprint Prizeで2着に入った5歳時点がピーク。Hong Kong SprintでDanon Smashの3着という成績も持っている。

Yearn 2013 out of Princess Uno by Danehill

牝馬。G2 Auckland Thoroughbred Breeders S勝ち。

2014年産

引き続き好調な産駒成績で、この世代からは4頭のG1馬が出ている。

Savvy Coup 2014 out of Eudora by Pins

牝馬。1600mから2400mで6勝。NZ Oaksを勝って3歳チャンピオンとなった。

勝ち上がりは3歳の11月と遅れたが、G3 Eulogy Sを勝つとG1 Levin Classicは3着に入って実力を示している。Karaka Millionで3着の後、Hastingsに行ってG3 Lowland S勝ちからG1 NZ Oaksに出走するとこれも勝った。その後、Australian Oaksに向かったがここは5着だった。

4歳シーズンは序盤のHastingで開催されるHawk's Bay三冠に出走。距離が延びるにつれて好結果となり、1400mのG1 Tarzino Trophyを5着、1600mのG1 Windsor Park Plateを2着、2000mのG1 Livamol Classicを勝つという結果であった。このLivamol Classicを最後に引退している。

Concert Hall 2014 out of Classic Legacy by Carnegie

牝馬。1400mから2400mで11勝。6歳シーズンにピークを迎え、1600m戦を得意としたが3200mにも対応した。

デビューまでに時間がかかり、3歳の秋になってデビューしている。デビュー戦で勝ち上がったが、その後も条件戦をメインとして走っており、4歳の秋にG3勝ちしてからは重賞レベルにステージを上げたもののG1は遠いという内容だった。6歳になるとG3 Tompson H、G2 Tauranga Sと1600m戦で連勝し、G1 Captain Cook Sでは2着とマイル路線の有力馬にのし上がると、2000mのG1 Zabeel ClassicでG1馬に上り詰めた。シーズンの後半は調子を落とし、オーストラリアにも遠征したが結果は伴わなかった。7歳になるとG2 Cal Isuzu S、G3 City of Auckland Cupを勝つが、G1では通用しなくなっている。City of Auckland Cupで2400mへの手応えを得たのかG2 Avoldale Cupにも出走して2着、最後は3200mのG2 Auckland Cupを2着で引退となった。

Hasahalo 2014 out of Halloween by Encosta De Lago

牝馬。2勝馬だが、重賞を2勝というNew Zealand 1000 Guineas馬。

2歳でデビューすると、2戦目のG2 Wakefield Challenge Sで2着、続くG3 Eclipse Sが初勝利となった。Karaka Millionでは2着まで順調なキャリアだったが、G1になるとSistema Sが5着、Manawatu Sires' Produceが13着とさっぱりだった。3歳になっても低調でG1 New Zealand 1000 Guineasに出走したときは2歳で終わった馬とみなされ人気薄だったが最終コーナーで大外に持ち出して直線抜けて4馬身差で勝利。ただこれは復活ではなく、その後また勝てなくなり4歳まで現役を続けて引退した。

NZ 1000 GuineasはRiccartonの荒れた馬場で外に出したことが功を奏したとはいえ鮮やかで、その再現が期待される条件は何度かあったものの二度目はなかった。

なお、Wakefield Challengeの3着からKaraka MillionでHasahaloを逆転して勝利したのがMelody Belleで、Sires' Produceはその輝かしいキャリアで14を重ねるG1勝利のスタートとなっている。

Embellish 2014 out of Bling by O'Reilly

牡馬。非去勢馬として初のG1馬は祖父がいたCambridge Studで種牡馬となった。

2歳の終盤にデビューして1戦をこなしたが、3歳になってから勝ち上がり3連勝でG1 New Zealand 2000 Guineasまで駆け抜けた。Karaka Millionで2着の後にオートストラリアに遠征しAustralian Guineasに出走したが8着で3歳は終わった。4歳では2戦するも勝ちはなく引退した。

Savabeelの後継としてはNZ Derbyで2着のWhat's The Storyが先に種牡馬入りしていたが、G1を勝って大手のスタッドに入るのはEmbellishが初めてであった。全姉にG1 NZ Thoroughbred Breeders Sを勝ったDiademe、従兄がスプリントチャンピオンのSacred Starである。

初年度産駒は3歳のシーズンで、5勝を挙げListedのLaunceston GuineasとTasmania Derby、G3のFood Services Chairman's Sを勝ったBold Soulが勝ち頭。またニュージーランドではListed以上で勝ち馬は出ていないがNZ 2000 Guineasで2着のTaliskerが出ている。

牡馬によくEmbellishなんて名を与えたなと思わなくもない。

Supera 2014 out of Sopra Tutto by Van Nistelrooy

牝馬。G2 Tauranga SとG2 Travis Sの勝ち馬で、G1でもZabeel Classic、Tarzino Trophy、New Zealand Thoroughbred Breeders' Sで2着に入っている。祖母はMelbourne Cup勝ちのステイヤーEtherealニュージーランドの名牝系出身。

2015年産

前年に続いて4頭のG1馬を出しており、充実した世代。

Prise De Fer 2015 out of Foiled by Snippets

騙馬。1400mから2000mで11勝。長期間にわたり活躍したマイラー

3歳になってデビュー。3歳のシーズンは特に注目するレースはなく、NZ Derbyにも出走したが8着に終わっている。4歳になると条件戦から5連勝で、G2 Rich Hill Mile、G3 Taranaki Cupを勝った。その勢いでG1 WFA Classicに挑戦するが、Avantageの前に2着だった。この後のニュージーランドはAvantageとMelody Belleの二強時代となり、Prise De Ferはその脇役の一頭に甘んじた。二強が引退してからも勝ちきれないレースが多かったが、7歳にしてCaptain Cook SでG1勝利を遂げた。8歳となった2023/24シーズンも現役を続けたが、G3で2着に来るのがやっとであった。現役終盤はマイルから距離を延ばしていき2400mのWaikato Cupで2着という結果も残しているが、層が薄く勝ちやすいレースを狙ったという印象が強い。3200mのAuckland Cupで10着になったのを最後に引退した。

The Chosen One 2015 out of The Glitzy One by Flying Spur

牡馬。1400mから2400mで7勝を挙げ、オーストラリアのカップ戦実績が評価されてニュージーランドチャンピオンステイヤーに選ばれた。

3歳シーズンにデビューして5勝し、その中にはG3 Manawatu Classicが含まれている。一方NZ 2000 Guineasは11着、NZ Derbyは11着と通用していなかった。シーズン終盤にオーストラリアに遠征し、Australian Derbyでは4着に入り、その後G3 Packer Plateを勝って帰国した。

4歳のシーズンはオーストラリア遠征でスタートし、長距離路線に参戦するとG3 Herbert Power Sを勝っている。Melbourne Cupを17着として春開催が終わるとニュージーランドに戻り、G1 WFA Classicを3着して再度オーストラリアに向かった。シドニーの秋開催でも長距離路線でSydney Cupで2着に入っている。この戦歴が評価されて、ニュージーランドステイヤー部門で年度表彰を受けた。

以降のシーズンも、春はMelbourne Cup、秋はSydney Cupを最大目標とした遠征を繰り返した。5歳ではCaulfield Cup 3着からMelbourne Cupで4着で再びステイヤー部門の年度表彰を受けている。ニュージーランドでは遠征の合間となる夏場の開催で出走していて、いずれもG1で大崩れせず、5歳ではHarbie Dyke Sで2着、6歳ではThorndon Mileを勝ってHarbie Dyke SとNew Zealand Sを3着と結果を残した。

引退後はThe Oaks Studにて種牡馬入りした。

ニュージーランドでは古馬に2400mのG1がなく、3200mのカップ戦もNew Zealand CupとWellington CupがG1から降格した後も長くG1格を維持していたAuckland Cupが2021年を最後にG2に降格した。ニュージーランド競馬の規模は、シドニーを中心とするニューサウスウェールズ州はおろかメルボルンのヴィクトリア州にも及ばない程度に過ぎず、現状でこれでは長距離戦の体系を維持できないのだろう。The Chosen Oneは2019年から2022年に渡って活躍し、2019/20シーズンから2021/22シーズンまで3シーズン連続でチャンピオンステイヤーに選出されたが、ニュージーランド国内においては3歳の頃にNZ DerbyやAvondale Guineasに出走したことを除けば2000m以下のレースばかりに出走し、ステイヤーという程の実績は有していない。シドニーへの遠征との兼ね合いもありAuckland Cupに出走することはなく、G1タイトルも1600mのThorndon Mileにて獲得したものである。一方で毎シーズンオーストラリアに遠征し、最大目標はMelbourne CupとSydney Cupであった。その遠征において勝ったのはHerbert Power Sのみであるが、2400mや3200m戦で上位に入る実績を残し、これがチャンピオンステイヤーの根拠となった。馬産において一般的にニュージーランドはオーストラリアよりもスタミナを重視するが、レースではオーストラリアの方がステイヤーに活躍の余地を残すことを近年で象徴するような一頭であった。

Savy Yong Blonk 2015 out of Ampin by Pins

牝馬。1400mから2400mで8勝。2400m戦に強さを見せたステイヤー

3歳までは目立った成績はなく、New Zealand Oaksにも出走しているが5着に終わっている。古馬になると2000m以上のレースで強さを見せるようになり、G3 City of Auckland Cupで2着に入った。5歳ではG3 Waikato Cupを2着から、City of Auckland Cupを勝って2400mに強いところを見せている。G1勝ちは6歳になって出走したG1 Livamol Classicで、直線ではHarlechとPrise De Ferを加えた3頭の勝負になり鞍上のDanielle Johnsonは連続して鞭を振るったことについて罰金を科されるものの短頸差の勝利をもたらした。これがSavy Yong Blonkの最後のレースとなっている。

Sword Of Osman 2015 out of Bunyah by Distant View

騙馬。2歳で3勝を挙げた早熟のフロントランナー。

2歳の12月にプレミア開催の別定戦でデビュー、1100mのレースで3馬身差をつけて注目された。続いて出走したKaraka Millionは8着に敗れたが、G3 Matamata Slipperを5馬身差で圧勝し、G1 Sistema Sも快勝する強さを見せた。ところが2歳のチャンピオン決定戦であるManawatu Sires' Produceは7着で、2歳戦は5戦3勝で終えた。シーズンの2歳フリーハンデではトップに評価されたが、負けた2戦を勝ったのはいずれもAvantageで、Sword Of OsmanはSistema SでAvantageのデビューからの連勝を止めたものの、直接対決が1勝2敗で負け方の悪さから2歳チャンピオンの栄誉はAvantageのものとなった。

3歳になるとギニー路線でG2 James and Annie Sarten Memorialを勝つが、NZ 2000 Guineasは7着に終わった。以後はスプリント路線を目指し、別定戦を勝ってG3 Mongolian Khan Sで2着同着でシーズンを終える。4歳になると年が明けてから1200mのハンデ戦に出走したが、それを最後に引退した。

2歳でAvantageに土を付けているのは素晴らしいが、負けたレースはAvantage関係なしに惨敗している。スタートから先頭に立って逃げ切るレースしかできないが、2歳のKaraka Millionではゲート内で大きく立ち上がってしまいハナを取れないまま中段に沈み、Manawatu Sires' Produceは内からひたすら圧力を受けた結果直線で沈む結果になっている。3歳でもNorthland Breeders Sではゲート難が出てゲート入りをやり直しているし、Hawke’s Bay Guineasでもゲートで暴れる素振りを見せていた。また、Mongolian Khan Sでは逃げ切ることができなくなっており、衰えも早かったという印象である。

Queen Of Diamonds 2015 out of Love Diamonds by Danehill

牝馬。G2 Lowland S勝ち。祖母はTristaloveでEight Carat直系の超良血馬。

2016年産

G1馬はProbabeelのみとなったが、オーストラリアや香港での活躍馬も出ており、世代の獲得賞金としてはトップである。

Probabeel 2016 out of Far Fetched by Pins

牝馬。1200mから2000mまでを舞台にオーストラリアでも活躍して13勝を挙げた2020/21のニュージーランド年度代表馬

2歳の年明け前にデビューし、初戦こそ2着だったものの、3連勝でKaraka Millionを圧勝するとオーストラリアに遠征しRandwickのSires' Produceに出走したが5着で2歳のキャリアを終えた。3歳になると再びオーストラリアに渡っており、G1 Flight Sで2着となった。一旦帰国してKaraka Million Classicを勝つとオーストラリアでG1 Surround Sを勝ってG1初勝利となった。以後、調整等でニュージーランドに戻ることはあってもレースの出走はオーストラリアのみである。3歳の後半はG1 Vinery Stud Sを2着としたが、Australian Oaksでは8着に敗れた。

4歳ではEpsom HとFuturity SとG1を2勝しているが、Cox Plateなどでは大きく負けている。5歳になってもCaulfield S勝ちからCox Plateに参戦しているが、どうにもCox Plateでは分が悪かった。

ニュージーランド牝系にSavabeelを使っておきながらスピードを武器にした牝馬で、2400mのAustralian Oaksではさっぱりだったのが印象的。

Zayydani 2016 out of Ruqqaya by Van Nistelrooy

牝馬。G3 Matriarch S勝ち。オーストラリアで6勝を挙げた。

Acting 2016 out of Hollywood by Pins

牝馬。G2 Tranquill Star S勝ち。オーストラリアで勝ち上がりから三連勝で重賞勝ちを決めたがそれまでだった。

Aotea Lad 2016 out of Corsage by Volksraad

騙馬。G2 Wakefield Challenge S勝ち。

Savvy Command 2016 out of Best Command by Court Command

騙馬。シンガポールに輸出され、Singapore Derbyで3着。45戦して5勝を挙げている。

Adelaide Ace 2016 out of Ampin by Pins

牡馬。オーストラリアで5勝。G2 Caulfield Autumn Classicの勝ち馬。

Zebrowski 2016 out of Polish Princess by Polish Precedent

騙馬。G1 Australian DerbyやG2 Herbert Power Sで2着の実績があり、香港に移籍後は中距離の重賞を2勝した。

2017年産

リーディングサイアーを獲得後に種付けが行われた世代で質・量ともに充実している。

Atishu 2017 out of Posy by No Excuse Needed

牝馬。1400mから2000mで10勝。3歳でデビューし41戦をこなすFlemingtonが得意なタフネス。

3歳シーズンが始まってすぐにデビューするが、勝ち上がりには5戦を要した。勝ち上がり後は南島に遠征してRiccartonでListedの2戦を含めて3連勝し、3歳のキャリアを終えるとともにオーストラリアに移籍した。

オーストラリアではシドニーのChris Waller厩舎に所属し、当初はG1では歯が立たずせいぜいG3で勝てるかどうかというレベルだったが、徐々に自身のステージを挙げていき、2022/23シーズンではFlemingtonのG2 Matriarch Sを勝って牝馬路線に名を上げるとこのシーズンの終盤にRoyal Randwick開催のG1 Queen Of The Turf SでついにG1タイトルを手に入れた。続く2023/24シーズンも引き続き好調で春のFlemingtonでは牡馬相手にG1 Champions Sを快勝して見せた。秋のG1では勝つことができなかったものの、Australian Cupは3着、Queen Of The Turf Sは2着と上位で結果を残している。

Mo'Unga 2017 out of Chandelier by O'Reilly

牡馬。1400mから2000mにかけて5勝。牡馬産駒としては初めてG1を2勝、引退してオーストラリアで種牡馬入りする。

オーストラリアで3歳になってからデビューし3連勝するとG1 Caulfield Guineasに挑んだが7着で跳ね返された。秋になると充実し、G1 Randwick Guineasの2着から2000mのG1 Rosehill Guineasを勝った。その後の古馬混合戦ではG1 Doncaster Mileが10着、G1 Queen Elizabeth Sは最下位の7着と芳しくなかった。

4歳になると初戦のG1 Winx SではVerry Elleegantを下して2勝目のG1。続くG1 Makybe Diva Sは2着と好調なスタートだったが、以降はやや調子を落とし、G1 Futurity S2着程度があるにとどまった。5歳のシーズンもWinx Sからの始動だったが10着に大敗し、その後はI'm ThunderstruckやAnamoeといった当時の強力な中距離路線の中、G1 Champions SやG1 Queen Elizabeth Sで2着に入り路線の上位で存在感を示した。6歳となった2023/24シーズンも現役に残ったが、完全に衰えており春の3戦で早々に引退を決めてしまった。

ピークは5歳だったが、ちょうどAnamoeが君臨したシーズンで更にシドニーの秋開催にDubai Honourが遠征してきたという事情もあってG1勝ちを積み上げることはできなかった。

同期のCool Aza Beelに一年遅れて同じくオーストラリアのNewhaven Parkに種牡馬として迎えられた。

Amarelinha 2017 out of Hopscotch by O'Reilly

牝馬。通算5勝のNZ Oaks馬。Te Akau RacingとJamie Richards厩舎の全盛期の終わりを象徴する牝馬

2歳からCatchweightに姿を見せていたが、レースのデビューは3歳。2戦目で勝ち上がり、続くG2 Eight Carat Classicも勝利した。Karaka Millionを2着から、G2 Fillies Classic、G3 Sunline Vaseをともに勝つとG1 New Zealand Oaksも勝利。着差は1馬身だったが、コーナーで楽に捲ったレース内容は相当のレベルで今後に大きな期待が持たれた。Australian Oaksに遠征して4着で3歳を終え、4歳のシーズンもオーストラリアに向かった。しかし、これ以降は全く勝てなくなり、ニュージーランドに戻ってG1 WFA Classicの2着はあったものの、最後はオープンのハンデキャップ戦に出走しても通用しなくなる。

New Zealand Oaksまでは7戦して5勝、2着が2回とずば抜けた成績を残した。終始余裕の手応えで大外から捲ってくる派手なレースぶりも相まって期待の高い馬であった。New Zealand Oaksが最後の勝利になるなど当時では思いもせず、オーストラリアでも通用するのは間違いないと考えられていた。オーストラリア遠征が全くの失敗に終わったあと、ニュージーランドに戻ってくるとかつての余裕のある走りは陰もなく力んだ走りになり、こんなにも変わり果ててしまうのかと感じたほどである。その頃には気性の問題が相当あったのかもしれない。

2021/22シーズンを最後に調教師のJamie Richardsが香港に拠点を移し、2022/23シーズンからはニュージーランドの厩舎を引き継いだMark Walker調教師の管理に替わっているが、立て直しは効かなかった。あれほど強かったAmarelinhaが単なるオープン競走のハンデキャップ戦で見せ場もなく二桁着順に終わるのは衝撃的ですらあった。2022年9月のマイル戦Winners Circle Mileで11着のあとに跛行が見られ、内視鏡手術による措置を受けたものの追加の異常が確認されたことで引退が決まった。

Cool Aza Beel 2017 out of Cool 'N' Sassy by Testa Rossa

牡馬。2歳で6戦4勝して引退した2歳チャンピオン。

デビュー戦で勝ち上がり、2戦目のListed Fasttrack Sは直線で完全に行き場をなくして4着に終わった。次走にKaraka Millionを目標としていたところ中間で熱発して調整が遅れるものの、Taurangaの1200m戦からの連闘でKaraka Millionを勝った。MatamataのG3 Waikato Stud Slipperは渋った馬場が合わずに2着だったが、G1 Sistema Sは先行抜け出して快勝した。この成績で年度表彰の2歳馬部門を受賞している。

ケガで3歳以降は出走しないまま引退して、シドニーから西の内陸部の名門Newhaven Parkにて2021年から種牡馬入りとなった。Danzigが母父のTesta Rossa経由のみで遠く、DanehillGreen Desertも持ち合わせていないことから配合の範囲が広く、母系は近年でもAlohaやその娘Libertiniが出て優秀であることから期待されている。2歳でスプリント能力を見せたキャリアもオーストラリアにおいて好まれるタイプと言える。

Brando 2017 out of Saoirse by Iffraaj

騙馬。G2 Awapuni Gold CupとG2 Japan Trophy勝ちで、G1 Levin Classicで2着。

2018年産

I Wish I Win 2018 out of Make A Wish by Pins

騙馬。1500mまでで活躍し7勝。現在のオーストラリア短距離路線を代表する一頭。

デビューはニュージーランド、Awapuniの2歳未勝利戦で勝利した。続けてG1 Manawatu Sires’ Produceに出走して2着となって2歳のシーズンを終えた。3歳はG3 Northland Breeders’ Sの2着から始動し、ListedのEl Rocaを2着、G3 Barnswood Farm Sを3着と勝ちきれなかった。G1 New Zealand 2000 Guineasは8着と大敗した。年明けのプレミア開催の1200m戦で2勝目となるが、Listed2着から参戦したG1 Levin Classicでは3着に終わった。しかしこのLevin Classicは勝ち馬がオーストラリアで短距離チャンピオンとなるImperatriz、2着馬がOn The Bubblesと強力で、どちらも同厩舎でLevin Classicまでに直接対決し負けていた相手であった。

4歳になるとオーストラリアに移籍し、高額賞金戦のGolden Eagleを勝って名を上げた。その後はスプリントのG1で健闘し、TJ Smith SではThe Everestを勝ったGiga Kickを下している。5歳となった今シーズンもスプリント路線で安定した成績を残し、シーズンの最後にG1 Smith Cupを勝った。

結構な短距離特化型で、1600mではNZ 2000 Guineasを大敗しているし、Levin Classicは3着に入っているがImperatrizが勝つようなスプリンターのレースである。オーストラリアに移籍後も1600mのG1 Toorak Hでは5着であった。3着内に入れなかったのはこれまでのキャリアで2度だけだがどちらもマイルのG1である。

Noverre 2018 out of Magic Dancer by Rip Van Winkle

牡馬。父の後継を期待されて種牡馬入りしたNew Zealand 2000 Guineas馬。

2歳で勝ち上がり。3歳のシーズンはG3 War Decree Sを勝ってNew Zealand 2000 Guineasも勝ったが、これを最後に引退している。引退後の2022年からWaikato Studで種牡馬入りとなった。

血統面ではDanehillを持たず、Green DesertもDesert SunからでInvincible Spiritは入らず有利である。一方で母父にRip Van Winkleを持ち、後背にSir Ivorが多めかつSadler's Wellsはクロスで使っていこうという感じか。

The Perfect Pink 2018 out of The Solitaire by O'Reilly

牝馬New Zealand 1000 Guineas馬。

3歳で勝ち上がり、New Zealand 1000 Guineasを勝った。その後、G2 Waikato Guineasで2着に入るが、G2 Avondale Guineasは6着、New Zealand Oaksは4着に終わった。4歳になると全く通用しなくなり、引退した。

Forgot You 2018 out of Simply You by O'Reilly

牡馬。オーストラリアで4勝。G2 Stutt Sを勝って、G1 Rosehill Guienasを2着。

2019年産

Skew Wiff 2019 out of Starvoia by Starcraft

牝馬。短距離で活躍して現在4勝。

3歳で勝ち上がるとG2 Eight Carat Classicで2着、ギニーやオークスには出走しなかったがG1 Levin Classicで2着、古馬混合のG1 NZ Thoroughbred Breeders Sでも2着に入った。

4歳になるとHastingsのG2 Foxbridge Plateで2着になり、G1 Tarzino Trophyを勝つとオーストラリアに遠征しG3 Hong Kong Jockey Club Sを勝ったが、G1では苦戦している。

Major Beel 2019 out of Gram by O'Reilly

騙馬。オーストラリアで4勝を挙げているダービー馬。

シドニーのWaterhouse厩舎からデビュー。2歳シーズンの締めくくりで勝ち上がった。シーズンが変わっても引き続いてレースに使われれるが勝ち切れず、2勝目は夏場の休養を挟んでからのレースであった。2勝し、G2 Tulloch Sで2着となるとAustralian Derbyに出走した。Australian Derbyでは有力とは思われていなかったが、NZ Derby馬のSharp ’N' Smart等を下して勝利した。4歳のシーズンは不振で、長距離に活路を見出そうとしているが結果は付いてこない。

2020年産

Orchestral 2020 out of Symphonic by O'Reilly

牝馬。1200mから2400mで6勝。待望の本国ダービー勝ちは牝馬によって達成された。

2歳のデビュー戦はAvondaleの別定戦で日本人騎手のMasa Hashizumeが騎乗して2着だった。続く未勝利戦を勝ち上がっている。3歳では1200m戦で復帰するとG3 Bonecrusher Sを2着とし、1600mの別定戦で2勝目を挙げた。Karaka Millionも勝つと、G2 Avondale GuineasからG1 NZ Derbyと転戦していずれも後続を突き放して圧勝した。NZ Derbyの後はオーストラリアに遠征し、G1 Vinery Stud Sを勝って、G1 Australian Oaksは3着としてシーズンを終えている。

中距離だとニュージーランド国内の同世代は相手にしないレベルで、Australian Oaksは勝ったAutumn Angelと1馬身差で3着だったが、取りこぼしたという印象のレースであった。

Ascend The Throne 2020 out of Thee Achiever by O'Reilly

騙馬。G2 Waikato Guineasを勝って、New Zealand Derbyは3着。今後中距離路線を支えることが期待される。

Interlinked 2020 out of Daisy Chain by Pins

騙馬。オーストラリアで2勝しニュージーランドに遠征してきて、G2 Avondale Guineas3着からG1 NZ Derby5着。

King George VI And Queen Elizabeth S: G1 Ascot Turf 11F211yd

今年は3歳のクラシック路線上位勢が回避してしまったので古馬の争い。そんな中で去年のこのレースを最下位に吹っ飛んだAuguste Rodinが今年も一番人気を被る状況なのはそれでいいのかと思わなくもない。今年の実績にしたところでDubai Sheema Classicで最下位になっているし、その時に勝ったRebel's Romanceが出走してきているにも関わらずである。ある意味この人気が凄い。

O'Brien厩舎からはLuxembourgとContinuous、Point Londsdaleがエントリーを残し、Hans Andersenはペースセッターを務めるかといったところで、いつも通りO'Brien厩舎勢の動向によってレースの状況が大きく変わってきそうなのだが、ギリギリまで確定しないのが困る。

今年もあちこち飛び回っているRebel's Romanceはドバイから香港とG1を積み上げている。Emily Upjohnは回避したが、前走のPretty Polly SでEmily Upjohnを下したBluestockingが出走してくる。またDubai Honourは前走で2400mのG1を勝ったが、Saint-Cloudなのでここをこなせるかと言われると怪しい。

3歳馬から唯一の出走となるのはDavid Menuisier厩舎所属ながらフランスでキャリアを積んできたSunway。Prix Du Jockey Clubの7着馬で、前走のIrish Derbyは2着でクラシックディスタンスへの対応を証明した。他のクラシック路線の上位馬はEpsom DerbyのCity Of Troyとその2着馬Ambiente Friendlyがここを回避して来月のInternational Sへの出走が有力視される状況である。Irish Derbyで3着になったAmbiente Friendlyのレース内容からこの2頭はややスピードよりと考えられているようだ。Epsom Derbyの3着馬でIrish Derbyを勝ったLos Angelesはスタミナがあり長距離向きとしてSt. Legerの本命馬とみなされている。O'Brien厩舎ということもあって、ここは早い段階でエントリーを下げた。

Auguste Rodin: Deep Impact - Rhododendron by Galileo

O'Brien厩舎の大将格にして現役屈指のネタ馬になりつつある。

今年はドバイに行ってSheema Classicで最下位、欧州に戻ってきてもTattersalls Gold CupではWhite Birchに負けて2着と良くない結果だったが、前走のPrince Of Wales's Sでようやくの勝利。古馬になってもトップを名乗る資格があることを示して見せた。キングジョージは去年最下位の10着に終わった舞台であり、もう一度走るというのなら12Fのタフなレースをしっかりこなせるところを見せなければならないといったところか。英愛のDerbyに加えてBC Turfまで勝っている馬に対して何を言っているのかという気がしなくもないが、レース結果に一貫性がなく負けるときは完全に別馬のパフォーマンスになってしまうので、基本的には強い方が来るとはいえ今回はどっちで来るのかということが注目されてしまっている。一応陣営からは対処法が分かったようなコメントはあるが本当だろうか。

このレースの結果はともかくとして、目下の注目はCity Of Troyとの直接対決があるのかどうか。どちらかはBC Classicに行くだろうから、可能性があるのはIrish Champion Sになるのだが、City Of TroyがInternational Sならその線も薄くなるか。まあBC開催なら、Auguste RodinをTurf、City Of TroyをClassicにしてLuxembourgを便利屋的な立場に置くのが妥当なラインに思え、あとはLos Angelesがこのレベルに来たらいよいよ面白そうではある。

Rebel's Romance: Dubawi - Minidress by Street Cry

ゴドルフィンの2400mエース。

2022年にドイツでGrosser Preis Von BerlinとPreis Von Europaを連勝してBC Turfまで勝ったのだから弱いわけではないが、去年が一転して不振でJoe Hirsch Turf ClassicではWar Like Goddessの4着に敗れてBC Turfに出走すらできなかった。

その後Kemptonのオールウェザーを一叩きすると、今年になってからはカタールのAmir Trophy、ドバイのSheema Classic、香港のChampions And Chater Cupと三連勝。とにかく2400m戦での強さは見せたが、相手がトップレベルだったのはSheema Classicくらいで、キングジョージを勝っておきたいところ。こっちはこっちでイギリスの芝を走るのはだいたい2年振りとなるし、欧州の芝G1としてもドイツの2戦以来となるので、人気にしづらいところはある。

母Minidressは今年G1を2勝しているMeasured Timeも出しており、一躍名繁殖という風。近親にはヴィクトワールピサアサクサデンエン兄弟やローブティサージュが出ている。祖母Short Skirtの半姉がWhitewater AffairやRich Affairである。

Bluestocking: Camelot - Emulous by Dansili

Judmmonteの4歳牝馬

去年は少し出てくるのが遅く、AscotのRibblesdale Sを3着からアイルランドに向かいIrish Oaksを2着。Yorkshire Oaksで4着がありつつ、シーズンの終わりにBritish Champions Fillies And Maresを2着という結果で勝ちきれないところもあった。今年はYorkのMiddleton Fillies Sを勝つと前走のPretty Polly SではEmily Upjohnを下してG1勝ちとなった。出走馬中で一番まともなキャリアを歩んでいるように思うが、牡馬のトップどころと12Fで勝負というのはまだ荷が重いかもしれない。

Juddmonte Farmのオーナーブリードで母AmulousもG1勝ち、近親にはMandalounを持つ。CamelotDanzig全般に相性が良さそうだが、Danehillが来ると別格でさらにMr. Prospectorクロスでもう一役追加といったイメージである。

Luxembourg: Camelot - Attire by Danehill Dancer

O'Brien厩舎を代表する5歳馬。

2歳から毎年G1を勝って4勝しているが、去年の後半はAuguste Rodinだったり香港に行ってみたらRomantic Warriorだったりとさらに上の才能にねじ伏せられた印象はあった。Irish Champion Sを勝つなど10Fがメインかと思っていたが、今年はCoronation Cupで12Fのタイトルを手にしている。

強いのは強いが、Mostahdafに完敗したり中東遠征が完全に裏目に出るなどいまいち突き抜けた印象がない。ここもAuguste Rodinのバックアップとも見えるような立ち位置で、スクラッチするんではなかろうか。したとして代わりに出るレースはありそうでないのだけど。

母系はWildensteinの名系で、Sangster家による生産馬。

Continuous: Heart's Cry - Fluff by Galileo

去年St. Leger Sを勝ったが、そこから凱旋門賞に出走して5着。ステイヤーというより12Fのクラシックランナーっぽさはある。今年はAscotのHardwicke Sに出走して5着。もう少しはやれそうだが、強力なメンバー相手では見劣りがする。

勝てるかどうかより、どこまで通用するかを測るために出てくるのはありと思える。

母FluffはMaybeの全妹で、本馬自身の従兄にSaxon Warrior。

Dubai Honour: Pride Of Dubai - Mondelice by Montjeu

欧州のG1では足りないところがあり去年はシドニーの秋開催に遠征し、2000mのRanvet SとQueen Elizabeth Sを連勝したが、香港ではRomantic Warriorらに跳ね返され3着で、その後のシーズンでもEclipse SとChampions Sに出走してやはり及ばないという結果だった。今年はKemptonで一叩きして香港に遠征するも7着と悪化している。ところが欧州に戻ってくるとフランスでGrand Prix De Chantillyを3着からGrand Prix De Saint-Cloudを勝った。同レースで下したのがIresine、Feed The Flame、Point Londsdaleといったあたりでそこまで自信を持てるとは思えないが、とにかく2400mもこなしたということではあろう。

オーストラリアで短距離を得意とする産駒が多いPride Of Dubaiだが、Sadler's Wellsの影響が強いと距離をこなしてくる。Dubai Honourは母父がスタミナ寄りのMontjeuで、Montjeuが入ったときにスピードを補うミスプロを祖母の父Kingmamboから、三代母のDamsonは早熟のスピード馬でSadler's Wells×Darshaanという基本構成が見えることを考えるとかなりの良血統。

Sunway: Galiway - Kensea by Kendargent

出走予定で唯一の3歳馬であるが、実績はやや不足。そのキャリアや周辺状況がフランスを中心としたものであることも影響してか人気が薄い。そもそもなぜイギリスの厩舎に預けたのかというレベル。

2歳のCriterium Internationalを勝っているものの評価は高くなかった。クラシックでもフランスでPrix Du Jockey Clubを7着と見るものはなかったが、Irish Derbyは2着と一気に上げてきた。スタミナがあり、Ambiente Friendlyを3着に下したことを評価されている。12Fの速い馬場をこなしたことで陣営は自信を持っているようだ。

全兄がG1を2勝しているSealiway。オーナーブリーダーのGuy ParienteはKendargentのオーナーであり、代表産駒のSkalettiを始めとしてその上位産駒の多くに関与する生産者である。母Kenseaもそうした生産馬でリステッド勝ちまで出世して引退した。近親に目立った活躍馬はなく、フランスでも一流から一枚落ちといった種牡馬を使われてきた牝系となるが、Galiwayと続けて配されG1馬が2頭出たのだから大成功といってよい。

その父GaliwayはWertheimerのオーナーブリードで半兄にSilent NameやSaltoを持つ血統である。リステッド勝ちでG3入着という程度の実績ながら父Galileoの後継種牡馬と期待されフランスはノルマンディーにあるHaras De Collevilleで種牡馬入りした。Guy Parienteに重用されており、同じくHaras De Collevilleに繋養されているという事情もあって母父Kendargentとの組み合わせが異常値といってよいほどの結果を出している。SealiwayとSunwayに加えてKenway、Rubis Vendomeが重賞を勝っており、全てGuy Parienteの生産馬である。そしてこれはGaliwayの重賞馬8頭中の半数を占める。血統要因によるニックではなく環境要因によるものだと思われるが、これら産駒の活躍のおかげで今ではGaliwayの種付け料が30000ユーロに達し、これはTeofiloやChurchillと同額、種付け料だけで見るとGalileo直仔種牡馬としては2番手グループに位置する。もっともトップはこれの10倍以上だが。

Middle Earth: Roaring Lion - Roheryn by Galileo

4歳馬。Gosden厩舎。

去年は長距離路線に向かい、St. Legerは7着に終わるが、その後Ascotで14FのListed Noel Murless Sを勝った。今年は12F路線でNewburyのG3 Aston Park Sを勝って、AscotのG2 Hardwicke Sでは3着。上位にはまだ少し差がありそう。

産駒一世代のみを残し、種牡馬入り初年度にシャトル先のニュージーランドで4歳の若さで世を去った欧州年度代表馬Roaring Lionの代表産駒となっている。

母Roherynは12Fの活躍馬でその産駒にはBuckaroo(2019 by Fastnet Rock)が出ている。コンスタントに重賞クラスを出している16号族の牝系で、Ten Sovereignsやペプチドナイルの同族にあたる。

Goliath: Adlerflug - Gouache by Shamardal

ドイツ産の4歳馬。

Ullmann男爵の所有馬としてフランスで走り、3歳はデビューから三連勝してListedのGrand Prix De Clairefontaineを勝った。今年はG3 Prix D'Hedouvilleを勝ち、前走はAscotに遠征してG2 Hardwicke Sで2着と順調にステージを上げてG1挑戦となった。

Schlenderhanの生産でGのイニシャルということで22-d族の名牝系がドイツに導入されたもの。Guadalupeが三代母と世代の進展が早い。

Point Lonsdale: Australia - Sweepstake by Acclamation

5歳馬。去年の後半からはO'Brien厩舎のペースセッターとして出走することも多くなっている。シーズンオフの中東遠征ではG2 Bahrain International Trophyが3着、G3 The Amir Trophyが11着と結果を残せず、Auguste Rodinが飛んだSheema Classicは6着だった。戻ってきてG3 Ormonde Sを勝ったが、前走はGrand Prix De Saint-Cloudで3着。R. Mooreが乗ってちゃんと走ってDubai Honourに負けたのでは厳しい。

Hans Andersen: Frankel - Shadow Hunter by Arcano

O'Brien厩舎の4歳馬。今年は中距離G1でペースセッターの役割を振られており、Tattersalls Gold Cup、Prince Of Wales's S、Eclipse Sに出走した。

Durban July: Greyville G1 Turf 2200m

今年も南アフリカのDurban July開催。ハンデ戦なのでメリットレートと負担斤量を出しておくが、下の方は54kgで揃ってしまっている。

人気は3歳馬のGreen With Envyだろう。古馬エースはSee It Againだがトップハンデと近走の勝ち味の遅さで少し不安である。ここに去年の勝ち馬Winchester Mansion、Summer CupのRoyal Victory、Cape Town MetのDouble Superlativeとこの一年で各地区の古馬中距離トップレースを勝った組が実績上位。

ロマンで決めていいならCousin Caseyである。

Royal Victory: Pathfork - Kailani by Kahal

4歳騙馬、Nathan Kotzen厩舎、Muzi Yeni騎乗、MR125、斤量57kg

3歳シーズンではG2 Gauteng Guineasで2着の実績がある。本格化したのは古馬となった今シーズンでTurffonteinのG1 Summer Cupを勝ち、4月にも再びTurffonteinのG1 Champions Challengeを勝っている。いずれも2000m戦で今シーズンの実績だけなら古馬で一番である。調整にScottsvilleのレースを使う特徴があり、前走は1500m戦で3着だった。

父PathforkはFlaxman Holdingsが生産したDistorted Humorの産駒で2歳G1 National S勝ちという異色の経歴。三代母がAvianceという良血馬で、引退後に南アフリカ種牡馬入りした。これまでにMighty HighやPearl Of AsiaといったスプリントのG1馬を出しており、Royal Victoryも中距離をこなしているとはいえ短めの距離の方が結果は良い。

Barbaresco: Gimmethegreenlight - Negroamaro by Fort Wood

3歳騙馬、J.A. Janse van Vuuren厩舎、Gavin Lerena騎乗、MR122、斤量53.5kg

G3 Greenlight Sで2着の実績がある。前走はG1 Daily News 2000で3着だが、勝ったGreen With Envyや2着のFlag Manとはやや差があった。

父GimmethegreenlightはMore Than Ready産駒のオーストラリア産馬で、南アフリカに輸入されて現役生活を送った。G1 Queen's Plateを勝つなどマイル戦を中心に活躍し、引退後に種牡馬入りすると多くのG1馬を出して二度リーディングサイアーを獲得した。現在の南アフリカで最高の種牡馬である。

Without Question: The United States - Siena's Star by Argonaut

4歳騙馬、Justin Snaith厩舎、Rachel Venniker騎乗、MR120、斤量54.5kg

今年はCape Town Metで3着に入っているが、それ以外はさっぱりである。

父The United Statesはその父Galileo、その母Beauty Is Truthという良血馬。全妹にHydrangeaHermosaがおり、The United States自身はオーストラリアでその現役キャリアの過半を過ごしてG1勝ちを果たしている。引退後に南アフリカ種牡馬入りとなった。

4歳騙馬、Justin Snaith厩舎、Richard Fourie騎乗、MR110、斤量54kg

今シーズン台頭してきた4歳馬。2500mのG3 Glorious Goodwood Hを勝っており、前走はG2 World Sports Betting 1900を勝った。ここがG1初出走であり、レートも低いことから斤量に恵まれている。

母系は1-k Majorcaのファミリーで南アフリカでコンスタントにG1馬を出している。

Green With Envy: Gimmethegreenlight - Miss Coco by Galileo

3歳牡馬、Dean Kannemeyer厩舎、Craig Zackey騎乗、MR127、斤量56kg

Cape Derbyの勝ち馬で前走G1 Daily News 2000を勝って4連勝中。

母系はCarpet Slipperからの流れに属する5-h族。近親にはAmerican Oaksを勝ったRhea Moonが出ている。母Miss Cocoはアイルランド産馬でDavid Wachman厩舎から3歳の5月に11.5F戦でデビュー勝ちをしているが、キャリアはその1戦のみである。

Shoemaker: Gimmethegreenlight - Moggytwoshoes by Mogok

4歳騙馬、Mike de Kock厩舎、Diego De Couveia騎乗、MR111、斤量54kg

オープン勝ちまで。3歳で重賞2着の実績はあるが、近走はさっぱりである。

近親に現3歳の活躍馬Sandringham SummitやEden Roc、Regal Ransomが出ている。

Aragosta: Rafeef - Miss Galidora by Galileo

5歳騙馬、Mike de Kock厩舎、Marco V'Rensburg騎乗、MR116、斤量54kg

2022年のSA Derby勝ち馬で、2500m程度の距離を得意とするステイヤー。前走は2500mのG3 Tabgold Derbyを2着。Derbyと名乗るレースだが、古馬に解放されている。

父Rafeefはオーストラリア産馬でその父はRedoute's Choice。南アフリカのスプリントG1馬でイギリスのG1 Nunthorpe Sで2着になったこともあるNational Colourが引退後にオーストラリアで繁殖生活に入って産んでのがRafeefで、自身の現役は南アフリカで過ごし、スプリント路線で活躍してG1も勝っている。引退後は南アフリカのRidgemont Highlandsで種牡馬入りし、初年度リーディングを獲得して出だしは好調である。産駒は自身と同じくスプリンターが多く出ているが、Aragostaは母父Galileoの影響によるものか長いところを得意としている。

Purple Pitcher: New Predator - Heliantha by Count Dubois

3歳牡馬、Robyn Klaasen厩舎、Philasande Mxoli騎乗、MR120、斤量53kg

G2 Gauteng Guineasこそ4着に敗れたが、SA Classic、SA Derbyを勝ったTurffonteinの二冠馬。

父New Predatorはオーストラリア産馬でその父がNew Approach。南アフリカで現役を送り、マイラーとして活躍した。

母系は南アフリカに土着した1-m族で、イタリアのGiuseppe De Montelの手が入っており、Niccolo Dell’ArcaとOrtelloの美しい組み合わせになる牝馬Miazzinaが輸入されて南アフリカでのファミリーが創始された。Purple Pitcherはその中でも最大のFiorellaの分岐に属している。

Winchester Mansion: Trippi - Sea Point by Spectrum

5歳騙馬、Brett Crawford厩舎、Kabelo Matsunyane騎乗、MR124、斤量56.5kg

去年の勝ち馬。今シーズンはTurffonteinで3戦して未勝利。Summer Cupでは8着に終わっているが、前走のChampions ChallengeはRoyal Victoryの2着に復調してきた。

父TrippiはEnd Sweepアメリカに残した代表産駒の一角でフロリダで種牡馬入りしていたが、2008年に南アフリカに渡った。南アフリカではInaraやJet Dark、Charles Dickensを出す有力な種牡馬として活躍を続けている。

母系はニュージーランドから南アフリカに入った3-n族。半兄Sand And Seaを初めとして近親に多くの活躍馬が出ており、特に短距離での活躍が目立つ。

See It Again: Twice Over - Supreme Vision by Visionaire

4歳牡馬、Michael Roberts厩舎、Piere Strydom騎乗、MR131、斤量60kg

レート131で古馬でもっとも高い数値を持っており、60kgを背負うことになった。

去年はCape Derbyを勝つとTruffonteinには向かわず、GreyvilleのG2 World Sports Betting Guineasで2着、G1 Daily News 2000勝ちという臨戦で一番人気に支持されたが、軽斤量のWinchester Mansionの2着に敗れた。その後のChampions Cupでも2着となって3歳シーズンを終えている。

古馬となった今シーズンはケープタウンで始動し、G2 Green Point Sを勝ったものの、G1 King's Plateでは同世代のライバルCharles Dickensの2着、G1 Cape Town Metを4着、ダーバンに来てからG1 Gold Challengeを3着と少し成績が振るわない。レートも132から落として131でこのレースを迎えることになった。

60kgが堪えるタイプでもないが。得意とするはずの2000m戦でCape Town Metが4着だったのは気になる。

父Twice OverはObservatoryの産駒でJuddmonte Farmの生産馬である。Champion Sを連覇するなどイギリスでG1を4勝、2010年には欧州の古馬チャンピオンに選出された。引退後に南アフリカのDrakenstein Studが導入して種牡馬となった。これまでにSand And Sea、Do It Again、Double Superlative、See It AgainがG1を勝っている。

母系は3-o族。南アフリカで名牝DancewiththedevilやDurban Julyを2勝したDo It Againを出している。本馬はDo It Againの甥で、父はどちらもTwice OverとDo It Againを強く意識した配合である。

Oriental Charm: Vercingetorix - Souk by Greys Inn

3歳牡馬、Brett Crawford厩舎、Juan Paul V'D Merwe騎乗、MR121、斤量53kg

今シーズンになってケープタウンでデビューして2勝を挙げている。G1 Cape Derbyは3着だった。その後ダーバンの開催に出てきて、G2 World Sports Betting 1900を2着し、G3 Dolphins Cup Trialを勝った。

父VercingetorixはSilvanoの産駒で、G1 Daily News 2000の勝ち馬である。Maktoum家の持ち馬としてドバイでも出走し、2014年にはG1 Jebel Hattaを勝ってDubai Duty Freeではジャスタウェイの2着という実績を残した。2015年もドバイ開催での有力馬と見られていたが、Jebel Hattaのレース中に故障を発症し、そのまま引退して南アフリカ種牡馬入りした。現在では一線級のサラブレッドを出せる唯一のNijinsky直系種牡馬である。

母系は2-d族でYou're My Ladyが南アフリカに導入されたものである。このYou're My LadyはRazyanaの半姉でDanehillの伯母にあたる。Maine Chance Farmによって導入され、Oppenheimer家のMauritzfontein FarmからSA Derby勝ちのBouquet-Garniを出している他、オーストラリアに渡った分岐からVictoria Derbyなどを勝つAce Highが出た。

Oriental CharmはBouquet-Garniの同族で、母父にGreys Innが入っている。Greys InnはBridget Oppenheimerの生産所有で、Zabeelを父とするアメリカ産馬という特異的なバックボーンを有していた。そのレースキャリアもまた複雑で、南アフリカでデビューすると3歳でDurban Julyを含むG1を3勝し、古馬になると舞台をドバイやオーストラリアに替えた。ドバイでは良い結果を出したものの、オーストラリアでは散々な結果に終わっている。引退後に南アフリカに戻って種牡馬入りし、その代表産駒は2シーズンに渡り古馬路線を支えたLegal Eagleである。

Son Of Raj: Duke Of Marmalaede - Freudiana by Black Minnaloushe

4歳騙馬、Tony Peter厩舎、Calvin Habib騎乗、MR119、斤量54kg

去年のSA Derby馬だがその後は未勝利。

Duke Of MarmalaedeはDanehillのラストクロップで古馬になって開花しG1を5連勝した欧州の中距離チャンピオン。引退後は種牡馬として高い期待をかけられたものの種牡馬としても出足が悪く早々にCoolmoreから放出され南アフリカに輸入された。南アフリカでも苦戦していたが牝馬三冠のRain In Hollandを出している。

Meridius: Canford Cliffs - Zili by Parade Leader

4歳騙馬、Tony Peter厩舎、Athandiwe Mgudlwa騎乗、MR113、斤量54kg

重賞クラスでの実績はさっぱりだったが、前走でTurffonteinのG3 Jubilee Sを勝った。

Canford CliffsはStop The Musicの直系で、G1を5勝したマイラーであった。引退後はCoolmoreで種牡馬入りし、欧州でその直系を繋ぐことを期待されたがうまくいかなかった。Meridiusは南アフリカでの初年度産駒である。

母系は20世紀初頭に輸入されたChilderi以降土着した2-f族。母の半兄ZeenoがG1を勝っている。

Master Redoute: Querari - Lady Redoute by Redoute's Choice

5歳騙馬、Andre Nel厩舎、Corne Oriffer騎乗、MR115、斤量54kg

2800mのG3 Cape Stayers Sを勝っているが、南アフリカの長距離戦の結果はあてにできない。

父QuerariはドイツのGestut Fahrhofの生産馬でOasis Dream産駒ながら中距離で活躍し、イタリアのG1 Premio Presidente Repubblicaを勝った。南アフリカでスプリンターやマイラーを多く出す種牡馬として活躍している。

母系はニュージーランドに由来する3-b族で祖母Macedon LadyはオーストラリアのG1 Thousand Guineasの勝ち馬である。

Cousin Casey: Vercingetorix - Bretton Woods by Casey Tibbs

4歳牡馬、Sean Tarry厩舎、S'Manga Khumalo騎乗、MR123、斤量56kg

前走Gold Challengeの2着馬。キャリアを考えると2000m級のレースでは厳しい。

父はVercingetorix。南アフリカも良血馬でなければ去勢されるケースが多くなっているが、Cousin Caseyは母の全兄にBig City Lifeがいることもあってか、去勢されていない。

その伯父Big City Lifeは3歳でG1を3勝、2009年のDurban Julyを勝って当時の最強馬Pocket Powerの時代を終わらせたが、古馬になってからは不振に陥ってG1はGold Challengeの1勝にとどまった。2011年のDurban Julyの直線で予後不良となる骨折を発症し、その生涯を終えている。

19世紀末からアルゼンチンに土着していた17-b族を輸入したファミリーで、祖母Dollar CrisisはCasey Tibbsとの間にG1馬Big City Life、重賞馬Cash Registerを出している。母Bretton Woodsは未勝利で引退し、繁殖としては本馬の他、Bold Silvanoを父としてKlever Katheyがブラックタイプとなっていることから、Silvanoとの相性はよさそうである。

Double Superlative: Twice Over - Come Fly With Me by Jet Master

5歳牡馬、Justin Snaith厩舎、Daniel Muscutt騎乗、MR124、斤量56.5kg

今年のG1 Cape Town Metの勝ち馬。

父Twice Overは欧州の古馬チャンピオンで南アフリカ種牡馬入りし、Do It AgainやSee It Againなどを出す有力な種牡馬として活躍している。

母Come Fly With Meは重賞クラスで活躍したスプリンターで、その全姉はG1 Mercury Sprintを勝ったスプリンターのFly By Nightである。

Flag Man: Flying The Flag - Irresistable Chris by Mark Of Esteem

3歳騙馬、G van Zyl Jr.厩舎、Serino Moodley騎乗、MR126、斤量55.5kg

3連勝で挑んだG1 Daily News 2000で2着の上り馬。

父Flying The Flagはその父Galileo、その母Halfway To Heavenという良血馬で自身もG3勝ちの実績を有していた。現役中にMary Slackとその実家であるMauritzfonteinによって南アフリカに移籍し、引退後はそのまま種牡馬入りとなっている。

母Irresistable Chrisはブラジルからの輸入馬で南アフリカで現役として走って1勝を挙げている。伯父がDurban Julyの勝ち馬Eyeofthetigerである。

Future Pearl: Futura - Arabian Pearl by Al Mufti

4歳騙馬、Sean Tarry厩舎、Grant Van Niekerk騎乗、MR117、斤量54kg

3000m級のG3で3勝しているステイヤーで、前走はGreyvilleの2400m Tabgold Derbyを勝ってきた。

FuturaはDynasty産駒で2014/15シーズンの南アフリカ年度代表馬。これまで産駒にG1馬は出ておらずFuture Learlが活躍馬の筆頭である。

母系は19世紀末に南アフリカに輸入された6号族のMrs. Vealを基点とした南アフリカの土着牝系で多くの活躍馬を出している。特に近いところではGimme A Princeやその母Real PrincessとWilliam Longswordの姉弟がいる。

Coronation S: Ascot G1 Turf 8F

Scat Daddy vs Kingmanの三歳牝馬マイル。

CurraghのFallen Angelはいないが、NewmarketのElmalkaとLongchampのRouhiyaが出てきた。ただ、牡馬戦と同じくやはりRouhiyaはやや人気が薄い状況である。そして人気になっているのは今季初戦をしくじったCoolmore馬といったところで、これもパターンである。

Newmarketの1000 Guineasも勝ったElmalkaは実績不足で人気薄の状況で、ここで負けたRamatuelleやPorta Fortunaが逆転を期している。

GodolphinはDevoted Queenが回避して出走馬なしとなってしまった。

Content: Galileo - Mecca's Angel by Dark Angel

A.P. O'Brien厩舎、Wayne Lorgan騎乗。

8戦2勝。A.P. O'Brien厩舎の2頭目。2歳のG3 Saffordstown Stud Sを勝って、BC Juvenile Fillies Turf4着の実績がある。今年はフランスでPoulichesに出走したが8着に終わった。ここではOpera Singerの援護に回るのかという感じだが、Content自身は追い込んでくるタイプだったと思うのでどういったレースをするだろうか。

2-o族。母Mecca's Angelは5Fのスペシャリストで鳴らしたスプリンター、引退レースでBritish Champions Sprintに出走したが6Fにすら届かない強烈な個性だった。

Elmalka: Kingman - Nahrain by Selkirk

Roger Varian厩舎、James Doyle騎乗。

3戦2勝。Newmarketの1000 Guineasでは2歳のデビュー戦を勝っただけというキャリアで出走して人気薄だったが、Potra FortunaやRamatuelleとの勝負を制した。

6-d族でTesioに購入されたTofanellaからの牝系で、Tokamuraの分岐である。TofanellaからはTeneraniが、TokamuraからはToulouse Lautrecが出る重要な一族である。Elmalkaに至る流れは一時ニュージーランドに渡り当地の年度代表馬であるLa Merを出す。このLa Merがアイルランドから発展させたファミリーであり、母Nahrainは中距離のG1を2勝し、BC FM Turfでも2着に入る実績を残した。半兄にはGodolphinのG1馬で日本で種牡馬入りしたBenbatlがいる。父がDubawiからKingmanに替わってPrincequilloが増えている。

Folgaria: Due Diligence - Full Moon Fever by Azamour

Marco Botti厩舎、Hollie Doyle騎乗。

7戦6勝。2歳の5月にイタリアのStefano Botti厩舎からデビューして5連勝。3歳になると弟のMarco Botti厩舎に移籍してイギリスに拠点を移した。その初戦となったNewburyのG3 Dubai Duty Free SではElmalkaを3着に下してイギリス初勝利で6連勝を決めた。しかしフランスにターゲットを決めて出走したPoulichesでは11着と大敗している。無敗馬だったのでLongchampではそこそこの人気だったが、そこでの11着は評価を急落させている。

8-f族でAd Altioraの一門。Aga Khanが所有し、後にFlag Of Honourを出したラインである。父Due DiligenceはWar Front産駒のスプリンターで、Listed勝ちまでだが、G1 Golden Jubileeで2着している。

Opera Singer: Justify - Liscanna by Sadler's Wells

A.P. O'Brien厩舎、Ryan Moore騎乗。

6戦3勝。去年G1 Prix Marcel Boussacを5馬身差で快勝した欧州の2歳牝馬チャンピオン。今年はIrish 1000 Guineasで初戦を迎えたがFallen Angelの前に3着に終わってしまった。その着差は4馬身半、Fallen Angel自身がNewmarketの1000 GuineasでElmalkaに4馬身3/4差を付けられていることから大いに不本意な結果だろう。

22-b族でHit It A BombやBrave Annaの半妹にあたる。上の父はWar Frontだったが、Opera Singerは父がJustifyになっている。2年目に大躍進を遂げたJustify産駒を代表する一頭である。

Porta Fortuna: Caravaggio - Too Precious by Holy Roman Emperor

Donnacha O'Brien厩舎、Tom Marquand騎乗。

8戦4勝。2歳の4月にデビューして3連勝、Royal Ascot開催ではG3のAlbany Sを勝った。その後G1 Phoenix Sを2着、G1 Moyglare Stud Sを3着からG1 Cheveley Park Sを勝ち、BC Juvenile Fillies Turfに遠征して2着。早い時期にデビューして2歳いっぱいで7戦と使われた。今シーズンは1000 Guineasでの2着のみ。

Aga Khanの5-e族でMasakaの直系。最近ではRougirが出る牝系である。日本ではサニングデールがG1を勝っている。

父CaravaggioはScat Daddy産駒のスプリンターで2歳と3歳でG1を勝って引退した。早熟スプリンターのイメージが強かったが、種牡馬としても欧州のファーストクロップリーディングを獲得して期待に応え、上級産駒は意外と距離も年齢も持つようで、5歳になった初年度産駒から最近では2マイルのBelmont Gold Cupを勝ったThe Grey Wizardを出しているし、Whitebeamも北米芝で活躍している。日本では持ち込み馬のアグリが活躍しており、Caravaggio自身が日本に導入された。

Ramatuelle: Justify - Raven's Lady by Raven's Pass

Christopher Head厩舎、Oisin Murphy騎乗。

7戦3勝。フランス調教馬。2歳シーズンはフランスでG3 Du Bois、G2 Robert Papinを連勝し、G1 MornyはVandeekと差がない2着として終えた。今年はDeauvilleのG3で2着としてNewmarketの1000 Guineasに遠征して3着だった。実力は疑いなく、Elmalkaとの差を逆転できるかといったところである。

16-c族でLocust Timeのファミリー。大きくみるとJudy O'Gradyの一門で、Green Valleyファミリーなどが近縁に出ている。自身の近親にはBest Of The Bestsが出ている。

Rouhiya: Lope De Vega - Rondonia by Raven's Pass

Francis-Henri Graffard厩舎、Maxime Guyon騎乗。

4戦2勝。フランスのPoulichesを勝っているが、人気薄だったことと当日の馬場状態のこともあって人気が上がらない。今年のフランスのギニー馬はどちらも評価が上がっていないのでAscotで結果を求められているような立場である。

9-eでBoussacからAga Khanに引き継がれた牝系で、今もってAga Khanのオーナーブリードとはいえやや地味なファミリーである。Opera賞勝ちのRidasiynaが出ているがやや遠い。

See The Fire: Sea The Stars - Arabian Queen by Dubawi

Andrew Balding厩舎、David Probert騎乗。

4戦1勝。Newmarketの1000 Guineasは12着。G2 May Hill Sを2着、G1 Fillies' Mileを3着と2歳の実績馬。

Etoile De Franceの9-e族で母Arabian QueenはG1 International Sを勝った。

Skellet: Kingman - Dane Street by Street Cry

Ralph Beckett厩舎、Rossa Ryan騎乗。

4戦1勝。2歳ではG3 Oh So Sharp Sで2着がある。CurraghのIrish 1000 Guineasに出走して8着。

14-cでGadaboutの枝に属しており、広い意味ではChic Colombineと同族。半姉に2歳牝馬チャンピオンのSkitter Scatter、姪にBelmont Oaksを勝ったAspen Gloveが出ている。Street CryにKingmanを乗せる形でDevoted Queenと似た血統になるが、Giant's CausewayがなくPrincequilloも薄い分をDanehillで補う。

Prince Of Wales's S: G1 Ascot Turf 10F

全部出してくんなとは思っていたが、じゃあ2頭下げますもそれはちょっとw的な感覚はあり。そしてその片割れLuxembourgに加えてWhite Birchまで消えたらちょっとAuguste Rodinにとっては負けられない一戦になった。

だってInspiralはともかくHorizon Dareが人気の上位に来るのはなんか違うでしょうよ。

Snobbish: Dawn Approach - Althiba by Shamardal

Maurizio Guarnieri厩舎、Fabien Lefebvre騎乗。

4歳馬。Blue Rose Cenと同じYeguada Centurionのオーナーブリードでペースセッター役。

Zarakem: Zarak - Marem Mistress by Mastercraftsman

J. Reynier厩舎、Maxime Guyon騎乗。

4歳馬。フランス調教馬で去年は地方で連勝を決めて最後にLongchampのG2 Conseil De Parisに出走したが6着に終わった。今年はG2 Harcourtを勝ったが前走のPrix Ganayは8着。

マイナーな11-f族の分岐で、祖母Harem Ladyのきょうだいにアメリカ芝の活躍馬Keep QuietやLittle Treasureが出ている。

Blue Rose Cen: Churchill - Queen Blossom by Jeremy

Maurizio Guarnieri厩舎、C. Soumillon騎乗。

4歳馬。調教師がChristopher HeadからMaurizio Guarnieriに変更となっている。

去年のフランス牝馬二冠馬で、その後少し低迷したがシーズンの最後にPrix De L'Operaを勝ってまとめた。今年はPrix D'Ispahanに出走して5着となっている。中距離でも勝ってはいるものの、マイルに戻った方がよいのではないかという気がする。

オーナーブリーダーのYeguada CenturionはBlue Rose Cenに加えてBig Rockも生産所有しており、Hard To JustifyやRamatuelleの生産者でもあるなどして注目を集めている。サラブレッドの生産活動としてはBlue Rose Cenらの世代が初年度にあたる新興のブリーダーである。

オーナーのLeopoldo Fernandez Pujalsはキューバ生まれのスペイン人で、一家はキューバで牧場経営をしていたものの、キューバ革命によりアメリカに亡命を余儀なくされた。彼は会計と財務を学び、徴兵されるとベトナム戦争に従軍してロジスティクスとサプライを担当し勲章と有用なマネジメントスキルを身に着けて退役した。その後就職してスペイン語の能力を武器としてマドリードに派遣され、現地でのファストフード展開の可能性を見るや起業し、実業家としてのキャリアを歩んだ。実業家として成功後、スペインで馬術競技用の生産牧場を開設して成功すると更に狩猟に使うファルコンの生産も行い湾岸地域に多くの顧客を得たようである。Pujalsは72歳にしてサラブレッドの生産事業に乗り出した。読書家の彼がもっとも感銘を受けたのはE.P. TaylorがNorthern Dancerの生涯を綴ったものだったということで、その生産哲学はE.P. Taylorのベストトゥベストに倣っている。サラブレッドの生産はフランスのノルマンディー地方で行われており、Haras De L'Hotellerieを購入して拠点とし、Alec Headに影響を受けてアメリカ血統を重視して欧州に輸入している様。アメリカ血統の牝馬に欧州のクラシックな種牡馬を使う方針があるようだ。今後は種牡馬事業への参入も考慮されており、今年のRoyal AscotではQueen Anne Sに出走を予定しているBig Rockがその最初の種牡馬になるかもしれない。

Blue Rose Cenの牝系は直近に活躍馬が出ていないが、母Queen Blossom自身は重賞を2勝する実績を残した。またQueen Blossomの父Jeremyは良血だが、種牡馬の実績は芳しくなく産駒にはジャンプレースの活躍馬が目立つほどで、その少ない平地の重賞馬がQueen Blossomであった。

Alflaila: Dark Angel - Adhwaa by Oasis Dream

Owen Burrows厩舎、Jim Crowly騎乗。

5歳馬。去年は2戦のみでG2 York Sを勝っているが、Irish Champion Sでは5着。今年はここが初戦となる。10.5FのYork Sを勝っているが、もう少し短いところが良さそうに見える。

4-rのアメリカ牝系でカナダからフランスに導入されたGay Apparelのファミリーである。近親に香港のCalifornia Spangleが出ている他、ノーヴァレンダやLily Of The Valleyも同じ分岐に属している。

Auguste Rodin: Deep Impact - Rhododendron by Galileo

A.P. O'Brien厩舎、Ryan Moore騎乗。

4歳馬。Deep Impact産駒のDerby馬。古馬になった今年はSheema Classicを最下位の12着、欧州に戻ってきてTattersalls Gold CupではWhite Birchに完敗して2着と癖が強い。去年勝った4つのG1が素晴らしいイメージを残しているようで、まだ見限られるようなことにはなっていないが、この辺りでしっかり勝っておかないと状況が厳しくなるのではないか。

Hans Andersen:  Frankel - Shadow Hunter by Arcano

A.P. O'Brien厩舎、Wayne Lordan騎乗。

4歳馬。前走はCoronation Cupに出走して6着。まあペースセッターである。

Horizon Dore: Dabirsim - Sweet Alabama by Enrique

P.Cottier厩舎、Mickael Barzalona騎乗。

4歳馬。フランス調教で前走はG1 Prix D'Ispahanで僅差の2着。去年はG2のPrix Dollarを勝ち、British Champion Sで3着の実績を残す中距離馬。

父Dabirsimはフランスで2歳G1を2勝して欧州2歳チャンピオンとなった。その父はHat Trickである。

母系はフランスのマイナー牝系でパリ以外で走る産駒が多いようなところである。父Sunday Breakの半姉Cavale DoreeがG3を勝っているのが目立つくらいである。

Horizon Dore自身もプロヴァンスでデビューして、南仏での2歳2戦を圧勝して注目を集め、3歳からパリで出走するようになった。ArqanaのYearling出身だが、Deavilleで開催される8月セールの方で、45000ユーロで落札されている。

Lord North: Dubawi - Najoum by Giant's Causeway

John & Thady Gosden厩舎、William Buick騎乗。

8歳馬。今年もDubai Turfに出走したが8着とさすがに衰えたが、それでも勝ち馬に4馬身半差でまだやれそうというところを見せている。前走はSandownのG2 Bet365 Mileで3着。

Prince Of Wales's Sは2020年に勝っているが、その後は2022年に最下位、British Champion Sでも2020年に最下位を記録しており、Ascotは苦手な部類だろう。

Royal Rhyme: Lope De Vega - Dubai Queen by Kingmambo

K.R. Burke厩舎、Clifford Lee騎乗。

4歳馬。去年の9月にListed勝ちをして挑んだG1 British Champion Sでは5着に終わっている。今年はG3 Brigadier Gerard Sを勝っている。

祖母がZomaradahの9-e族でDubawiの近親である。

Inspiral: Frankel - Starscope by Selkirk

John & Thady Gosden厩舎、Kieran Shoemark騎乗。

5歳馬。マイル路線の強豪としてJacques Le Maroisを連覇するなどの実績を残すが、去年は最後にBC FM Turfに出走して10Fでも勝利を挙げた。今年はLockinge Sに出走して4着となり、10Fに乗り込んできた。

10F戦はBCでの1戦のみでそれ以外ではほぼマイル戦というキャリアなだけに、今年もマイル路線となるくらいなら中距離挑戦の方が価値があるのは間違いない。

近親にMediceanが出る3-o族。Cheveley Parkのオーナーブリードなので短距離志向はあるだろう。Santa Anitaではこなしたが欧州の10Fとなるとまた話が変わってくる。