Travers S: Saratoga Grade 1 Dirt 10F

真夏の決戦

Mid-Summer Derbyと呼ばれることもあるTravers Sだが、今年はその二つ名にふさわしい出走メンバーとなった。
今年の三冠戦のそれぞれの勝ち馬に加えて、ForteとTapit Triceも出てくるし、未知の魅力を持つ上り馬Scotlandも参戦する。

ノミネーション段階ではPaddington(偽)がいて出てきたら面白いなと思っていたけど、まあ出てこれるレベルではなかったですね。それは措いてもSaudi CrownとGeaux Rocket Rideがいれば完璧だったのに。

Forte: Violence - Queen Caroline by Blame

Todd A. Pletcher厩舎。Irad Ortiz Jr.騎乗。
9戦7勝。Hopeful S、Breeders' Futurity、BC Juvenile、Florida DerbyとG1を4勝している。
一番人気に支持されていたKentucky Derbyは当日に出走回避を余儀なくされ、立て直してきたBelmont Sは2着。その後Jim Dandy Sを勝ってここに出走してきた。Belmont SではArcangeloの動きに対応できず、直線で差を詰めたもののTapit Triceを交わすのがやっとで2着に終わった。Jim Dandy SではAngel Of Empireと道中ぶつかり合いながらのレースとなり、逃げたSaudi Crownをなんとか差して勝利した。
Kentucky Derbyを回避したので10F戦の出走経験はないが、12FのBelmont Sは最後に前の馬の脚が止まったところをクリアしていったので、10Fならまず問題ないように思われる。
モーニングラインでは2番人気である。
父Violenceは短距離での活躍馬が目立つものの、中距離をこなす産駒も出ており、その代表がこのForteである。他にはアルゼンチンのDandy Del Barrioがいる。その母Violent BeautyはGone WestStorm CatからSecretariatのクロスを受けており、血統に重厚性を持たせている。
母系は1-xでStrikingの流れである。オーナーブリーダーFrances A GenterによってIn RealityやFappianoが入り、Tartan Farmの遺風を持つJeanoからSeattle Slew、Forestry、Blame、Violenceと組み上げられている。

今年の北米3歳馬なら一番の能力と考えているので、ここでそれを証明してBC Classicまで走り抜けてほしい。

Arcangelo: Arrogate - Modeling by Tapit

Jena M. Antonucci厩舎。Javier Castellano騎乗。
5戦3勝。Belmont Sの勝ち馬である。
Peter Pan S勝ちから挑戦したBelmont Sを勝った。Belmont S後は出走せず、Travers Sが復帰戦となる。
モーニングラインの1番人気。
父はArrogate。わずかに3世代を遺して亡くなった父の2世代目にあたる。初年度産駒はSecret Oath、Fun To Dreamなど牝馬の活躍馬が目立ったが、2年目世代は本馬やCave Rockなど牡馬の活躍馬が出てきている。フィリーサイアーっぽくはあるが、2歳から活躍馬を出せる優秀な種牡馬で早逝が惜しまれるところ。
牝系はBetter Than Honourを三代母に持つ8-fのBest In Show牝系である。Better Than HonourにStorm CatTapitと最高レベルの種牡馬を宛がわれてきている。流石に2頭のBelmont S馬を出したBetter Than Honourの血を引くだけあって、Belmont Sで12Fをこなしたが直線の最後は脚をなくしていたので、現在の北米馬に12Fは厳しい距離と言わざるを得ない。

強いBelmont S馬がTravers Sに出てくると当然勝ち負けレベルだが、Arcangeloの場合は勝ち時計が近年で最も遅く、最後1Fが26秒台に落ちたのは良くない結果と言える。

Tapit Trice: Tapit - Danzatrice by Dunkirk

Todd A. Pletcher厩舎。Jose L. Ortiz騎乗。
8戦4勝。Blue Grass Sの勝ち馬。
Kentucky Derbyは7着で、その後Belmont Sが3着、Haskell Sが5着と揮っていない。前走となったHaskell Sは後ろから伸びず、この状況ではかなり厳しいと思われる。
モーニングラインでも最低人気に並んでしまった。
Tapit、母父DunkirkともにA.P. IndyUnbridledを持つ特徴的な血統。祖母Lady Pewittが異系となるのでいわゆる1/4異系配合というパターンになる。そのLady Pewittの産駒には北米2歳女王のJaywalkが出ているが、その父はCross TrafficでDr. Fagerの影響が見て取れる。当然ながらUnbridledのせいであり、Tapit Triceにも同じ要素が強く組み込まれている。

Mage: Good Magic - Puca by Big Brown

Gustavo Delgado厩舎。Luis Saez騎乗。
6戦2勝。Florida Derbyを2着から挑んだKentucky Derbyを勝った。その後はPreakness Sに出走して3着に入り、Belmont Sはスキップした。前走はHaskell Sに出走して2着。
Kentucky Derby勝ち馬ながらいまいち評価が高くなく、モーニングラインでは僅差ながら3番手に甘んじている。Haskell Sでは直線で抜けるかと思われたところをGeaux Rocket Rideに先行されて、そのまま勝ち切られたのはかなり印象を落とした。

父Good MagicはCurlin産駒のBC Juvenile勝ち馬でMageの世代が初年度となる。2歳戦から活躍馬を輩出し、すでに初年度産駒から6頭の重賞馬を出している。うちMageとBlazing SevensがG1を勝っているが、どちらも圧倒的な強さを見せるわけではなく取りこぼしが多い特徴を持っている。

牝系は5-g族Quick Touchの一門である。Capeletの分岐に属しているが、近親の活躍馬はFinnegans Wake程度である。母父Big Brownは北米二冠馬で無敗での三冠を狙ったBelmont Sではスタート直後の厳しい状況こそクリアしたが、最終コーナーで失速し競争をやめてしまった。繁殖入り後の成績も伸び悩んだ。

National Treasure: Quality Road - Treasure by Medaglia D'Oro

Bob Baffert厩舎。John R. Velazquez騎乗。
7戦2勝。Preakness Sの勝ち馬。
2歳から活躍しBC Juvenileの3着馬。今年はSanta Anita Derbyで4着に終わってKentucky Derbyへの出走は叶わなかった。直接Preakness Sに向かってここを勝利したが、Belmont Sは6着に終わっている。
今回はBelmont S以来の出走となった。
モーニングラインでは4番手と低評価。

Preakness SはMageこそ出走していたが、それ以外だとBlazing Sevensがいた程度でMageの評価次第だが、相手関係は軽かったと言えそうだ。

近親にTellingやLeofricが出るファミリーだが、TellingはA.P, Indyを絡めた強いSecretariatクロス、LeofricはFappianoクロスがベースとなっている。National TreasureはTellingと似た方向性を持っているが、それよりは父Quality Roadの能力で勝負といった感じである。

Disarm: Gun Runner - Easy Tap by Tapit

Steven M. Asmussen厩舎。Joel Rosario騎乗。
8戦2勝。Louisiana Derbyで2着の後、最終プレップだったLexington Sを3着してKentucky Derbyの出走枠に滑り込んで4着とまずまずの結果を残した。その後、Matt Winn Sを勝ってJim Dandy Sは4着。
やはりトップクラスと比較するとやや劣るという印象があり、モーニングラインではNational Treasureと同じく4番手評価。

Winchell謹製のGun Runner×Tapit配合である。牝系はアルゼンチンから輸入された牝馬Papilaに端を発し同系にTiznowらが出ている。近親には今年の三冠路線を戦ったAngel Of Empireが出ている。

Scotland: Good Magic - Gemswick Park by Speightstown

William I. Mott厩舎。Junior Alvarado騎乗。
4戦3勝。前走でListedのCurlin Sを勝ってブラックタイプとなった。ダービー路線に乗っていたBlazing Sevensも出走していたCurlin Sでは逃げて、最後に突き放して3馬身差をつける勝利で高い評価を受けた。
モーニングラインはTapit Triceと並んで最低人気である。実績を考えると仕方ないか。

牝系は10-a族のExclusiveラインで近親にはゴールドティアラやPoet's Voice、モズカッチャンが出ている。