King George VI And Queen Elizabeth S: G1 Ascot Turf 11F211yd

今年は3歳のクラシック路線上位勢が回避してしまったので古馬の争い。そんな中で去年のこのレースを最下位に吹っ飛んだAuguste Rodinが今年も一番人気を被る状況なのはそれでいいのかと思わなくもない。今年の実績にしたところでDubai Sheema Classicで最下位になっているし、その時に勝ったRebel's Romanceが出走してきているにも関わらずである。ある意味この人気が凄い。

O'Brien厩舎からはLuxembourgとContinuous、Point Londsdaleがエントリーを残し、Hans Andersenはペースセッターを務めるかといったところで、いつも通りO'Brien厩舎勢の動向によってレースの状況が大きく変わってきそうなのだが、ギリギリまで確定しないのが困る。

今年もあちこち飛び回っているRebel's Romanceはドバイから香港とG1を積み上げている。Emily Upjohnは回避したが、前走のPretty Polly SでEmily Upjohnを下したBluestockingが出走してくる。またDubai Honourは前走で2400mのG1を勝ったが、Saint-Cloudなのでここをこなせるかと言われると怪しい。

3歳馬から唯一の出走となるのはDavid Menuisier厩舎所属ながらフランスでキャリアを積んできたSunway。Prix Du Jockey Clubの7着馬で、前走のIrish Derbyは2着でクラシックディスタンスへの対応を証明した。他のクラシック路線の上位馬はEpsom DerbyのCity Of Troyとその2着馬Ambiente Friendlyがここを回避して来月のInternational Sへの出走が有力視される状況である。Irish Derbyで3着になったAmbiente Friendlyのレース内容からこの2頭はややスピードよりと考えられているようだ。Epsom Derbyの3着馬でIrish Derbyを勝ったLos Angelesはスタミナがあり長距離向きとしてSt. Legerの本命馬とみなされている。O'Brien厩舎ということもあって、ここは早い段階でエントリーを下げた。

Auguste Rodin: Deep Impact - Rhododendron by Galileo

O'Brien厩舎の大将格にして現役屈指のネタ馬になりつつある。

今年はドバイに行ってSheema Classicで最下位、欧州に戻ってきてもTattersalls Gold CupではWhite Birchに負けて2着と良くない結果だったが、前走のPrince Of Wales's Sでようやくの勝利。古馬になってもトップを名乗る資格があることを示して見せた。キングジョージは去年最下位の10着に終わった舞台であり、もう一度走るというのなら12Fのタフなレースをしっかりこなせるところを見せなければならないといったところか。英愛のDerbyに加えてBC Turfまで勝っている馬に対して何を言っているのかという気がしなくもないが、レース結果に一貫性がなく負けるときは完全に別馬のパフォーマンスになってしまうので、基本的には強い方が来るとはいえ今回はどっちで来るのかということが注目されてしまっている。一応陣営からは対処法が分かったようなコメントはあるが本当だろうか。

このレースの結果はともかくとして、目下の注目はCity Of Troyとの直接対決があるのかどうか。どちらかはBC Classicに行くだろうから、可能性があるのはIrish Champion Sになるのだが、City Of TroyがInternational Sならその線も薄くなるか。まあBC開催なら、Auguste RodinをTurf、City Of TroyをClassicにしてLuxembourgを便利屋的な立場に置くのが妥当なラインに思え、あとはLos Angelesがこのレベルに来たらいよいよ面白そうではある。

Rebel's Romance: Dubawi - Minidress by Street Cry

ゴドルフィンの2400mエース。

2022年にドイツでGrosser Preis Von BerlinとPreis Von Europaを連勝してBC Turfまで勝ったのだから弱いわけではないが、去年が一転して不振でJoe Hirsch Turf ClassicではWar Like Goddessの4着に敗れてBC Turfに出走すらできなかった。

その後Kemptonのオールウェザーを一叩きすると、今年になってからはカタールのAmir Trophy、ドバイのSheema Classic、香港のChampions And Chater Cupと三連勝。とにかく2400m戦での強さは見せたが、相手がトップレベルだったのはSheema Classicくらいで、キングジョージを勝っておきたいところ。こっちはこっちでイギリスの芝を走るのはだいたい2年振りとなるし、欧州の芝G1としてもドイツの2戦以来となるので、人気にしづらいところはある。

母Minidressは今年G1を2勝しているMeasured Timeも出しており、一躍名繁殖という風。近親にはヴィクトワールピサアサクサデンエン兄弟やローブティサージュが出ている。祖母Short Skirtの半姉がWhitewater AffairやRich Affairである。

Bluestocking: Camelot - Emulous by Dansili

Judmmonteの4歳牝馬

去年は少し出てくるのが遅く、AscotのRibblesdale Sを3着からアイルランドに向かいIrish Oaksを2着。Yorkshire Oaksで4着がありつつ、シーズンの終わりにBritish Champions Fillies And Maresを2着という結果で勝ちきれないところもあった。今年はYorkのMiddleton Fillies Sを勝つと前走のPretty Polly SではEmily Upjohnを下してG1勝ちとなった。出走馬中で一番まともなキャリアを歩んでいるように思うが、牡馬のトップどころと12Fで勝負というのはまだ荷が重いかもしれない。

Juddmonte Farmのオーナーブリードで母AmulousもG1勝ち、近親にはMandalounを持つ。CamelotDanzig全般に相性が良さそうだが、Danehillが来ると別格でさらにMr. Prospectorクロスでもう一役追加といったイメージである。

Luxembourg: Camelot - Attire by Danehill Dancer

O'Brien厩舎を代表する5歳馬。

2歳から毎年G1を勝って4勝しているが、去年の後半はAuguste Rodinだったり香港に行ってみたらRomantic Warriorだったりとさらに上の才能にねじ伏せられた印象はあった。Irish Champion Sを勝つなど10Fがメインかと思っていたが、今年はCoronation Cupで12Fのタイトルを手にしている。

強いのは強いが、Mostahdafに完敗したり中東遠征が完全に裏目に出るなどいまいち突き抜けた印象がない。ここもAuguste Rodinのバックアップとも見えるような立ち位置で、スクラッチするんではなかろうか。したとして代わりに出るレースはありそうでないのだけど。

母系はWildensteinの名系で、Sangster家による生産馬。

Continuous: Heart's Cry - Fluff by Galileo

去年St. Leger Sを勝ったが、そこから凱旋門賞に出走して5着。ステイヤーというより12Fのクラシックランナーっぽさはある。今年はAscotのHardwicke Sに出走して5着。もう少しはやれそうだが、強力なメンバー相手では見劣りがする。

勝てるかどうかより、どこまで通用するかを測るために出てくるのはありと思える。

母FluffはMaybeの全妹で、本馬自身の従兄にSaxon Warrior。

Dubai Honour: Pride Of Dubai - Mondelice by Montjeu

欧州のG1では足りないところがあり去年はシドニーの秋開催に遠征し、2000mのRanvet SとQueen Elizabeth Sを連勝したが、香港ではRomantic Warriorらに跳ね返され3着で、その後のシーズンでもEclipse SとChampions Sに出走してやはり及ばないという結果だった。今年はKemptonで一叩きして香港に遠征するも7着と悪化している。ところが欧州に戻ってくるとフランスでGrand Prix De Chantillyを3着からGrand Prix De Saint-Cloudを勝った。同レースで下したのがIresine、Feed The Flame、Point Londsdaleといったあたりでそこまで自信を持てるとは思えないが、とにかく2400mもこなしたということではあろう。

オーストラリアで短距離を得意とする産駒が多いPride Of Dubaiだが、Sadler's Wellsの影響が強いと距離をこなしてくる。Dubai Honourは母父がスタミナ寄りのMontjeuで、Montjeuが入ったときにスピードを補うミスプロを祖母の父Kingmamboから、三代母のDamsonは早熟のスピード馬でSadler's Wells×Darshaanという基本構成が見えることを考えるとかなりの良血統。

Sunway: Galiway - Kensea by Kendargent

出走予定で唯一の3歳馬であるが、実績はやや不足。そのキャリアや周辺状況がフランスを中心としたものであることも影響してか人気が薄い。そもそもなぜイギリスの厩舎に預けたのかというレベル。

2歳のCriterium Internationalを勝っているものの評価は高くなかった。クラシックでもフランスでPrix Du Jockey Clubを7着と見るものはなかったが、Irish Derbyは2着と一気に上げてきた。スタミナがあり、Ambiente Friendlyを3着に下したことを評価されている。12Fの速い馬場をこなしたことで陣営は自信を持っているようだ。

全兄がG1を2勝しているSealiway。オーナーブリーダーのGuy ParienteはKendargentのオーナーであり、代表産駒のSkalettiを始めとしてその上位産駒の多くに関与する生産者である。母Kenseaもそうした生産馬でリステッド勝ちまで出世して引退した。近親に目立った活躍馬はなく、フランスでも一流から一枚落ちといった種牡馬を使われてきた牝系となるが、Galiwayと続けて配されG1馬が2頭出たのだから大成功といってよい。

その父GaliwayはWertheimerのオーナーブリードで半兄にSilent NameやSaltoを持つ血統である。リステッド勝ちでG3入着という程度の実績ながら父Galileoの後継種牡馬と期待されフランスはノルマンディーにあるHaras De Collevilleで種牡馬入りした。Guy Parienteに重用されており、同じくHaras De Collevilleに繋養されているという事情もあって母父Kendargentとの組み合わせが異常値といってよいほどの結果を出している。SealiwayとSunwayに加えてKenway、Rubis Vendomeが重賞を勝っており、全てGuy Parienteの生産馬である。そしてこれはGaliwayの重賞馬8頭中の半数を占める。血統要因によるニックではなく環境要因によるものだと思われるが、これら産駒の活躍のおかげで今ではGaliwayの種付け料が30000ユーロに達し、これはTeofiloやChurchillと同額、種付け料だけで見るとGalileo直仔種牡馬としては2番手グループに位置する。もっともトップはこれの10倍以上だが。

Middle Earth: Roaring Lion - Roheryn by Galileo

4歳馬。Gosden厩舎。

去年は長距離路線に向かい、St. Legerは7着に終わるが、その後Ascotで14FのListed Noel Murless Sを勝った。今年は12F路線でNewburyのG3 Aston Park Sを勝って、AscotのG2 Hardwicke Sでは3着。上位にはまだ少し差がありそう。

産駒一世代のみを残し、種牡馬入り初年度にシャトル先のニュージーランドで4歳の若さで世を去った欧州年度代表馬Roaring Lionの代表産駒となっている。

母Roherynは12Fの活躍馬でその産駒にはBuckaroo(2019 by Fastnet Rock)が出ている。コンスタントに重賞クラスを出している16号族の牝系で、Ten Sovereignsやペプチドナイルの同族にあたる。

Goliath: Adlerflug - Gouache by Shamardal

ドイツ産の4歳馬。

Ullmann男爵の所有馬としてフランスで走り、3歳はデビューから三連勝してListedのGrand Prix De Clairefontaineを勝った。今年はG3 Prix D'Hedouvilleを勝ち、前走はAscotに遠征してG2 Hardwicke Sで2着と順調にステージを上げてG1挑戦となった。

Schlenderhanの生産でGのイニシャルということで22-d族の名牝系がドイツに導入されたもの。Guadalupeが三代母と世代の進展が早い。

Point Lonsdale: Australia - Sweepstake by Acclamation

5歳馬。去年の後半からはO'Brien厩舎のペースセッターとして出走することも多くなっている。シーズンオフの中東遠征ではG2 Bahrain International Trophyが3着、G3 The Amir Trophyが11着と結果を残せず、Auguste Rodinが飛んだSheema Classicは6着だった。戻ってきてG3 Ormonde Sを勝ったが、前走はGrand Prix De Saint-Cloudで3着。R. Mooreが乗ってちゃんと走ってDubai Honourに負けたのでは厳しい。

Hans Andersen: Frankel - Shadow Hunter by Arcano

O'Brien厩舎の4歳馬。今年は中距離G1でペースセッターの役割を振られており、Tattersalls Gold Cup、Prince Of Wales's S、Eclipse Sに出走した。