今年の阪神ジュベナイルフィリーズにはレース史上で初めてとなる海外調教馬の出走が予定されています。アメリカのJoseph R. Lee厩舎に所属するMay Day Readyで前走のG1 Breeders' Cup Juvenile Fillies Turfで2着、これを含めたキャリア通算が4戦3勝と非常に強力なプロフィールとなっています。
ちょっとこのMay Day Readyを対象として海外馬の調べ方を紹介します。
基本情報: EQUIBASE
まず北米調教馬を調べる場合はEQUIBASE(https://www.equibase.com/)です。北米で出走実績がある競走馬に加えて、ドバイや最近ではサウジアラビアでの国際重賞に出走していれば対象となっています。Resultsには北米に限らず基本的に現役の全キャリアがフォローされます。
EQUIBASE自体には様々な使い方がありますが、データベースとして使う場合は右上にある検索ボックスを使用すれば問題ありません。Horses以外にも検索対象の項目があり、よく使うのはGr. Stakesで重賞レースを検索することができます。
さて、May Day Readyを検索して表示してみましょう。
最初に、生誕日や性別、毛色、父、母及び母父といった基本的な情報が表示されます。そして直近の出走時の騎手、調教師、馬主と生産者、加えて最新の競りでの落札者とコンサイナーが分かります。また右側には今年の成績と通算の成績も表示されています。騎手は参考程度としてもWhite Birch Farmが生産し、競りで落札したKatieRich StablesがオーナーとなってJoseph R. Lee厩舎に所属していることが読み取れます。
下部にあるタブの情報で重要なのはAuction HistoryとResultsで、レース前にはWorkoutsを参考とすることができます。
順番に見ていくとまずAuction Historyでこれまでの市場取引経歴が分かり、上にあるほど最近の履歴です。May Day ReadyはFTKOCTとOBSAPRに上場されていました。競り名は略号で表示されていますが、カーソルを持っていくと詳細がポップアップします。まあFTK=Fasig-Tipton KentuckyとかOBS=Ocala Breeders’ Saleの他に、KEE=Keenelandあたりがメジャー、欧州だとAR=Arqana、TAT=Tattersallsとかそんな感じ。ここで分かるのは時期と落札者、落札金額でこれ以上の情報が必要ならば各競り会社のサイトで競り結果を検索することになります。同父産駒の取引実績との比較なんかはよく見ています。また、競りに上場したときのカタログを確認できるので、こちらは血統情報、特に近親の活躍状況を確認するのに役立ちます。
Resultsではこれまでの戦績を確認できます。競馬場、開催日、レース名、着順の情報が一覧できるのでとても便利です。北米での開催ならスピード指数やレースの詳細となるChartとレース映像へのリンクが用意されています。ChartはPDFで提供されていますが、レース映像は別途課金が必要なコンテンツとなっています。スピード指数は参考程度で100を超えるかどうかが一つの基準。また、キャリアの中で高い指数のレースを確認するという使い方。
May Day Readyは8月4日にSaratogaの未勝利戦でデビュー勝ちを収めています。距離や馬場はChartを開いて確認しなければなりません。この時は2歳牝馬限定の芝8.5F戦、良馬場で実施されています。道中の通過順位や公式のオッズや短評が一行にまとまっており、また最後にはもう少し詳しいレース状況も記載されているのでかなりの情報を得ることができます。デビュー戦では10頭中の9番人気という評価で、道中9番手からまくって直線では早めに先頭に立つと遅れて追い上げてきた一番人気のLove Tempoにハナ差で押し切ったことが読み取れます。ラップタイムは2Fが25秒台を続けており、2歳の未勝利戦とはいえかなりゆっくりとしたレースになっています。2戦目は9月8日のKentucky Downsで行われたListed Kentucky Downs Juvenile Fillies Sで芝の8F戦。これを1馬身3/4差で勝利しています。3戦目が10月4日にKeenelandで行われたG2 Jessamine Sで芝の8.5F戦です。ここも勝って3戦全勝でBC Juvenile Fillis Turfに向かいました。
BC Juvenile Fillies Turfには4戦無敗の欧州G1馬Lake Victoriaが参戦してきたこともあって人気が集中したのですが、北米路線の人気は西海岸のThought Processが集める状態でした。May Day Readyは北米芝の路線で主流ではないKentuckyでキャリアを積んでいることやJessamine Sまでのキャリアで速い時計がないということで人気を集める存在ではなく、上位2頭に次ぐオッズとはいえ10倍を超えるような人気状況に甘んじました。スピード指数もJessamine Sの85が最高でしたから仕方なしといったところ。実際にレースではそれまでの3戦で経験していないようなペースが展開されますが、先行勢がLake Victoriaに一掃される中で追い込んで2着を確保しています。14頭立てのアメリカの芝戦で追い込みを決めているのだから良いレースだったといってよいでしょう。ここまでが競走キャリアとなります。
WorkoutsではWorkout Historyを表示することで調教の時計が2年分確認できます。May Day Readyで見るとBCまではBelmontのダートで時計を出していて、BC後はそのままDel Marにとどまっていたのか一度だけDel Marの芝で時計を出した後に日本に輸送されていることが読み取れます。11月17日に計時されていて日本には11月20日到着なので、出発前に一度時計を出したということでしょうが、芝で時計を出すなんて普通はないので全く参考になりません。
レース映像: Blood-Horse(https://www.bloodhorse.com/horse-racing/)
レース映像は課金をすればEQUIBASEで見ることができますが、2年以内ならBlood-Horseで映像が提供されています。Blood-HorseのヘッダメニューからRacingを展開するとRace Results & Replaysがあります。このページを開くと右側に検索ボックスがあるので、EQUIBASEで調べたレースの開催日や競馬場を指定して検索し、該当するレース番号を引き当てるだけです。View Detailsを開くと結果のページになり、そこでリプレイを再生できます。2年で無くなってしまうけど、下級戦を含めてリプレイを見ることができるのはとても有用です。
血統情報の調べ方: 競りのカタログ
血統情報は競りのカタログを確認したり、Pedigreequeryで血統表を眺めることで把握できます。ほとんどの場合Pedigreequeryで確認していますが、近親の活躍馬などの情報はセリのカタログを見る方が確実です。
まず競りのカタログから確認してみましょう。May Day Readyは最新の競り結果が4月のOBS 2yoなので、OBS Sale(https://obssales.com/)のサイトでSales Resultsを開いて今年のトレーニングセール結果を探します。EQUIBASEでApril Spring Sale of Two-Year-Olds in Training 2024とあるのでその結果を表示しHIP番号で引き当てます。
競りのカタログに記載される情報は決まっていて、どの競りのカタログを開いても基本的に同じように扱えます。パート1だパート2だといっていたり重賞の格がどうのというのも本来はこのカタログのためではありますし。
さて、父のTapitについては今更ですね。本人の現役時代の実績と種牡馬実績の概略が記載されています。17世代が競走年齢に達しており、3回のリーディングサイアーを獲得。1755頭の産駒のうち、1420頭が出走し1056頭が勝ち上がってそのうち163頭がブラックタイプ勝ちです。9頭のチャンピオンが出ており、例としてUntapable、Stardom Bound、Essential Quality、Flightlineの名前が出ています。
母のNemoraliaは2歳から3歳で8戦4勝。イギリスのG3 City Of York Sを勝っていて、G1 Coronation Sで2着の実績があります。他に2歳ではアメリカでG1 Frizette Sを3着し、G1 Breeders' Cup Juvenile Fillies Turfが3着。Frizette Sで2着があるとはいえ芝での活躍馬だったことが分かります。産駒は他に5頭が登録され、4頭は競走年齢に達しています。勝ち上がりはBosque Redondoの1頭のみですが、Tampa Bayの11Fでコースレコードを出したようです。
祖母のAlinaは2歳から4歳まで走って4勝。Listed勝ちまでですが、3歳のG2 Fantasy Sで2着やG3 Iowa Oaksで3着という実績があるようです。
同じように三代母、四代母まで情報が記載されていますが、四代母のところになってようやくいろいろ出てくるといったところで、ごく近い近親の活躍馬と言えばG1で2着の実績がある母Nemoraliaくらいとなります。
四代母であるLady Caveatはその姉妹にAmerican RoyaleとTo The Huntがいる他、自身の産駒にブラックタイプのThe Cynicなどが出ているようです。末裔のブラックタイプも確認できますが、このカタログを見る限りブラックタイプといってもリステッドレベルまでという印象になります。
血統表: Pedigreequery(https://www.pedigreequery.com/)
ここでTo The Huntの名前はちょっと詳しければピンとくる部分です。なのでもうちょっと詳しく血統を見るためにPedigreequeryを使いましょう。もっともわざわざ競り名簿を確認しに行くより、最初からPedigreequeryを見に行く方が楽ですから、普段の確認はもっぱらこちらからとなります。課金なしでも5代血統表が表示できるので通常は十分かと思います。ただ、基本的に馬の名前が並んでいるだけなので、インブリードの確認はできますが、それ以上のカタログにあったような情報は分かりません。自身の血統構成しか出ませんからMay Day Readyの血統を表示してもそのままではTo The Huntは出てきません。私は5代前にRoayl Advocatorが見えているので気付くのですが、マネしなくていいです。この先は経験値というかデータ量で殴る部分になりますが、To The HuntはStellar JayneとStarrerと2頭のG1馬を産んだほか、孫にStar Billing、曽孫にJust F Y IとG1馬がでる活発なファミリーを形成し、これらの中ではStar Billingが芝の活躍馬という情報を付記できます。Pedigreequeryに課金するとFemale Familyを参照して同じことができます。
血統論というほど大層なものでなくとも、血統表の見方は各々違いますし、何らかの正解があるわけでもないので、それぞれのやり方で良いと思います。私のやり方の一例は次の通りということになるでしょうか。ただし、毎回こういう読みかたをしているわけではありません。全体の印象を掴んで、今回はこうという感じですかね。
Royal Advocatorの血統を開いてみると、あーHarry Isaacsですねえと思う部分がありますが、そこまでさかのぼる必要はないでしょう。
May Day Readyに至るファミリーラインはCaveat、Sea Hero、Came Home、More Than ReadyでTapitという種牡馬になっていて、More Than ReadyとTapitはともかく他は若干格落ちには見えます。なので、Alinaが重賞で入着する程度に活躍した結果、上級種牡馬を使えるようになってMore Than ReadyでNemoraliaを出した。NemoraliaはG1で連対するレベルまで上がったのでリーディングレベルにまで届いてTapitでMay Day Readyを出してきたという感じに読み取っています。Tapitに合わせるのなら母側にIn Realityがあるとよかったのかなというイメージ。むしろ繁殖入りしたらJustify使いたいですねまである。
総評
BC Juvenile Fillies Turfに出走したときにもMay Day Readyのキャリアと血統はチェックしていましたが、特にいいというイメージはありませんでした。まあ、BCなので確認しなければいけない馬が多すぎて事細かに見る余裕がなかったのも確かですが、目を引く情報はありませんでした。3戦無敗とはいえ勝った重賞は平凡で、血統もBCに出てくる馬としてはちょっと弱い方といった印象でした。BC Juvenile Fillies Turfで2着に入ったので改めてレース映像を観たり、セリのカタログ情報を拾って確認したということになります。
これまでの4戦を見る限り、特にペースに関係なく差してくるというタイプで、Jessamine Sで3頭並んだ接戦を制していたようなところはDettoriの腕による部分もありそうと思っています。
だから阪神ジュベナイルフィリーズにもDettoriを呼べて外枠に入ったという点は良かったでしょうか。もっとも阪神ジュヴェナイルフィリーズの時計はBC Juvenile Fillies Turfよりさらに一段速いでしょうからそこまで対応するかは未知数。Tapitだしいけそうかなとは思いますが。