Durban July: Greyville G1 Turf 2200m

今年も南アフリカのDurban July開催。ハンデ戦なのでメリットレートと負担斤量を出しておくが、下の方は54kgで揃ってしまっている。

人気は3歳馬のGreen With Envyだろう。古馬エースはSee It Againだがトップハンデと近走の勝ち味の遅さで少し不安である。ここに去年の勝ち馬Winchester Mansion、Summer CupのRoyal Victory、Cape Town MetのDouble Superlativeとこの一年で各地区の古馬中距離トップレースを勝った組が実績上位。

ロマンで決めていいならCousin Caseyである。

Royal Victory: Pathfork - Kailani by Kahal

4歳騙馬、Nathan Kotzen厩舎、Muzi Yeni騎乗、MR125、斤量57kg

3歳シーズンではG2 Gauteng Guineasで2着の実績がある。本格化したのは古馬となった今シーズンでTurffonteinのG1 Summer Cupを勝ち、4月にも再びTurffonteinのG1 Champions Challengeを勝っている。いずれも2000m戦で今シーズンの実績だけなら古馬で一番である。調整にScottsvilleのレースを使う特徴があり、前走は1500m戦で3着だった。

父PathforkはFlaxman Holdingsが生産したDistorted Humorの産駒で2歳G1 National S勝ちという異色の経歴。三代母がAvianceという良血馬で、引退後に南アフリカ種牡馬入りした。これまでにMighty HighやPearl Of AsiaといったスプリントのG1馬を出しており、Royal Victoryも中距離をこなしているとはいえ短めの距離の方が結果は良い。

Barbaresco: Gimmethegreenlight - Negroamaro by Fort Wood

3歳騙馬、J.A. Janse van Vuuren厩舎、Gavin Lerena騎乗、MR122、斤量53.5kg

G3 Greenlight Sで2着の実績がある。前走はG1 Daily News 2000で3着だが、勝ったGreen With Envyや2着のFlag Manとはやや差があった。

父GimmethegreenlightはMore Than Ready産駒のオーストラリア産馬で、南アフリカに輸入されて現役生活を送った。G1 Queen's Plateを勝つなどマイル戦を中心に活躍し、引退後に種牡馬入りすると多くのG1馬を出して二度リーディングサイアーを獲得した。現在の南アフリカで最高の種牡馬である。

Without Question: The United States - Siena's Star by Argonaut

4歳騙馬、Justin Snaith厩舎、Rachel Venniker騎乗、MR120、斤量54.5kg

今年はCape Town Metで3着に入っているが、それ以外はさっぱりである。

父The United Statesはその父Galileo、その母Beauty Is Truthという良血馬。全妹にHydrangeaHermosaがおり、The United States自身はオーストラリアでその現役キャリアの過半を過ごしてG1勝ちを果たしている。引退後に南アフリカ種牡馬入りとなった。

4歳騙馬、Justin Snaith厩舎、Richard Fourie騎乗、MR110、斤量54kg

今シーズン台頭してきた4歳馬。2500mのG3 Glorious Goodwood Hを勝っており、前走はG2 World Sports Betting 1900を勝った。ここがG1初出走であり、レートも低いことから斤量に恵まれている。

母系は1-k Majorcaのファミリーで南アフリカでコンスタントにG1馬を出している。

Green With Envy: Gimmethegreenlight - Miss Coco by Galileo

3歳牡馬、Dean Kannemeyer厩舎、Craig Zackey騎乗、MR127、斤量56kg

Cape Derbyの勝ち馬で前走G1 Daily News 2000を勝って4連勝中。

母系はCarpet Slipperからの流れに属する5-h族。近親にはAmerican Oaksを勝ったRhea Moonが出ている。母Miss Cocoはアイルランド産馬でDavid Wachman厩舎から3歳の5月に11.5F戦でデビュー勝ちをしているが、キャリアはその1戦のみである。

Shoemaker: Gimmethegreenlight - Moggytwoshoes by Mogok

4歳騙馬、Mike de Kock厩舎、Diego De Couveia騎乗、MR111、斤量54kg

オープン勝ちまで。3歳で重賞2着の実績はあるが、近走はさっぱりである。

近親に現3歳の活躍馬Sandringham SummitやEden Roc、Regal Ransomが出ている。

Aragosta: Rafeef - Miss Galidora by Galileo

5歳騙馬、Mike de Kock厩舎、Marco V'Rensburg騎乗、MR116、斤量54kg

2022年のSA Derby勝ち馬で、2500m程度の距離を得意とするステイヤー。前走は2500mのG3 Tabgold Derbyを2着。Derbyと名乗るレースだが、古馬に解放されている。

父Rafeefはオーストラリア産馬でその父はRedoute's Choice。南アフリカのスプリントG1馬でイギリスのG1 Nunthorpe Sで2着になったこともあるNational Colourが引退後にオーストラリアで繁殖生活に入って産んでのがRafeefで、自身の現役は南アフリカで過ごし、スプリント路線で活躍してG1も勝っている。引退後は南アフリカのRidgemont Highlandsで種牡馬入りし、初年度リーディングを獲得して出だしは好調である。産駒は自身と同じくスプリンターが多く出ているが、Aragostaは母父Galileoの影響によるものか長いところを得意としている。

Purple Pitcher: New Predator - Heliantha by Count Dubois

3歳牡馬、Robyn Klaasen厩舎、Philasande Mxoli騎乗、MR120、斤量53kg

G2 Gauteng Guineasこそ4着に敗れたが、SA Classic、SA Derbyを勝ったTurffonteinの二冠馬。

父New Predatorはオーストラリア産馬でその父がNew Approach。南アフリカで現役を送り、マイラーとして活躍した。

母系は南アフリカに土着した1-m族で、イタリアのGiuseppe De Montelの手が入っており、Niccolo Dell’ArcaとOrtelloの美しい組み合わせになる牝馬Miazzinaが輸入されて南アフリカでのファミリーが創始された。Purple Pitcherはその中でも最大のFiorellaの分岐に属している。

Winchester Mansion: Trippi - Sea Point by Spectrum

5歳騙馬、Brett Crawford厩舎、Kabelo Matsunyane騎乗、MR124、斤量56.5kg

去年の勝ち馬。今シーズンはTurffonteinで3戦して未勝利。Summer Cupでは8着に終わっているが、前走のChampions ChallengeはRoyal Victoryの2着に復調してきた。

父TrippiはEnd Sweepアメリカに残した代表産駒の一角でフロリダで種牡馬入りしていたが、2008年に南アフリカに渡った。南アフリカではInaraやJet Dark、Charles Dickensを出す有力な種牡馬として活躍を続けている。

母系はニュージーランドから南アフリカに入った3-n族。半兄Sand And Seaを初めとして近親に多くの活躍馬が出ており、特に短距離での活躍が目立つ。

See It Again: Twice Over - Supreme Vision by Visionaire

4歳牡馬、Michael Roberts厩舎、Piere Strydom騎乗、MR131、斤量60kg

レート131で古馬でもっとも高い数値を持っており、60kgを背負うことになった。

去年はCape Derbyを勝つとTruffonteinには向かわず、GreyvilleのG2 World Sports Betting Guineasで2着、G1 Daily News 2000勝ちという臨戦で一番人気に支持されたが、軽斤量のWinchester Mansionの2着に敗れた。その後のChampions Cupでも2着となって3歳シーズンを終えている。

古馬となった今シーズンはケープタウンで始動し、G2 Green Point Sを勝ったものの、G1 King's Plateでは同世代のライバルCharles Dickensの2着、G1 Cape Town Metを4着、ダーバンに来てからG1 Gold Challengeを3着と少し成績が振るわない。レートも132から落として131でこのレースを迎えることになった。

60kgが堪えるタイプでもないが。得意とするはずの2000m戦でCape Town Metが4着だったのは気になる。

父Twice OverはObservatoryの産駒でJuddmonte Farmの生産馬である。Champion Sを連覇するなどイギリスでG1を4勝、2010年には欧州の古馬チャンピオンに選出された。引退後に南アフリカのDrakenstein Studが導入して種牡馬となった。これまでにSand And Sea、Do It Again、Double Superlative、See It AgainがG1を勝っている。

母系は3-o族。南アフリカで名牝DancewiththedevilやDurban Julyを2勝したDo It Againを出している。本馬はDo It Againの甥で、父はどちらもTwice OverとDo It Againを強く意識した配合である。

Oriental Charm: Vercingetorix - Souk by Greys Inn

3歳牡馬、Brett Crawford厩舎、Juan Paul V'D Merwe騎乗、MR121、斤量53kg

今シーズンになってケープタウンでデビューして2勝を挙げている。G1 Cape Derbyは3着だった。その後ダーバンの開催に出てきて、G2 World Sports Betting 1900を2着し、G3 Dolphins Cup Trialを勝った。

父VercingetorixはSilvanoの産駒で、G1 Daily News 2000の勝ち馬である。Maktoum家の持ち馬としてドバイでも出走し、2014年にはG1 Jebel Hattaを勝ってDubai Duty Freeではジャスタウェイの2着という実績を残した。2015年もドバイ開催での有力馬と見られていたが、Jebel Hattaのレース中に故障を発症し、そのまま引退して南アフリカ種牡馬入りした。現在では一線級のサラブレッドを出せる唯一のNijinsky直系種牡馬である。

母系は2-d族でYou're My Ladyが南アフリカに導入されたものである。このYou're My LadyはRazyanaの半姉でDanehillの伯母にあたる。Maine Chance Farmによって導入され、Oppenheimer家のMauritzfontein FarmからSA Derby勝ちのBouquet-Garniを出している他、オーストラリアに渡った分岐からVictoria Derbyなどを勝つAce Highが出た。

Oriental CharmはBouquet-Garniの同族で、母父にGreys Innが入っている。Greys InnはBridget Oppenheimerの生産所有で、Zabeelを父とするアメリカ産馬という特異的なバックボーンを有していた。そのレースキャリアもまた複雑で、南アフリカでデビューすると3歳でDurban Julyを含むG1を3勝し、古馬になると舞台をドバイやオーストラリアに替えた。ドバイでは良い結果を出したものの、オーストラリアでは散々な結果に終わっている。引退後に南アフリカに戻って種牡馬入りし、その代表産駒は2シーズンに渡り古馬路線を支えたLegal Eagleである。

Son Of Raj: Duke Of Marmalaede - Freudiana by Black Minnaloushe

4歳騙馬、Tony Peter厩舎、Calvin Habib騎乗、MR119、斤量54kg

去年のSA Derby馬だがその後は未勝利。

Duke Of MarmalaedeはDanehillのラストクロップで古馬になって開花しG1を5連勝した欧州の中距離チャンピオン。引退後は種牡馬として高い期待をかけられたものの種牡馬としても出足が悪く早々にCoolmoreから放出され南アフリカに輸入された。南アフリカでも苦戦していたが牝馬三冠のRain In Hollandを出している。

Meridius: Canford Cliffs - Zili by Parade Leader

4歳騙馬、Tony Peter厩舎、Athandiwe Mgudlwa騎乗、MR113、斤量54kg

重賞クラスでの実績はさっぱりだったが、前走でTurffonteinのG3 Jubilee Sを勝った。

Canford CliffsはStop The Musicの直系で、G1を5勝したマイラーであった。引退後はCoolmoreで種牡馬入りし、欧州でその直系を繋ぐことを期待されたがうまくいかなかった。Meridiusは南アフリカでの初年度産駒である。

母系は20世紀初頭に輸入されたChilderi以降土着した2-f族。母の半兄ZeenoがG1を勝っている。

Master Redoute: Querari - Lady Redoute by Redoute's Choice

5歳騙馬、Andre Nel厩舎、Corne Oriffer騎乗、MR115、斤量54kg

2800mのG3 Cape Stayers Sを勝っているが、南アフリカの長距離戦の結果はあてにできない。

父QuerariはドイツのGestut Fahrhofの生産馬でOasis Dream産駒ながら中距離で活躍し、イタリアのG1 Premio Presidente Repubblicaを勝った。南アフリカでスプリンターやマイラーを多く出す種牡馬として活躍している。

母系はニュージーランドに由来する3-b族で祖母Macedon LadyはオーストラリアのG1 Thousand Guineasの勝ち馬である。

Cousin Casey: Vercingetorix - Bretton Woods by Casey Tibbs

4歳牡馬、Sean Tarry厩舎、S'Manga Khumalo騎乗、MR123、斤量56kg

前走Gold Challengeの2着馬。キャリアを考えると2000m級のレースでは厳しい。

父はVercingetorix。南アフリカも良血馬でなければ去勢されるケースが多くなっているが、Cousin Caseyは母の全兄にBig City Lifeがいることもあってか、去勢されていない。

その伯父Big City Lifeは3歳でG1を3勝、2009年のDurban Julyを勝って当時の最強馬Pocket Powerの時代を終わらせたが、古馬になってからは不振に陥ってG1はGold Challengeの1勝にとどまった。2011年のDurban Julyの直線で予後不良となる骨折を発症し、その生涯を終えている。

19世紀末からアルゼンチンに土着していた17-b族を輸入したファミリーで、祖母Dollar CrisisはCasey Tibbsとの間にG1馬Big City Life、重賞馬Cash Registerを出している。母Bretton Woodsは未勝利で引退し、繁殖としては本馬の他、Bold Silvanoを父としてKlever Katheyがブラックタイプとなっていることから、Silvanoとの相性はよさそうである。

Double Superlative: Twice Over - Come Fly With Me by Jet Master

5歳牡馬、Justin Snaith厩舎、Daniel Muscutt騎乗、MR124、斤量56.5kg

今年のG1 Cape Town Metの勝ち馬。

父Twice Overは欧州の古馬チャンピオンで南アフリカ種牡馬入りし、Do It AgainやSee It Againなどを出す有力な種牡馬として活躍している。

母Come Fly With Meは重賞クラスで活躍したスプリンターで、その全姉はG1 Mercury Sprintを勝ったスプリンターのFly By Nightである。

Flag Man: Flying The Flag - Irresistable Chris by Mark Of Esteem

3歳騙馬、G van Zyl Jr.厩舎、Serino Moodley騎乗、MR126、斤量55.5kg

3連勝で挑んだG1 Daily News 2000で2着の上り馬。

父Flying The Flagはその父Galileo、その母Halfway To Heavenという良血馬で自身もG3勝ちの実績を有していた。現役中にMary Slackとその実家であるMauritzfonteinによって南アフリカに移籍し、引退後はそのまま種牡馬入りとなっている。

母Irresistable Chrisはブラジルからの輸入馬で南アフリカで現役として走って1勝を挙げている。伯父がDurban Julyの勝ち馬Eyeofthetigerである。

Future Pearl: Futura - Arabian Pearl by Al Mufti

4歳騙馬、Sean Tarry厩舎、Grant Van Niekerk騎乗、MR117、斤量54kg

3000m級のG3で3勝しているステイヤーで、前走はGreyvilleの2400m Tabgold Derbyを勝ってきた。

FuturaはDynasty産駒で2014/15シーズンの南アフリカ年度代表馬。これまで産駒にG1馬は出ておらずFuture Learlが活躍馬の筆頭である。

母系は19世紀末に南アフリカに輸入された6号族のMrs. Vealを基点とした南アフリカの土着牝系で多くの活躍馬を出している。特に近いところではGimme A Princeやその母Real PrincessとWilliam Longswordの姉弟がいる。