イプラトロピウム

が日本の禁止薬物にリストされるとのこと。
なんか場当たり的対応という印象が拭えません。イプラトロピウム類似の気管支治療薬はどういう扱いにするんですかね。
で、JRA馬事部の伊藤幹副長のコメントが以下らしき。

イプラトロピウムは競走能力に影響を与える。明らかな禁止薬物。

ここまで言うんだったら、科学的な裏づけをきっちり取ってるんだろうな?
確かイプラトロピウムで競争能力は向上しないという論文が出ていたはずですので、それをひっくり返すだけのものが必要ですよ。データ取りましたでは足りませんよ。データを論文としてしかるべき学術誌に投稿してアクセプトされてようやく議論の舞台に上がれることになるんですが、それをちゃんとやってくれるんだろうな?
…とはいえ早急に決定と言ってる時点でそうではないとは思われます。JRAの幹部ですら欧州での禁止薬物の考え方について熟知していないということで良いですか?
イプラトロピウムについておさらい。未だにロクに調べもせず適当なことを書く人が目立つなあというところですので。
この化合物は抗コリン拮抗薬で、アセチルコリンを競争的に阻害して気管支の収縮を妨げます。
抗コリン拮抗薬としてはベラドンナアルカロイドであるアトロピンがありますが、アセチルコリンを阻害するということは副交感神経抑制作用を持つ事になるので、副作用の原因となります。アトロピンは作用の幅が広くさまざまな副作用の原因となっています。そこでアトロピンのターゲットを気管支に限定することを目的に開発されたのがイプラトロピウムとなります。硫酸アトロピンは禁止リストに入っていましたが、これはアトロピンが副交感神経を抑制して血圧や心拍の低下を抑えるという作用を表すからです。イプラトロピウムは気管支への選択性を強めているので、その種の副作用は問題にならないはずであり、事実、ヒトの禁止薬物リストにも入っていませんよ。
気管支拡張薬として書かれることもありますが、それはどちらかと言うとアドレナリン作動薬を指して使われるべき言葉かなと。