2022/23シーズンのオーストラリアG1馬

Overview

2022/23シーズンのオーストラリア競馬では74戦のG1が開催された。その勝ち馬の内訳はオーストラリア産馬が44勝、ニュージーランド産馬が21勝、イギリス産馬、アイルランド産馬とフランス産馬がそれぞれ3勝ずつであった。オーストラリアとニュージーランドの生産規模の差等を考えるとニュージーランド産馬のウェイトが極めて大きくなっていると言えるだろう。もちろんシーズン後半の一大イベントであるRoyal Randwick開催でニュージーランド産馬が勝ちまくったことが大きな要因となっている。

開催されるレース数の違いをあまり考えず雑に勝ったG1の距離で見ていくと、オーストラリア産馬は1600mの勝ちがもっとも多く、1200-1600mを得意とする傾向が読み取れる。一方ニュージーランド産馬は1600-2400mが実績のある距離となっており、2歳戦などで短い距離にも勝ち鞍が見える。もっともPer Incanto産駒のスプリンターが通用したり、Savabeel産駒で1200mを勝ってしまうのはどうなのかと言われれば何とも言えない。北半球産馬は2000m以上に集中する結果となった。

長距離G1はMelbourneがフランス産のGold Trip、Sydneyがニュージーランド産のExplosive Jackの勝利に終わった。賞金が高いMelbourne Cupですらオーストラリア産馬は集まってこず、Sydney Cupではついに今シーズンはオーストラリア産馬の出走がなくなっている。2400m以上で区切ると11戦中で、ニュージーランド産馬が6勝したのに対し、オーストラリア産馬は2勝、フランス産馬が同じく2勝、イギリス産馬が1勝という結果であった。

なお、オーストラリア産馬の勝利はFlemingtonのDerbyとOaksでそれぞれManzoiceとShe's Extremeが勝っている。

Derby Winners

  • Victoria Derby: Manzoice
  • Australian Derby: Major Beel
  • South Australian Derby:Dunkel
  • Queensland Derby: Kovalica
  • W.A.T.C. Derby(G2): Awesome John
  • Tasmanian Derby(Listed): Dunkel

各地区のDerby馬はこの通りで、ManzoiceとAwesome Johnがオーストラリア産馬、Major Beel、Dunkel、Kovalicaの3頭はニュージーランド産馬であった。G1の4レースを全部ニュージーランド産馬に持っていかれたこともあるので、Flemingtonで勝っているならまだマシに見える。とはいえそのManzoiceの母Choiceはニュージーランド産で、重賞を勝ってオーストラリアに渡ってきたというプロフィールである。

また西オーストラリアで勝ったAwesome Johnにしても母はニュージーランド血統でWaikato Studの手が入っている。

直近でニュージーランド産馬が絡んでいないとダービーを勝てないような状況となっている。

Oaks Winners

  • Victoria Oaks: She's Extreme
  • Australian Oaks: Pennyweka
  • Australasian Oaks: Affaire A Suivre
  • Queensland Oaks: Amokura
  • W.A. Oaks(G3): She's Fit
  • Tasmanian Oaks(Listed): Soul Choice
  • Belmont Oaks(Listed): Ihts Closing Inn

ここではPennywekaとAffaire A Suivreがニュージーランド産馬であった。

ところでTasmanian Oaksを勝ったSoul Choiceは父がRedoute's Choice、母父がPerfect Soulである。私の拙文を全部読んでいる奇特な方は気付くかもしれないが、Charles Fipkeのオーナーブリードである。母父にPerfect SoulでほぼFipkeだし、命名からも明らかであった。母をカナダから持ち込んでオーストラリアで生産されている。どうもRedoute's Choiceの牝馬を欲しがったのではないかとみえる繁殖履歴でラストクロップで間に合った。Tasmanian OaksのあとVinery Stud S、Australian Oaksと出走したが力不足であった。

Belmont Oaksはパース都市圏のバースウッド地区にあるBelmont競馬場で開催されている。Ihts Closing Innはダービー格にあたるBelmont Classicも勝っている。なおベルモント市の名を冠しているが、ベルモント市からはAscot競馬場の方が近い。Ascot競馬場で開催されるのはW.A. Oaksである。

Multiple Group 1 Winners

G1を複数勝利したのはAnamoeの6勝を頂点として、Alligator Bloodが3勝しており、2勝馬はThink About It、Jacquinot、In Secret、Giga Kick、Coolangatta、Militarize、Dubai Honourとなる。ここではMilitarizeがニュージーランド、Dubai Honourがアイルランドの産まれだが、この2頭以外はオーストラリア産馬である。

豪新間は馬の往来が頻繁であることを鑑みても、オーストラリア産馬ですらニュージーランド馬産の影響を強く受けていることが分かるので、各馬の紹介をしてみよう。そもそもHigh Chaparralの直系ならまずニュージーランドが絡むのである。

Anamoe: Street Boss - Amanato by Redoute's Choice
  • Winx S: Randwick 1400m
  • George Main S: Randwick 1600m
  • Might And Power S(Caulfield S): Caulfield 2000m
  • Cox Plate: Moonee Valley 2040m
  • Chipping Norton S: Randwick 1600m
  • George Ryder S: Rosehill 1500m

シーズン6勝。通算ではG1を9勝した。2歳でRandwickのSires' Produceを勝ち、3歳ではCaulfieldとRosehillのGuineasを勝っていたが、古馬シーズンで全盛期を迎えた。もともとは2歳でBlue Diamond3着、Golden Slipper2着であったり、3歳になってもGolden Rose S、Cox Plate、Randwick Guineasが2着と勝ちきれない面が目立っていたが、4歳のシーズンは強さが増していた。

引退レースとなったQueen Elizabeth II Sでは惜しいところまでは来た3着、Cox Plateで良績を残しているのはMoonee Valleyだからで済ませても良いが、Rosehill GuineasやMight And Power Sを勝っているので2000mまでこなせないこともないといったところ。もっとも本領はマイルだっただろう。

来シーズンからはオーストラリアで種牡馬になることが発表されている。

18号族のBelle Foxに由来するニュージーランドの名族出身で、母AmanatoはG1 Australasian Oaksの勝ち馬であった。父Street Bossは北米ダートスプリント路線で活躍し、Darleyで種牡馬入りするとケンタッキーとオーストラリアのシャトルサイアーとして活動している。

Alligator Blood: All Too Hard - Lake Superior by Encosta De Lago
  • Underwood S: Sandown 1800m
  • Champions Mile(Cantala S): Flemington 1600m
  • Futurity S: Sandown 1400m

通算ではG1を4勝している。Underwood S勝ちがあるものの、本来はやや短め寄りのマイラーである。

8-c族Princess Tracyの牝系出身で同牝系にはDanasinga、Towkay、Typhoon Tracy、Master Of Design、Suntagonalが出ている。

父All Too HardはBlack Caviarの半弟で自身もG1を4勝する活躍馬だった。祖父がFlying SpurでEncosta De Lagoとの組み合わせでRollsのクロスが発生するが、あまり意味を成しているようには見えない。Last Tycoonの方が重要ですねという血統観。

Jacquinot: Rubrick - Ponterro by Pierro
  • Golden Rose S: Rosehill 1400m
  • C.F. Orr S: Sandown 1400m

3歳の短距離走者。Randwick Guineasで5着に敗退したのが唯一の1600mでの出走であった。

父Rubrickはその父がEncosta De Lago、祖母がSantha's Choiceであり、Redoute's Choiceの近親にあたる。種牡馬として期待されCoolmore Australia入りしたが、結果が出せずにCoolmoreから放出された。Jacquinotはその唯一のG1馬である。

ボトムラインニュージーランドのRa Ora Studが出したSouth Australian Oaks馬Lady Libertyを経由している。

今シーズンを限りに引退し、Hunter Valleyの名門Widden Studで種牡馬となることが発表された。

Coolangatta: Written Tycoon - Piping Hot by More Than Ready
  • Moir S: Moonee Valley 1000m
  • Lightning S: Rosehill 1000m

3歳牝馬のスプリンター。軽斤量を活かして古馬混合戦のG1を2勝した。

父はLast Tycoonの直系になるWritten Tycoon。現役時はG2勝ちまでで種牡馬入り当初は目立った存在ではなかったが、短距離に強い種牡馬として台頭し、Ole Kirkらが活躍した2020/21シーズンにはリーディングサイアーに上り詰めた。

母系はコロニアルナンバーのC26族。ニュージーランドで涵養されたファミリーで近親としてはConcert Hall、また遠縁ではあるがEl Segundoを出している。母Piping Hotの半兄はG1 Blue Diamond勝ちのReaan、同じく半兄のロッカデバルディで社台によって輸入され9戦3勝という結果を残している。

In Secret: I Am Invincible - Eloping by Choisir
  • Coolmore Stud S: Flemington 1200m
  • Newmarket H: Flemington 1200m

Godolphinの3歳牝馬。1400mのG1 Golden Rose Sは2着、同じくG1 Surround Sは3着と距離が延びるとやや落ちる。

父I Am InvincibleはInvincible Spiritシャトルされていた時期の産駒で、種牡馬入りするとすぐにBrazen Beauを出した。すでにBrazen Beau、Home Affairs、Hellbentなどが後継種牡馬となっており、オセアニアInvincible Spiritの勢力を拡大することに成功している。

母Elopingは短距離重賞を2勝した活躍馬で、その半弟には3戦3勝で重賞馬となったものの感染症で命を落としたOf The Braveが出ている。

Dubai Honour: Pride Of Dubai - Mondelice by Montjeu
  • Ranvet S: Rosehill 2000m
  • Queen Elizabeth II S: Randwick 2000m

Queen Elizabeth II Sを勝って日本でも名が知られるHaggas厩舎の遠征馬。北半球のG1では少し足りない印象があり、オセアニアの中距離戦の現状が透けて見える。

父のPride Of DubaiはStreet Cryの産駒でオーストラリアの2歳G1馬である。種牡馬としてはCoolmoreが所有しており、シャトルサイアーとなっている。

母系はDupreが所有した名牝系の一つ5-bで凱旋門賞馬Texanaの直系である。この本流はAga Khanが所有し現代ではTarnawa、Tahiyra姉妹を出しているが、Dubai HonourはCoolmoreが所有したDamsonからの流れである。

Militarize: Dundeel - Amerindia by Dubawi
  • Sires' Produce: Randwick 1400m
  • Champagne S: Randwick 1600m

ニュージーランド産馬。シドニーの2歳3冠はGolden Slipperで13着に敗れているが、その後の2戦を連勝した。

父DundeelはHigh Chaparral産駒のニュージーランド産馬でオーストラリアではIt's A Dundeelの登録名で出走していた。シドニー三冠の達成馬である。So You Thinkの引退後に現れ、High Chaparralニュージーランドの相性の良さを知らしめた。

ボトムラインは祖母がSatwa Queenとなる10号族。Satwa Queenの孫にはLucky VegaやNations Prideが出ており、ホットな牝系となりつつある。

Giga Kick: Scissor Kick - Rekindled Applause by Royal Applause
  • All Aged S: Randwick 1400m
  • Doomben 10000: Doomben 1200m

デビューから5連勝で高額賞金戦のThe Everestを勝ったスプリンターである。その後はG1で少し手間取るが、シーズン終わりにAll AgedとDoomben 10000を勝った。

父のScissor KickはRedoute's Choiceの産駒でその母系は名牝Keraliに接続する。Skiableの分岐はあまり活躍馬が出ておらず、G3を勝ってG1でも善戦したScissor Kickがその筆頭となる程度。それでも名牝系故かArrowfield Studで種牡馬入りするとフランスへの逆シャトルも行われた。しかしながら産駒成績は振るわず、すでにチュニジアに輸出されたようだが、残された産駒からGiga Kickが出た。

Giga Kick自身の母系はStolen HourからStolen Dateに流れた分岐で、Best In Show一門の近縁となる。こちらも多くの活躍馬を出しており、近親にはDesigns On RomeやAlabama Expressが出ている。

Think About It: So You Think - Tiare by Flying Spur
  • Smith Cup(BTC Cup): Eagle Farm 1300m
  • Stradbroke S: Eagle Farm 1400m

シーズン最後にEagle Farmの短距離戦でG1を2勝した。4歳馬で10戦9勝。デビューが3歳のシーズン末の7月と遅く、そのうえまともに使われだしたのは今年になってからといった風であり、最後にクイーンズランドの開催ながらG1までたどり着いている。定量戦のSmith CupでConvergeに勝てるのだからなかなかのものだろう。距離は1200-1400mが範囲。

So You ThinkHigh Chaparralの最高傑作である。ニュージーランドに産まれ、オーストラリアでCox Plate連覇を含むG1を4勝した時点で素晴らしい実績といえるが、さらにCoolmoreに購入されて北半球にわたるとイギリスとアイルランドでG1を5勝、Royal AscotのPrince Of Wales's Sを勝って有終を飾り、オーストラリアに戻って種牡馬入りした。

牝系はアメリカに根付き独特の発展を見せた4-r族でMake Plansの分岐に属している。Make Plansの娘Mer Du Sudがニュージーランドに輸入されてオセアニアに渡った。Mer Du SudのラインからはThe DukeやSky Fieldが出ている。

G1 Winners from NZ

Militarize以外のニュージーランド産馬を見ていくことにする。

I'm Thunderstruck: Shocking - Primadonna Girl by Edenwold

Thunderstruckの登録名でニュージーランドのCatchweightに出走し、オーストラリアに移籍した。移籍後の登録名がI'm Thunderstruckである。

1600mから2000mを得意としG1を2勝。今期はMakybe Diva Sを勝った後、Cox Plateで2着などの実績を残していた。3月に膝の手術を受け、一旦は成功したと判断されていたが、のちに複数の骨折箇所が判明し、手の打ちようがなく安楽死処置を受けた。通算22戦7勝だった。

Callsign Mav: Atlante - Raadisi by Volksraad
  • Sir Rupert Clarke S: Caulfield 1400m

ニュージーランドで活躍するスプリンター・マイラーでMelody BelleやAvantageと好勝負を繰り返した。1400mをもっとも得意とし、昨シーズンからオーストラリアのDanny O'Brien厩舎に移籍している。

移籍後の成績は芳しいものではなかったが、馬場が悪化したSir Rupert Clarke Sで大駆けを見せた。

Smokin' Romans: Ghibellines - Inferno by Yamanin Vital
  • Turnbull S: Flemington 2000m

イヤリングセールで購入されオーストラリアに渡った。デビュー戦がCountry開催のBallaratのオールウェザーであるなど期待されていたわけではなく、しばらくハンデキャップ戦を舞台に出走していたが、昨シーズンあたりから重賞にも出走するようになり、今シーズンはG1に届いた。しかしTurnbull S勝ちのあとは冴えず、人気を集めたCaulfield Cupで7着に終わって、一発屋の評価を受けることになる。

No Compromise: Pins - Baggy Green by Galileo
  • Metropolitan S: Randwick 2400m

Gold CoastのChris Waller厩舎に所属しシドニーで活躍する中堅馬。重馬場を得意としMetropolitan Sは条件と相手に恵まれた。

Sharp 'N’ Smart: Redwood - Queen Margaret by Swiss Ace
  • Spring Champion S: Randwick 2000m

ニュージーランドとオーストラリアでオペレーションを展開するRogerson厩舎の所属。ニュージーランドでデビューし、2歳でもEagle Farmへの遠征を行っていた。3歳の今シーズンはSpring Champion Sを勝ってVictoria Derbyを2着のあとニュージーランドに戻り、Thorndon Mile 2着からHarbie Dyke SとNew Zealand Derbyを勝った。その後はシドニーでAustralian Derbyに出走して4着としてシーズンを終えた。

オーストラリアとニュージーランドに広範な生産施設を有するGerry Harveyの生産馬である。

Icebath: Sacred Falls - Fabulist by Savabeel
  • Empire Rose S: Flemington 1600m

イヤリングセールで購入されてオーストラリアでデビューした。マイルを得意とする短距離馬でG1でも何度も上位に入着していたが、牝馬限定戦のEmpire Rose Sでついに勝利した。

父Sacred FallsはO'Reillyの後継種牡馬として期待されたが、2019年に10歳の若さで亡くなった。Icebathはその初年度産駒である。Icebathの全弟は香港で活躍するCourier Wonderである。

Roch 'N' Horse: Per Incanto - Rochfort by Cecconi
  • Champions Sprint: Flemington 1200m

Per Incanto産駒のスプリンターで、ニュージーランドではListed勝ちまで。昨シーズンからオーストラリアに遠征しており、Newmarket H勝ちがあった。今シーズンは定量戦のChampions SprintでNature Stripを下した。

父Per IncantoはStreet Cry産駒のスプリンターで、Scuderia Archi Romaniのオーナーブリードとしてイタリアでデビューした。イタリアでは3歳の短距離で結果を残し、Hamdan殿下に購入されてイギリスに渡ったものの通用しなかった。引退後はニュージーランドのLittle Avondale Studで種牡馬入りし、短距離に強い産駒が出ることで人気となっている。

Legarto: Proisir - Geordie Girl by Towkay
  • Australian Guineas: Flemington 1600m

ニュージーランドでデビューから4連勝でNew Zealand 1000 Guineasを勝った。その後Eight Carat Classicを勝って牡馬相手のKaraka Million 3yoでは4着とするとFlemingtonに遠征し、Australian Guineasを勝った。

父のProisirはChoisir産駒でオーストラリアのマイル戦で活躍しG3を勝った。G1では2着までの実績で、ニュージーランドのRich Hill Studで種牡馬入りすると初年度産駒からLevanteを出している。このシーズンが3歳だった2019年産世代はLegartoの他にそのライバルとなったProwess、NZ 2000 Guineasを勝ったPierなど活躍馬が続出している。

牝系は19世紀に輸入されたAtlantis以来の歴史を持つ土着牝系である。堅実に枝が伸び、時折G1級が出てくるといったファミリー。

Prowess: Proisir - Donna Marie by Don Eduardo
  • Vinery Stud S: Rosehill 2000m

デビューから2連勝で挑んだSoliloquy SでLegartoに敗れて3着となると、牡馬相手のNew Zealand 2000 Guineasに駒を進めたがここでも同父のPierの前に3着に終わった。年明けからAuckland Guineasを勝って挑んだKaraka Million 3yoでLegartoを下して勝利すると、2000mに距離を延ばしてG2 Fillies' Classicも勝った。前売り二番人気に支持されていたNew Zealand Derbyは回避したが、その際に次の目標レースとして挙げたG1 New Zealand S、G1 Vinery Stud Sを連勝した。

ニュージーランドに土着した2-g族の出身で祖母Scarlet RunnerはG2馬である。近親にはSky Cuddleが出ている。

I Wish I Win: Savabeel - Make A Wish by Pins
  • T J Smith S: Randwick 1200m

もともとは1400mや1600mのレースを狙って出走していたが、今年は短い方に振ってLightning Sを2着、Newmarket Hを3着からT J Smith Sを勝ったのだから路線変更が当たった形にはなるか。それにしてもニュージーランドのSavabeel産駒がオーストラリアで1200mのG1を勝つんじゃないよ。

Mr Brightside: Bullbars - Lilahjay by Tavistock
  • Doncaster Mile: Randwick 1600m

昨シーズンから台頭したマイラー。今シーズンは距離延長を試みていたが、芳しい結果ではなかった。シーズンの終わりにマイルに戻ってDoncaster Mile連覇を果たした。

BullbarsはElusive Qualityがオーストラリアにシャトルされていた時期に残した産駒である。母Accessoriesが3歳で競走能力を喪失するとオーストラリアに送られ、Elusive Qualityに配された。半弟にはHelmet、Epauletteが出ており、非常に優秀な繁殖牝馬であった。

母系はニュージーランドに土着した7-d族Conceitの一門で、PurpleやXcellentを出すファミリーである。

Major Beel: Savabeel - Gram by O'Reilly
  • Australian Derby: Randwick 2400m

G2のTulloch Sを2着から連闘で出走したAustralian Derbyで波乱の立役者となった。

牝系の13-b族は南半球に活躍馬が目立ち、本馬の従兄にはGolden Mileが出ている。

Pennyweka: Satono Aladdin - Threepence by Pentire
  • Australian Oaks: Randwick 2400m

New Zealand Oaks勝ちからRandwickに遠征して当地のOaksも勝った。

RandwickのDerbyとOaksはいずれもニュージーランド産馬が上位を占める結果になっているが、レース開催がEllerslieが終わってから遠征しやすい時期だったことが理由の一つだろう。今年はEllerslieのダービー馬とオークス馬が遠征しており、Sharp 'N' Smartは新豪のダービーダブルに失敗したが、Pennywekaはオークスダブルを達成したことになる。

Satono Aladdinは安田記念を勝って引退後に種牡馬入りし、初年度からニュージーランドのRich Hill Studにシャトルされている。Pennywekaはその初年度産駒である。

母系はニュージーランドに入った4-k族で母の半兄にステイヤーのTitchが出ている。

Explosive Jack: Jakkalberry - Extra Explosive by Ekraar
  • Sydney Cup: Randwick 3200m

2年前にAustralian Derby、South Australian Derbyを連勝し、Queensland Derbyでも3着に入る実績を残したが、その後低迷し怪我で長期離脱していた。今年になって1年以上のブランクから復帰したものの結果はついてこず、Sydney Cupの斤量は52.5kgと軽くなっていた。

父JakkalberryはMachiavellian直系だがStorming Home産駒でステイヤーとして長く活躍した。引退後にNovara Park Studに入ったが、4世代の産駒を残して感染症で命を落とした。

オーストラリア由来の8-d族でニュージーランドに入った系統。近親にNew Zealand Derbyを勝ったVin De Danceが出ている。

Atishu: Savabeel - Posy by No Excuse Needed
  • Queen Of The Turf S: Randwick 1500m

ニュージーランドでデビューし、Listed戦を連勝してオーストラリアに移籍した。

ニュージーランドに入ったのは三代母のHead Of The Riverでまだ浅いが、近親にAegonやDaffodilが出ている11-d族。

Affaire A Suivre: Astern - Laurelling by Highest Honor
  • Australasian Oaks: Morphettville 2000m

4戦目で勝ち上がるとすぐにアデレードに遠征し、Port Adelaide Guineasを勝つとそのままAustralasian Oaksも勝っていった。その後出走したQueensland Oaksでは5着だった。

父AsternはMedaglia D'Oroの産駒で、Godolphinの持ち馬としてオーストラリアのG1を勝った。引退後はDarley Australiaで種牡馬となり、ケンタッキーにもシャトルされている。

母LaurellingはFall Aspenの直系で繁殖としてオーストラリアに送られていた。Asternを付けた後にニュージーランドに送られたので、Affaire A Suivreは持ち込み馬ということになる。

Ruthless Dame: Tavistock - Ruthless Lady by Keeper
  • Robert Sangster S: Morphettville 1200m

デビュー戦を快勝し、返す刀でG3のThoroughbred Breeders Sを勝った。その後はSurround Sで2着の一方Coolmore Stud Sでは10着と大敗した。アデレードに舞台を移したRobert Sangster SでG1タイトルを手に入れた。

父TavistockはMontjeu、Quest For Fame、High Lineという累代にあるまじきスプリンターとして現役生活を終えた。産駒は基本的に距離をこなすタイプに出てくるが、時折Entriviereのように父の溢れる狂気を受け継いだスプリンターが現れる。

母系はオーストラリアからニュージーランドに入ったラインで、短距離馬が出るファミリーである。

Dunkel: Dundeel - Kudamm by Cape Cross
  • South Australian Derby: Morphettville 2500m

3歳になってからのデビューで、今年はタスマニアに渡ってLaunceston GuineasとTasmanian Derbyを勝った。メルボルンに戻ってG2 Alister Clark Sは9着に終わったが、アデレードでダービーを勝った。

ボトムラインはLa Troienneの流れだが、Big Hurryの傍系である。傍系とはいえG1を3勝したZomanなどがでるところ。

Kovalica: Ocean Park - Vitesse by Makfi

デビュー戦を落とすが、その後4連勝でG3 Ascot Green Grand Prix Sを勝った。今年は始動が遅れたが、クイーンズランドで開花し、Queensland Guineas勝ち、Doomben Cup 3着からQueensland Derbyを勝った。

Ocean ParkはThorn Park産駒の中距離馬で、引退後にWaikato Studで種牡馬となっている。これまでの活躍馬はG1を3勝したTofaneやKoldingが著名で、他にもStar Of The Seasの様にオーストラリアのマイル戦で通用する産駒を出している。一方でステイヤータイプも出てきており、こちらはOcean BillyがAuckland Cupを勝っているなどの実績がある。

Ocean ParkはOcean BillyやRondinellaのようにニュージーランド土着牝系を相手にステイヤーを出す傾向があるように思われるが、Kovalicaもニュージーランド土着の2-j族である。母の半弟にThe Bostonian、祖母の半兄にMufhasaが出ているが、いずれもスプリンターであったのが興味深い。The Bostonianは父がJimmy ChouxでThorn Parkとの相性の良さもあるのだろう。

G1 Winners from Northern Hemisphere

北半球産のG1勝ち馬の残りをざっと見ておきましょう。

Top Ranked: Dark Angel - Countess Ferrama by Authorized
  • Epsom H: Randwick 1600m

アイルランド産の移籍馬。イギリスのG3勝ちがあり、5歳のシーズン末にオーストラリアに移籍した。G1 Lockinge Sで3着の実績もあり、それなりに強いと言ってもよい。6歳にしてG1に届いた。

Durston: Sea The Moon - Caribana by Hernando

イギリス産の移籍馬。今シーズンはChriss Waller厩舎から出走し、斤量に恵まれたCaulfield CupでGold TripやKnights Orderを下した。

Gold Trip: Outstrip - Sarvana by Dubai Destination

フランス産馬で今シーズンから本格的にオーストラリアで走り始めた。フランス時代はPrix Ganayで2着になっている他、Grand Prix De ParisとGrand Prix De Saint-Cloudで3着、凱旋門賞でもSottsassの4着と結構な実績を残していた。

今シーズンはTurnbull S、Caulfield CupCox Plateと10月のG1を3出走して、Melbourne Cupを制した。つまり1ヶ月でG1を4戦したことになる。その反動なのかシーズン後半はさっぱりな結果であった。

Zaaki: Leroidesanimaux - Kesara by Sadler's Wells
  • Champions S: Flemington 2000m

イギリス産のG3馬でオーストラリアに移籍後はG1を4勝となった中距離馬。

Arapaho: Lope De Vega - Alzubra by Dansili
  • Tancred S: Rosehill 2400m

フランス産馬。オーストラリアに移籍後にクラシックディスタンスの適性を見出され、G1勝ちまで到達した。

Cascadian: New Approach - Falls Of Lara by Street Cry
  • Australian Cup: Flemington 2000m

イギリス産馬。北半球時代はフランスで3勝。基本的には短距離で使われることが多いが、良績を残しているのは中距離である。

Huetor: Archipenko - Briviesca by Peintre Celebre
  • Doomben Cup: Doomben 2000m

フランス産でフランス時代はハンデキャップホース。去年からオーストラリアに移籍し、Doomben Cupを勝っていた。今年もDoomben Cupを勝って連覇となった。

そもそもSpecialクロスの強いArchipenkoの母父にPeintre CelebreでNureyev追加で強烈な近交配合と想像がつくのだが、さらに本馬自身がSpecialのボトムラインであり、Machiavellian、Niniskiとはいるのでとんでもないことになっている。(NiniskiはRidan持ち)

オーストラリア産馬の中でニュージーランドに強く関係している馬を3頭紹介する。

Sunshine In Paris: Invader - Zenaida by Zabeel
  • Surround S: Randwick 1400m

9-h族のニュージーランド牝系で母の半兄にはVosne Romaneeが出ている。

父のInvaderはSnitzel産駒の2歳G1馬。Sunshine In Parisはその初年度産駒である。半姉Macrouraは父SnitzelでG3を勝っており、相性が良いと言える。

Communist: Russian Revolution - Cappadocia by Northern Meteor
  • Randwick Guineas: Randwick 1600m

10-dのニュージーランド由来ファミリーでFrothを経由する。ということは近親にHorlicksが出る一門。Communistが出る分岐も活性が高く、Niconero、Nicconiの兄弟が出るラインである。

父Russian RevolutionはSnitzel産駒のスプリントG1馬で、2021/22シーズンのファーストクロップリーディングを獲得している。

Espiona: Extreme Choice - Dahooil by O'Reilly
  • Coolmore Classic: Rosehill 1500m

7-d族Franlyleのファミリーでニュージーランドらしい累代で構成された母Dahooilがオーストラリアに渡った。近親にはVision And PowerやGlamour Pussがいる他、近い構成でSavabeelを使った結果でProbabeelが出ている。