Preakness S: G1 Pimlico Dirt 9.5F

Kentucky Derbyからの臨戦は勝ち馬Mystik Dan、4着Catching Freedom、17着Just Steelの3頭のみ。エントリーが9頭なので1/3なのをどう判断するかはそれぞれだろうが、三冠路線とは言ってもKentucky Derbyの価値が他の2戦と隔絶しており、Kentucky Derbyが終わった時点で勝ち馬以外には意味がなくなるというのはちょっとどうかと思うところ。Mystik Danは当然出走するものとして、上位からCatching Freedomが出てくれて良かったというような状況である。

Baffert厩舎に所属していてKentucky Derbyに出走できなかったMuthとImaginationが出走してくる。…はずだったのだが、Santa Anitaで追い切ったあと、カリフォルニアからピムリコまで輸送したらMuthは発熱が見られるということで回避になってしまった。どちらも本来のポイントであればKentucky Derbyに出走できる実績を持っている。特にMuthはBC Juvenileで2着から3歳の2戦は軽くクリアしこの世代でもトップを争う実力と目されているので、Mystik DanとしてはここでMuthを倒さなければという一戦だっただけに残念である。

最終プレップでポイントを積めず路線から脱落して直接Preakness Sに回ってきたのがMugatu、Uncle Heavy、Tuscan Goldの3頭で、中一週になるKentucky Derby出走組に対して日程で優位だが、上がり目を期待するのであればTuscan Goldだろう。MugatuとUncle Heavyはいずれもプレップの内容は良くなく期待できない。

Seize The Greyも最終プレップでポイントが取れなかったが、Kentucky Derby当日のG2 Pat Day Mileに出走してこれを勝った。ただ、レース間隔はKentucky Derby出走馬と同じになるのでやはり厳しい。

Mugatu: Blofeld - Union Way by Union Rags

J. Engler厩舎。キャリア12戦、勝ち上がりに5戦を要し、その後アローワンス戦に出走するも勝てないまま。重賞経験は前走のG1 Blue Grass Sで5着があるだけ。Blue Grass Sは最後尾から追い込んできたものだが、脱落した馬を交わしていっただけに見える。

本馬はケンタッキー産馬だが、父のBlofeldはQuality Road産駒のG2勝ち馬としてメリーランドのMurmur Farmsで種牡馬入りとなっているあたりで察してくださいというレベル。

Uncle Heavy: Social Inclusion - Expect Wonderful by Tiz Wonderful

R.E. Reid Jr.厩舎。5戦3勝のペンシルベニア産馬。AqueductのG2 Withers Sの勝ち馬で、前走はG2 Wood Memorial Sで5着だが、スタートで少し遅れて最後に順位を上げただけのレースだった。

父Social Inculusionはフロリダとペンシルベニアを行き来している種牡馬で、ペンシルベニアのDiamond B Farmにいた時の産駒になる。

Catching Freedom: Constitution - Catch My Drift by Pioneerof The Nile

B.H. Cox厩舎。6戦3勝、G2 Louisiana Derbyの勝ち馬で、前走のKentucky DerbySierra LeoneとForever Youngの激闘を見る位置にいた4着馬。G2 Risen Star SではSierra LeoneとTrack Phantomに次ぐ3着で、3歳路線の上位馬と言ってよいだろう。

Louisiana DerbyはG2ながら距離は9.5Fに総賞金は100万ドルで、過去の勝ち馬にはEpicenter、Hot Rod Charlie、Gun Runnerなどが名を連ねる重要なレースとなっている。今年はLouisiana DerbyからCatching Freedom、Honor Marie、Track Phantomの3頭がKentucky Derbyに出走して、それぞれ4着、8着、11着であった。

マイナーな42号族のうち、April Viewに連なるファミリー。母Catch My DriftがG1 Beldame Sで3着に入るなどした活躍馬である。

Muth: Good Magic - Hoppa by Uncle Mo

B. Baffert厩舎。輸送後に発熱症状を示したため回避となった。一応用意していた部分で紹介は残しておく。

6戦4勝でBC Juvenileの2着馬。今年はG2 San Vicente SとG1 Arkansas Derbyを勝って2戦2勝。本来ならChurchill Downsに現れて一番人気を争う立場だったが、陣営が出禁を食らっているためスキップして予定通りにこちらに回る予定だった。

Muthは2歳のときもSaratogaのHopeful Sを回避しており、若干身体の弱さのような側面があるのかもしれない。陣営によると今回の輸送はロサンゼルスからニューアークまで航空便を使いそこから陸路でボルチモアという行程で18時間を要したらしく、西海岸から遠征することの過酷さが出たような印象である。

疑いなく西海岸のトップホースで、最終プレップのArkansas DerbyではJust SteelとMystik Danを相手にしない快勝だった。Kentucky Derbyに出られなかったことが本当にもったいないが、土壇場で裁判所を使ってどうこうしようというのが無理目だったわけで陣営がなあと言わざるを得ない。

父Good MagicはCurlin産駒の新鋭種牡馬で、現役時代は自身もBC JuvenileとG1 Haskell Invitational Sを勝ってG1を2勝。Kentucky Derbyは2着という実績馬である。初年度産駒からKentucky Derby勝ちのMageに加えて、Blazing SevensとReincarnateを出し、2年目にもMuthとDornoch、Society Manを出しており、この路線に極めて適した種牡馬といえる。産駒の配合傾向はMr. Prospectorのクロスを継続して持つことがほぼ必須といえ、Muthの場合は祖母の父Tale Of The CatからMr. Prospectorを引いている。

Mystik Dan: Goldencents - Ma'am by Colonel John

K.G. McPeek厩舎。7戦3勝のKentucky Derby馬。プレップではArkansas Derbyを選択していて3着とMuthには完敗の様相であった。ここでMuthと再戦となる予定だったが、モーニングラインでは1番人気がMuthで少し差がある2番人気に評価されていた。Muthがいなくなったら一本被りになるのは避けられない状況だろう。

Kentucky Derbyは内をこじ開けるようにして直線で先頭に立ち、外から馬体をぶつけ合いながら迫るSierra LeoneとForever Youngにハナ差、ハナ差でしのぎ切った。自ら最内の進路を確保した地力はあるし、殺到する追い込み勢から唯一逃げ切ったことは評価できる反面、やはり多頭数ゆえの展開という印象もある結果だった。

母系は北米競馬初期から土着した大ファミリーの4-r族で、近親にLaraghやSiphonicを持ち、祖母のLady SiphonicaはSiphonicの全妹である。また同族にワグネリアンサクセスブロッケンが出ている。

父GoldencentsはBC Dirt Mileを連覇した他、スプリントでも実績を残したスピードを持っている。今や大種牡馬となったInto Mischiefの最初の活躍馬で、Into Mischiefが種牡馬としての地歩を築いたのはほぼ彼の活躍によるものである。

Seize The Grey: Arrogate - Smart Shopping by Smart Strike

D.W. Lukas厩舎。9戦3勝。

Blue Grass Sに出走して7着に終わり、Kentucky Derby当日のG2 Pat Day Mileに出走してこれを勝った。Pat Day Mileは過去にJackie's WarriorやJack Christopherが勝っており、ここから短距離路線、こなしてマイルまでといった方向性の馬のレースであることは間違いない。去年もGun Pilotが出走しているくらいである。今年のレースは最後は脚がない状態で勝ち時計もラップタイムも含めてレースの評価は低い。

8-h族のLady Be GoodからImpishの流れに属するファミリーで5代前でLady Be Goodが出てくるくらいに血統の更新が緩やか。祖母のきょうだいにMiss ShopやTrappe Shot、母の半兄はSanta Anitaで2歳G1勝ちのPower Broker、同じく半弟にジャスパーグレイトが出ている。

Seize The GreyはArrogateの3年目、つまりは最終産駒である。Arrogate産駒全体としても牡馬ではArcangeloとCave Rockに次ぐ実績となっており、Cave Rockが亡くなっている現状では種牡馬への期待が高い馬ではあろう。

Just Steel: Justify - Irish Lights by Fastnet Rock

D.W. Lukas厩舎。12戦2勝だが、Arkansas Derbyの2着がある。G2 Rebel Sでは7着、更に前のG3 Southwest Sが2着と結果に波が大きい。もっとも出色のレースはArkansas Derbyのみで、Southwest Sでは馬場が悪かったとはいえ当時のMystik Danに直線で突き放され8馬身差を付けられる有様であった。Kentucky Derbyでは序盤でTrack Phantomと先行を競ったが先に後退し、17着に大敗した。

アメリカの4号族として4-rと並び立つ4-m族である。中でもPortageのファミリーに属する良血馬。祖母Aspen Fallsがオーストラリアに送られ、Fastnet Rockを父として産まれたIrish LightsはCaulfieldのG1 Thousand Guineasを勝った。Justifyに対してはHennessyNijinskyのクロスが成立し、Nijinskyの経路にRoyal AcademyがあるのでStorm Catに連動する。

Tuscan Gold: Medaglia D'Oro - Valadorna by Curlin

C.C. Brown厩舎。3戦1勝だが、G2 Louisiana Derbyで3着の実績がある。

Just Steelと同じく4-m族だが、ややマイナーなファミリーである。母ValadornaはBC Juvenile Filliesで2着の実績があり、その半弟にComplexityが出ている。

Imagination: Into Mischief - Magical Feeling by Empire Maker

B. Baffert厩舎。6戦2勝でSanta Anita Derbyの2着馬。前々走のG2 San Felipe SからL. Dettoriのお手馬となっている。

近親にNational Treasureなどがでる4-c族。National TreasureやNewgate、Prince Of Monaco、Reincarnateを所有するSF Racingのシンジケートが所有する。