Dubai World Cup

今週末はオーストラリアはRosehillで秋のイースター開催、ドバイはMeydanでDWC開催、南アフリカはTurffonteinでSA Classic開催と大忙しです。ほぼ毎年重なりますけどね。イースターの都合でRosehillがちょっとずれたりしますけど、この時期のオーストラリアは毎週何かしらあるので大して変わりません。
さて、その中でも世界的に注目を集めるDubai World Cup開催の枠順が決定したので、とりあえずメインレースだけを取り上げます。

Dubai World Cup G1 Meydan Tapeta 2000m

去年のBreeders' Cup Classicの出走メンバーとその結果は北米の古馬メインストリームが低調であることを象徴しており、今年のドバイのメインレースに北米所属馬の参戦がないという事態を招きました。北米においてプレップの役割を担うDonn Hは去年まで芝重賞を走っていた5歳馬のLeaによるG1初勝利であり、Santa Anita HはGame On Dudeの復活となり、いずれも海を渡る遠征には踏み切りませんでした。そもそもMeydanでの開催となってからベタベタのダート馬が活躍できるレースではなくなっているということで北米の遠征モチベーションが低下している側面もあるでしょう。
結果としてRon The Greekが北米での実績が最上位のエントラントとして参戦する状況になっています。Ron The Greekはスクラッチを余儀なくされたBC Classicの直後にサウジアラビアのAbdullah国王に購入されて当地に移籍しました。彼の国ではWattaniと名を変えて出走していましたが、ドバイでは北米時代の馬名に戻して出走します。3歳でKentucky Derby Trailに一時顔を出した時から好きな馬で追いかけてはいたのですが、6歳にしてDubai World Cupの有力馬になるとは思わなかったよ。しかもBC Classicを超えるチャンスを迎えているとか全く想像の埒外です。おそらくはそうならないと思いますが、北米のダートG1のような要求をされるレースコンディションとなればRon The Greek以外に対応できる馬はいません。勝ったらRon The Greek、負けたらWattaniということにしますので皆様よろしくお願いいたします。
現地の前哨戦Maktoum Challenge Round 3を勝ったのはPrince Bishopです。もう何年も前からMeydanで出走していますが、今年良くなった理由は分かりません。むしろ今年は周りが弱いだけかなとも思えます。Dubai World CupにはVictoire Pisaが勝ったあの時から出走しており、去年はSheema Classicに回っていたため今年が3回目の出走です。
去年このレースで2着に入ったRed Cadeauxは各地を遠征し、天皇賞春3着、Melbourne Cup2着辺りが目立った実績で、Hong Kong Vaseでも4着に入っています。今年で8歳ですが、去年の香港までの結果を見る限り衰えている様子はなく、今年は去年より出走メンバーの質は落ちているので可能性はあるでしょう。
ダートでの実績ということになると日本から遠征した2頭Hokko TarumaeとBelshazzarに目が向くことになります。MeydanのTapetaは日本のダートと比較して軽く、スピードを要求されるのでここに対応できるかどうかでしょう。過去の結果を振り返っても芝の重賞でも勝負できるクラスの方が向いているのですよね。ですからいつまでもこのレースに日本からダートチャンピオンを連れて行くというのではダメなんでしょう。Victoire Pisaで勝ったのだから、その認識はもう持っていてもいいはずです。今年なら3歳の頃は芝で走っていたBelshazzarでどこまでやれるか。芝レースに出走経験がないHokko Tarumaeではきついかな。さらに今年に関して言えば去年から北米の古馬、3歳路線が低調なのははっきりしていましたので、こういう状況もある程度読めたのではないかなとも……なので次です。
香港からはHong Kong Derbyなどを勝っている地元の中距離最強馬であるAkeed MofeedとMilitary Attackの二枚看板がメインレースに参戦してきました。状況を考えると芝ではなくこちらに回ってくるというのは良い選択でしょう。
といったあたりで欧州側の芝馬としてはRuler Of The Worldの名前があります。ここまで来るとTapetaのサーフィスにフィットできるかどうか次第になりますが、Ruler Of The Worldが勝ったらLane's Endフェチの立場からは喜ばせていただくといった風で。オーナーの件は触れてくれるな。
オフィシャルレートではMilitary AttackとAkeed Mofeedが123で並んでトップで122のRuler Of The World、Mukhadram、Ron The Greekが続いています。
本当にこのメンツでDubai World Cupやっちゃうのかと問い詰めたい、割と本気で。

Meydan開催でのDubai World Cup上位馬

2010年にMeydanで開催されるようになってからの上位5頭をざっと振り返ってみます。

2010年: Gloria De Campaeo, Lizard’s Desire, Allybar, Gio Ponti, Mastery

Meydan初開催となった2010年はGloria De CampaeoがわずかにLizard's Desireを下して勝利しました。
Gloria De Campaeoは南米血統のブラジル産馬です。ブラジルでデビューしてキャリアを重ねており、当然このころは芝で走っています。フランスに移籍するとDIRCへの遠征を行い、Nad Al Sheba開催最終年ではWell Armedの2着に入っています。一方その後もSingapore Airline's International Cupを勝っており、芝とダートで実績を残していました。2010年もDIRCからの参戦で、MeydanではNad Al Shebaより安定した成績を残し、Maktoum Challenge Round 3ではRed Desireの前に敗れますが、本戦を勝ちました。その後Singapore Airline's Internationalの連覇を狙いますがLizard's Desireに敗北しました。
Lizard's Desireは南アフリカ産馬で南アフリカ時代は当然芝で活躍しています。Meydanに来てTapetaのトラックに適性を見せてDubai World Cupに参戦し2着するまでになりました。その後は香港、シンガポールと転戦していますから芝に戻っています。一度もダートトラックは走っていません。
Allybarはフランスの重賞クラスで走っていてMeydanのTapetaを使ったらChallenge Round 2を勝っています。その後はまたヨーロッパに戻って芝で走っています。
Gio Pontiはこの年の北米調教馬で最先着していますが、主として芝や合成馬場を走っていた馬で、G1の実績は芝で積みましたし、BC Classicで2着になった時はSanta AnitaのPro-Rideサーフィスでした。ドバイから帰国した後も芝を主戦場とし、Churchill Downsで開催されたBCは芝のBC Mileに出走しています。Dubai World Cupには2011年にも出走し5着に入りました。
Masteryは芝のステイヤーでPro-RideのBC Marathonに出走経験があるくらいです。

2011年: Victoire PisaTranscendMonterossoCape Blanco、Gio Ponti

Victoire Pisaは3歳で皐月賞有馬記念を勝ち、中山記念をステップにしてMeydanに遠征しました。当然のことながらDubai World Cupに出走するまではすべて芝でレースをしています。凱旋後は振るわずにこの年限りで引退しました。
Transcendはデビュー直後に芝で出走した経歴こそ持ちますが、ダートで勝ちあがり、以後すべてダート戦で勝利しています。Japan Cup Dirt、February Sを連勝してドバイに遠征しており、日本のダート馬としては王道となる臨戦です。帰国後もダートで安定した結果を残して翌年もDubai World Cupに挑みますが、このときはステップとなるFebruary Sで7着と負け、本戦は13着に終わっています。
Monterossoはイギリスのオールウェザートラックでデビューし、そこからG2を勝つまでのし上がっています。Meydanでは芝戦のG2勝ちをステップにDubai World Cupに出走して3着。2012年は最初からTapetaのレースで調整してDubai World Cupを勝ちました。
Cape BlancoIrish DerbyやらIrish Championshipを勝った芝の一戦級でした。このDubai World Cupに出走するまで芝にしか出走していないというのはVictoire Pisaと同じです。ドバイ後は活路をアメリカに求めて芝G1を三連勝して終わり。Gio Pontiいじめ。

2012年: Monterosso、Capponi、Planteur、So You Think、Zazou

Monterossoは前述のとおり。
CapponiはLingfieldのPolytrackコースでデビューしています。その後イギリスでハンディキャップホースとして活躍し、ドバイに拠点を移すことになりました。2012年は連勝でChallenge Round 3まで勝っての臨戦で2着に入りますが、Capponiの活躍はそこまででした。
PlanteurはフランスでデビューしてPrix Du Jockey ClubやGrand Prix De Parisを2着など活躍しています。2400mを中心に走っていましたが、古馬になって中距離にシフトし、5歳でMeydanに姿を見せました。それまではすべて芝で走っていますし、その後も芝で活躍しています。2012年に続いて2013年もDubai World Cupに出走して3着に入っています。
So You Thinkニュージーランド産馬で、地元ニュージーランドで活躍した後オーストラリアでも成功し、Ballydoyleによって購買されて欧州に進出しました。そこでも実績を残しています。完全に芝で実績を残してきた馬で、ドバイ後もTattersalls Gold CupとPrince Of Wales's SとG1を連勝して南半球の種付けシーズンに合わせて現役を終えました。
Zazouはドイツ産馬でドイツ時代はG2勝ちまで。Hong Kong Cupに遠征して4着という結果があります。Meydanに遠征する前にChantillyのPolytrackコースに出走しています。

2013年: Animal Kingdom、Red Cadeaux、Planteur、Side Glance、African Story

Kentucky Derby馬としてSilver Charm以来のDubai World Cup勝者となったAnimal Kingdomが北米のメイントラックを舞台に走っていたのは3歳の頃の話であり、古馬になってからは活躍の舞台を芝に移しています。ステップはGulfstream Parkの芝G1 Gulfstream Park Turf Hを2着というものでした。ドバイ後は欧州に渡りますが、Queen Anne Sで敗北して引退しました。
Red Cadeauxはハンディキャップホースとして走っていた時代にイギリスでオールウェザートラックでのレース経験を持っています。芝の長距離で活躍するようになってからはMelbourne Cupに遠征して2着に入り、香港や日本への遠征で名を売りました。Meydanに遠征するという話を聞いた時もSheema Classicだろうと思っていたらDubai World Cup出走で驚いたものですが、それで2着に入ったのでもう一度驚きました。去年一年もドバイの後、日本、シンガポール、欧州、オーストラリア、香港と飛び回って、今年もMeydanのメインレースに出走します。
Side Glanceはイギリスの下級戦から勝ち上がってきた馬で、重賞に通用するようになった際にカナダのWoodbine Mileに遠征しています。他にもKemptonでの出走経験がありますが、基本的には芝で走っていた馬でMeydanでもJebel Hattaをステップにしての参戦でした。
African Storyはフランスでデビューしており、2012年からMeydanのTapedaで走っています。Godolphin所属でSaeed bin Suroorのドバイの厩舎を拠点としている様子で、2012年以後欧州での出走はありません。2013年に初めて大舞台を踏むことになりました。

負けた北米ダート馬たち

2010年にはGio Ponti以外だとRichard's Kidが参戦しています。Richard's Kidは西海岸を活躍の舞台にしており、このころの西海岸は合成馬場ばかりでした。ですのでDel MarのPolytrack、Santa AnitaのPro-Ride、HollywoodのCushion Trackで上位に入る結果を残していますが、TapetaのあるGolden Gate Fieldsでは出走していません。2011年、2012年もMeydanには来ていますが、どうも根本的に合わないような結果に終わっています。2012年には本戦出走を諦めてGodolphin Mileに回る有様。芝は走ってみたけどダメだったという結果ですから、やはり芝を走れない馬ではMeydanのTapetaは難しいということかもしれません。
2011年は前年のBelmont S、Travers Sを2着したFly Downが出走して12着に終わりました。勝つところまでは行かなくとも3歳で他にBC3着も含めてそこそこの実績を持っていました。
2012年はRoyal DeltaとGame On Dudeが出走しています。Royal Deltaは3歳でBCを勝って、明けて4歳となってGulfstreamで軽くたたいての参戦でしたが9着とさっぱりでした。2013年にも前年にBC連覇を決めてから同じ臨戦でしたが10着とどうにもふるいません。Santa Anitaがメイントラックをダートに戻した関係でRoyal Deltaはほとんど合成馬場でのレース経験がありませんでした。Game On Dudeは12着。前年はSanta Anita Hを勝ち、BC Classicも2着と十分な結果を残しての参戦でしたが、全く良いところがありません。Game On Dudeはここぞというところで負けるのでどうかなというのはありますけども、あの時点の成績で12着に負けるのはちょっとね。その後アメリカに戻ったら勝ちまくるし。ただしBCを除く。
2013年はKentucky Derby馬のAnimal Kingdomが勝ったわけだから良いだろと言われそうですが、その陰でRoyal Deltaが10着、Dullahanが11着と散々。

というわけで

Transcend以外の上位馬は芝で少なくとも重賞クラスの実績を有しています。北米のチャンピオンクラスがRoyal Delta程度しか出走していないという事情はあるにしても、Meydanのメイントラックでは比較的芝での実績を求められるコンディションになっていると言えそうです。だからと言って芝で走っている馬がすべて適応するということではないのですし、スプリントではありますがRocket ManがTapetaをこなしたのと対照的に、J J The Jet PlaneがどうにもTapetaを苦手としてAl Quoz Sprintに回ったという事例があります。
北米の古馬路線はこの数年間低迷していて、ドバイでの出走馬が振るわない一因ではあります。それでも今年のDubai World Cupへの出走予定馬に北米調教馬が見当たらないという事態になっており、北米のメイントラックと大きく異なる様相を示すTapetaによるトラックは北米調教馬にとって魅力のないものとなっています。
今年のDubai World Cup開催の出走表を見て思うことは、Dubai World Cupにダート馬2頭を並べDuty Freeには3頭出しなどというくらいなら、Just A WayあたりはDubai World Cupを走ってよ的な。まあそれはSheema ClassicのDenim And RubyとGentildonnaのどちらかってのでも成り立つ感慨ではあるのですが。
とはいえ勝ち時計自体はNad Al Sheba時代の方が速かったんだけどねえ。