Durban July: Greyville Grade 1 Turf 2200m

7月の第一土曜は南アフリカ競馬最大の祭典Durban July開催。ハンデ戦であることと距離が2200mであることが特徴で、荒れた結果になりやすい。ハンデキャップはトップハンデを60.0kgとしてメリットレート(MR)をベースに振られているといったところ。

さて、そのトップハンデが今年はマイル路線でMR127を獲得しているTrip Of Fortuneとなったことで、中距離路線のMR124ラインが58.0kg基準になっている。南アフリカの場合、定量戦の斤量基準は60.0kg(牝馬限定戦なら牝馬でも)なので、Trip Of Fortuneを犠牲にして、他馬は普段より軽い斤量となっていると考えてよい。

そうなると去年の三冠牝馬Rain In Hollandが56.5kgで出走できるのは有利であるし、馬齢でアローワンスがある3歳馬は前哨戦Daily News 2000上位のSee It Againの56.5kg、Dave The Kingの55.5kgも恵まれたように思う。一方で古馬は58.0kgがPuerto Manzano、Safe Passage、Pomp And Powerであり、Trip Of Fortuneの60kgに比べるとマシだが、3歳やRain In Hollandに対してこれだけ背負わされているのはつらそうである。

といったところで、See It Againが軸で、Rain In Hollandが対抗となるだろうか。軽斤量からピックアップするならPacayaかと考えている。

南アフリカの血統勢力図の観点からいくと、本レースに出走する外国産馬はアルゼンチン産のPuerto Manzanoだけで、当日のアンダーカードまで含めても他にはオーストラリア産馬が1頭出てくるだけという状況で、国内生産に回帰している。北半球産馬を導入して走らせていたような勢いはもうない。

種牡馬についてはGimmethegreenlightがすでに中堅の域に入っているが、出走馬の父としては若い部類となるほどトップ層の種牡馬が停滞している。Gimmethegreenlightを基準にするとほぼ同世代がVercingetorixであり、Dynasty、Trippi、Silvano、Duke Of Marmaladeは古い時代の種牡馬であり、新しいのはThe United StatesとGlobal Viewの2頭でいずれもGalileo直仔である。Galileoの取り込みは南アフリカでも直近の課題となっているのだろう。

なお、一般人(?)向けには1月のケープに続いてSoumillonが乗りに来ていますよという話題があるのだが、南アフリカ競馬のオタクとしてはFayd'Herbeが来ていることの方がポイント高い。

1: Bless My Stars: Gimmethegreenlight - Star Express by Silvano

Sean Tarry厩舎、3歳牝馬、MR109、11戦4勝、斤量52.0kg、Athandiwe Mgudlwa

G1 SA Fillies Classicの勝ち馬で、その後のSA Oaksは4着、2000mのG2 Gerald Rosenberg Sを2着のあと1600mのオープン競走を勝っての参戦となった。Greyvilleでは2歳G1 Thekwini Sに出走経験があり3着、今シーズンは全てTurffonteinでの出走だった。距離はやや長いだろう。

2: Without Question: The United States - Siena's Star by Argonaut

Justin Snaith厩舎、3歳騙馬、MR120、12戦3勝、斤量54.5kg、Richard Fourie

ケープを拠点として、Cape DerbyとDaily News 2000でいずれもSee It Againの3着という実績がある。Kenilworth冬季三冠の初戦となるG3のVariety Club Mileを勝ってGreyvilleに出てきた。See It Againとはやや差があり、斤量差で逆転できるかどうかといったところ。

The United Statesは父Galileo、母Beauty Is Truthという良血馬。自身はオーストラリアに移籍してG1 Ranvet S勝ちなどの実績を上げた。引退後に南アフリカ種牡馬入りし、Without Questionが2世代目となるが、本格的に産駒が揃っているのはこの世代からのようである。

アイルランド産まれのThe United Statesに対してその産駒がWithout Questionなのはよくできているというかなんというか…

3: Time Flies: Dynasty - Right And Ready by Whipper

Brett Crawford厩舎、4歳牝馬、MR117、10戦5勝、斤量55.0kg、Luyolo Mxothwa

デビューが3歳シーズン末と遅く、前走のG1 Woolavington 2000が重賞初挑戦であったが、ここで2着に入って間に合った。

4: Winchester Mansion: Trippi - Sea Point by Spectrum

Brett Crawford厩舎、4歳騙馬、MR112、14戦4勝、斤量53.0kg、Kabelo Matsunyane

昨シーズンのKenilworth冬季開催で台頭し、三冠最終戦のPocket Power Sを勝った。前走はG3のCup Trial勝ち。

5: Billy Bowlegs: The United States - Youarethetops by Captain Al

Alec Laird厩舎、3歳牡馬、MR118、10戦3勝、斤量53.5kg、Sean Veale

G3のSea Cottage Sを勝ち、SA Classicを3着、SA Derbyを2着と結果を残した。前走はChampions Challengeで4着と古馬相手に苦戦した。その結果斤量には恵まれたように見えるが、後述する事情により斤量差は大きく変わっていない。

6: Do It Again: Twice Over - Sweet Virginia by Casey Tibbs

Justin Snaith厩舎、8歳騙馬、MR124、34戦9勝、斤量57.0kg、Gavin Lerena

3歳でDurban Julyを勝ち、翌年にはDo It Againした名馬であるが、その後はパッとしない成績が続いている、その中でも不思議とDurban Julyは好走しており、2020年以降も3着、4着、4着にまとめている。

そうはいっても今年はCape Town Metが10着、Gold Challengeが9着と今までにない落ち込み方で、さすがに衰えが隠せなくなっている。

7: See It Again: Twice Over - Supreme Vision by Visionaire

Michael Roberts厩舎、3歳牡馬、MR124、9戦4勝、斤量56.5kg、Piere Strydom

Cape DerbyとDaily News 2000を勝って挑む3歳馬。母はDo It Againの半弟であり、Do It Againが最初のDurban Julyを勝った後にその再来を期待してTwice Overを付けたら、それを上回る成績でここまでやってきたという逸材。オーナーのNick JohnssonはDo It Againのオーナーにも名を連ねている。

南アフリカの3歳世代は最強馬Charles Dickensが距離をこなせずマイル路線に向かっており、中距離以上ではCape DerbyでCharles Dickensを下したSee It Againが抜けてきている。古馬戦ということもあり斤量にも恵まれたように思われる。

8: Silver Darling: Silvano - Jet Belle by Jet Master

Justin Snaith厩舎、4歳牝馬、MR120、16戦4勝、斤量55.0kg、J.P. van der Merwe

昨シーズンのWoolavington 2000勝ち馬。今シーズンは勝てていないが牝馬限定のG1級で好走を続けている。

9: Son Of Raj: Duke Of Marmalade - Freudiana by Black Minnaloushe

Weiho Marwing厩舎、3歳騙馬、MR115、8戦4勝、斤量53.0kg、Muzi Yeni

Derby TrialからSA Derbyの連勝を決めたが、Daily News 2000で8着に敗れてSA Derbyのレースレベルに疑問を持たれることになってしまった。今の南アフリカで2450mのDerbyは条件として特殊すぎるので仕方ないと言えば仕方ない。

10: Dave The King: Global View - Touche by Jet Master

Mike De Kock厩舎、3歳牡馬、MR122、10戦3勝、斤量55.5kg、Craig Zackey

3勝馬で重賞勝ちはないが、Daily News 2000では2着に入っている。着実に力をつけてきているようには見える。

父Global Viewは南アフリカに導入されたGalileo直仔で、現役戦績はアメリカの芝G2勝ちまで。

11: Puerto Manzano: Seek Again - Posera by Orpen

J.A. Janse van Vuuren厩舎、5歳騙馬、MR123、24戦9勝、斤量58.0kg、Keagan De Melo

Turffonteinで活躍し、今シーズンはSummer CupとChampions ChallengeでG1を2勝しているアルゼンチン産馬。ダーバンでは過去2戦しているが、去年のDurban Julyは16着と惨敗した。

12: Pacaya: Trippi - Ash Cloud by Black Minnaloushe

Justin Snaith厩舎、4歳騙馬、MR110、12戦5勝、斤量53.0kg、Grant van Niekerk

3歳シーズンは結果を残せなかったが、今年は3戦2勝でGreyville 1900を勝つなど好調を見せている。

13: Second Base: Gimmethegreenlight - Passionate Kiss by Fort Wood

Robyn Klaasen厩舎、5歳騙馬、MR120、32戦7勝、斤量56.5kg、Chase Maujean

3歳時はG1でも好走し世代のトップクラスに評価されていたが、古馬になってからは重賞級が良いところという程度まで評価を下げていた。前走のChampions ChallengeでPuerto Manzanoと接戦の2着に入ったのが久しぶりのG1での好走だったが、これにより下がっていたMRが120まで戻ってしまい、本戦での負担重量が重くなってしまった。

14: Safe Passage: Silvano - My Sanctuary by Antonius Pius

Mike De Kock厩舎、4歳騙馬、MR124、15戦6勝、斤量58.0kg、Christophe Soumillon

昨シーズンはDaily News 2000勝ちからDurban Julyに出走して3着。マイルから中距離で非常に安定した成績を残している。前走のGold ChallengeではCharles Dickensの前に5着に終わっており、今後を考えると中距離の方がよいだろう。

15: Rascallion: Vercingetorix - Sofala by Jet Master

Vaughan Marhall厩舎、5歳騙馬、MR122、19戦4勝、斤量57.5kg、Corne Orffer

3歳シーズンは善戦屋というイメージだった。今年になってようやくG2を勝って重賞タイトルを手にしている。3歳でもCape DerbyやDaily News 2000でLinebackerの2着に入っていたりと中距離の有力馬で、t5歳の今シーズンはG2を勝ちきっているものの、戦績の安定感はなくなっている。

16: Trip Of Fortune: Trippi - Louvre by Doowaley

Candice Bass-Robinson厩舎、4歳騙馬、MR127、18戦9勝、斤量60.0kg、Aldo Domeyer

1400から1600を主戦場とする短め寄りのマイラーで、3歳ではG1レベルになかったが、今シーズンになって台頭し、Horse Chestnut SでG1タイトルを手に入れた。更にDrill Hall Sを勝って、メンバーが揃ったGold Challengeに挑んだが、3歳馬Charles Dickensに一蹴されて4着に終わった。

Trip Of Fortuneはマイルを超える距離の出走経験はないものの、Gold Challengeは4着でもMR127のハイレートで、悲しくもMR124勢の斤量を下げてしまいDurban Julyでトップハンデを背負うことになってしまった。

17: Rain In Holland: Duke Of Marmalade - Imvula by Aqlaam

Sean Tarry厩舎、4歳牝馬、MR120、21戦11勝、斤量56.5kg、S'Manga Khumalo

昨シーズン牝馬三冠を達成したが、その反動か今シーズンは前半は不本意な結果が続いていた。3月のColorado King S勝ちからChampions Challengeで3着に入ると前走は出走条件が古馬に解放されたWoolavington 2000を勝って調子を上げている。南アフリカでは牝馬限定の定量戦は60.0kgを課されるため、ハンデ56.5kgはかなり恵まれた条件と言える。

18: Pomp And Power: Vercingetorix - Peru by Candy Stripes

Justin Snaith厩舎、4歳騙馬、MR124、18戦5勝、斤量58.0kg、Bernard Fayd'Herbe

昨シーズンのCape Derby馬で、その後はDaily News 2000を2着の実績があるものの勝ちから遠ざかっている。Durban Julyは11着に終わっている。

今シーズンも全く見どころがなく、Cape Town Metで3着だけがまともな結果である。名手であるFeyd'Herbeを呼んではみたがどこまでやれるかといったところだろう。

Reserve 1: Nebraas: Vercingetorix - Noor Dubai by Archipenko

Sean Tarry厩舎の6歳騙馬、MR117、31戦8勝、斤量55.0kg

Gold Cup勝ちの実績もあるステイヤーで、2000mでもColorado King SでRain In Hollandの2着に来る程度にやれる。

Reserve 2: Jimmy Don: Pathfork - Joshlin by Joshua Dancer

Erico Verdonese厩舎の3歳牡馬、MR116、9戦3勝、斤量53.0kg

SA Classicの2着馬であるが、SA Classic上位のその後実績がふがいない。