New Zealand Report of the Graded Stakes Committee 2010

毎年恒例のブツを読んだ。こういうものを読んでいるときがもしかしたら一番楽しいかも知れん。だからガチ海外競馬派とか勘違いされてしまうのだろうけど。
この辺に落ちている。
NZ Racing Schedules & Reports

位置づけ

これ自体を取り上げるのは初めてなので一応ベタに説明部分から。いつものように綺麗な訳ではないけど。

Graded Stakes Committee(GSC)はNew Zealand Thoroughbred Racing(NZTR)とNew Zealand Thoroughbred Breeders' Association(NZTBA)から組織される。メンバーは8名で、議長はNZTBAとの協議に基づいてNZTRから指名される。3名がNZTRから、同じく3名がNZTBAから出席し、残りの1名はオークション会社を代表する立場から選ばれる。毎年12月にメンバーが選出され、任期は1年間となっている。通常6月第3週、レースシーズン終了後、11月と年間3回の会合を開き、レースシーズン終了後の会合でAnnual Reportが作成される。
このGraded Stakes Committeeで作成されたブラックタイプリストはAsian Racing Foundation(ARF)を通じてInternational Grading and Race Planning Advisory Committee(IRPAC)に提出される。IRPACは2007年以降International Cataloguing Standards Committee(ICSC)に代わりBlue Bookを発行する役割を担っている。
GSCはNZTR及びNZTBAからは独立しており、ブラックタイプリストをIRPACに提出するにあたり、両者の承認を必要としない。

http://www.nzracing.co.nz/Downloads/Graded%20Stakes%20Annual%20Report%202010.pdf

ニュージーランドの重賞格付けをしたり、ステークススケジュールを承認するのが主なお仕事。

ブラックタイプレース構成

2009年のレポートでは以下の記述があり、この委員会の方向性を簡潔に示している感じがあるのでちょっと出す。

NZのレース体系上、更に3〜4レースのG1を降格させることが望ましい。
リステッドまで含めた上位レースのうち12%がG1、15%がG2、19%がG3、残り54%がリステッドという形が理想。実際にはまだG1が多すぎる。
ニュージーランド馬産はオーストラリア向けが中心の輸出が毎年40%程度を占める。このため、ニュージーランド競馬におけるブラックタイプ競争の価値が維持されなければならない。

http://www.nzracing.co.nz/Downloads/Graded%20Stakes%20annual%20report%202009_2010.pdf

で、2009-10シーズンのレース数を見ると、G1が22、G2が23、G3が33、リステッドが68で合計146。割合は15%、16%、23%、46%。
今回のレポートでは理想のグレード構成としてG1を12%、G2を15%、G3を23%とし、残り50%がリステッドと示されています。G3とリステッドの割合が微妙に変わっていますが、G1を3つ程度降格させる必要があるという部分には変更がありません。
ニュージーランドは生産頭数が4500頭にも届かない状況で、その上オーストラリアへの輸出がだいたい1500頭と大きな割合を占めますから、国内で走る馬が意外と少ないんですよね。だからまだG1が多いという話はそんなものかな的に。こういうやり方でブラックタイプの価値を高く保とうとしているからニュージーランド産馬がオーストラリアとかで通用するってのはあるのかな。
それを後押しするのがニュージーランド馬産とオーストラリア馬産での距離適応の微妙なズレ、生産コストの差と賞金格差です。だからJohn O'Shea調教師のようにニュージーランドステイヤーを買って、オーストラリアで使うというオペレーションが成立しています。Bart Cummings調教師が送り出したMelbourne Cup馬10頭の内7頭までもがニュージーランド産馬でもありますし、最近に始まった事ではないのですけれども。

2010-11シーズンの概略

2010-11 シーズンの平地ブラックタイプレースは145レースである。スケジュールが提出されたレースのうちCornwall Handicapがリストから除かれた。また、Whangarei Breeders' Sは現在の2歳戦から春開催の3歳戦に変更される予定であり、施行時期が7月から9月に移された。次回は2011年の9月に開催される予定である。これによって当該レースは2010-11シーズンのブラックタイプに含まれない。

http://www.nzracing.co.nz/Downloads/Graded%20Stakes%20Annual%20Report%202010.pdf

Avondale Jockey Clubの問題

財政危機のAvondale Jockey Clubは昨シーズンのレース日程終了後は調教施設のみが稼働している状況である。今シーズンのレース開催は行わず、3つのG2戦の開催を Auckland RCに譲渡し、それらはEllerslieで開催されることになった。すなわちConcorde Hを同条件の同時期に、Avondale Guineasを2100m、Avondale Cupをp2400mでどちらも2月に開催する。これに伴い3歳戦の施行時期/条件に変更があり、Auckland RC Championship Sは時期を1月初頭に変更、Great Northern Guineasは距離をかつての1600mに変更される。

http://www.nzracing.co.nz/Downloads/Graded%20Stakes%20Annual%20Report%202010.pdf

Avondale JCに認められた13日の開催のうち9日分は他場に振り分けられ、残る4日の帰属は未定。また、今シーズンはAuckland RCで開催する3重賞も、来シーズン以降の扱いは未定となっている。
ニュージーランドでは少し前にNZTRのチェアマンが17の競馬場を閉鎖売却して資金を得る計画が存在したとラジオで明らかにしたことが記事になっています。

レース格付けのシステム

最低賞金規定は以下の通り。

G1 200,000NZD
G2 85,000NZD
G3 70,000NZD
Listed 45,000NZD

2010/8/28追記
昨シーズンから変わっていないと思って数字をそのまま使ったら、間違ってました。G3の最低賞金が75,000から70,000に引き下げられています。

2010-11シーズンは2009-10シーズンからほぼ変化がなく、Cornwall HがListedから降格させられただけ。G1が22戦、G2が23戦、G3が33戦、Listedが67戦。
G1 レースのステータスでは2nd WarningがDarci Brahma International Sに対して発行された。一方で1st Warningを受けていたレースのうち、Zabeel Classic、New Zealand S、NZ Bloodstock Breeders' S、Railway Sはステータスを回復し、現在1st Warningを受けているのはLevin ClassicとCaptain Cook Sの2戦となっている。
2nd Warningを持っていると次で降格を喰らう可能性があります。1st Warningはその前段階。まあ1stだと付いたり消えたりなのでそれほど神経質になるものではないかも。2ndを喰らってたら怖いです。 Wellington CupとAvondale Gold CupがG2に落ちたのは2年前で、2nd Warningを喰らった次の年に降格処分でした。どちらも2005年に1st Warning発行、2006年が1st Warning維持、2007年に2nd Warning発行、2008年にG2降格。
ということでいつもはWarningの状況を見て、該当レースはどんなだったかと思い返すのが楽しいのですが、今年は派手さに乏しくやや残念ですね。派手にWarningが出ても困るでしょうが。
今年のレポートはHISTORYセクションが設けられ、ニュージーランドにおけるブラックタイプレースやグレード制受容の時系列に軽く触れられているので興味のある方は一読されると良いのではないでしょうかね。