Meydan開催でのDubai World Cup上位馬

2010年にMeydanで開催されるようになってからの上位5頭をざっと振り返ってみます。

2010年: Gloria De Campaeo, Lizard’s Desire, Allybar, Gio Ponti, Mastery

Meydan初開催となった2010年はGloria De CampaeoがわずかにLizard's Desireを下して勝利しました。
Gloria De Campaeoは南米血統のブラジル産馬です。ブラジルでデビューしてキャリアを重ねており、当然このころは芝で走っています。フランスに移籍するとDIRCへの遠征を行い、Nad Al Sheba開催最終年ではWell Armedの2着に入っています。一方その後もSingapore Airline's International Cupを勝っており、芝とダートで実績を残していました。2010年もDIRCからの参戦で、MeydanではNad Al Shebaより安定した成績を残し、Maktoum Challenge Round 3ではRed Desireの前に敗れますが、本戦を勝ちました。その後Singapore Airline's Internationalの連覇を狙いますがLizard's Desireに敗北しました。
Lizard's Desireは南アフリカ産馬で南アフリカ時代は当然芝で活躍しています。Meydanに来てTapetaのトラックに適性を見せてDubai World Cupに参戦し2着するまでになりました。その後は香港、シンガポールと転戦していますから芝に戻っています。一度もダートトラックは走っていません。
Allybarはフランスの重賞クラスで走っていてMeydanのTapetaを使ったらChallenge Round 2を勝っています。その後はまたヨーロッパに戻って芝で走っています。
Gio Pontiはこの年の北米調教馬で最先着していますが、主として芝や合成馬場を走っていた馬で、G1の実績は芝で積みましたし、BC Classicで2着になった時はSanta AnitaのPro-Rideサーフィスでした。ドバイから帰国した後も芝を主戦場とし、Churchill Downsで開催されたBCは芝のBC Mileに出走しています。Dubai World Cupには2011年にも出走し5着に入りました。
Masteryは芝のステイヤーでPro-RideのBC Marathonに出走経験があるくらいです。

2011年: Victoire PisaTranscendMonterossoCape Blanco、Gio Ponti

Victoire Pisaは3歳で皐月賞有馬記念を勝ち、中山記念をステップにしてMeydanに遠征しました。当然のことながらDubai World Cupに出走するまではすべて芝でレースをしています。凱旋後は振るわずにこの年限りで引退しました。
Transcendはデビュー直後に芝で出走した経歴こそ持ちますが、ダートで勝ちあがり、以後すべてダート戦で勝利しています。Japan Cup Dirt、February Sを連勝してドバイに遠征しており、日本のダート馬としては王道となる臨戦です。帰国後もダートで安定した結果を残して翌年もDubai World Cupに挑みますが、このときはステップとなるFebruary Sで7着と負け、本戦は13着に終わっています。
Monterossoはイギリスのオールウェザートラックでデビューし、そこからG2を勝つまでのし上がっています。Meydanでは芝戦のG2勝ちをステップにDubai World Cupに出走して3着。2012年は最初からTapetaのレースで調整してDubai World Cupを勝ちました。
Cape BlancoIrish DerbyやらIrish Championshipを勝った芝の一戦級でした。このDubai World Cupに出走するまで芝にしか出走していないというのはVictoire Pisaと同じです。ドバイ後は活路をアメリカに求めて芝G1を三連勝して終わり。Gio Pontiいじめ。

2012年: Monterosso、Capponi、Planteur、So You Think、Zazou

Monterossoは前述のとおり。
CapponiはLingfieldのPolytrackコースでデビューしています。その後イギリスでハンディキャップホースとして活躍し、ドバイに拠点を移すことになりました。2012年は連勝でChallenge Round 3まで勝っての臨戦で2着に入りますが、Capponiの活躍はそこまででした。
PlanteurはフランスでデビューしてPrix Du Jockey ClubやGrand Prix De Parisを2着など活躍しています。2400mを中心に走っていましたが、古馬になって中距離にシフトし、5歳でMeydanに姿を見せました。それまではすべて芝で走っていますし、その後も芝で活躍しています。2012年に続いて2013年もDubai World Cupに出走して3着に入っています。
So You Thinkニュージーランド産馬で、地元ニュージーランドで活躍した後オーストラリアでも成功し、Ballydoyleによって購買されて欧州に進出しました。そこでも実績を残しています。完全に芝で実績を残してきた馬で、ドバイ後もTattersalls Gold CupとPrince Of Wales's SとG1を連勝して南半球の種付けシーズンに合わせて現役を終えました。
Zazouはドイツ産馬でドイツ時代はG2勝ちまで。Hong Kong Cupに遠征して4着という結果があります。Meydanに遠征する前にChantillyのPolytrackコースに出走しています。

2013年: Animal Kingdom、Red Cadeaux、Planteur、Side Glance、African Story

Kentucky Derby馬としてSilver Charm以来のDubai World Cup勝者となったAnimal Kingdomが北米のメイントラックを舞台に走っていたのは3歳の頃の話であり、古馬になってからは活躍の舞台を芝に移しています。ステップはGulfstream Parkの芝G1 Gulfstream Park Turf Hを2着というものでした。ドバイ後は欧州に渡りますが、Queen Anne Sで敗北して引退しました。
Red Cadeauxはハンディキャップホースとして走っていた時代にイギリスでオールウェザートラックでのレース経験を持っています。芝の長距離で活躍するようになってからはMelbourne Cupに遠征して2着に入り、香港や日本への遠征で名を売りました。Meydanに遠征するという話を聞いた時もSheema Classicだろうと思っていたらDubai World Cup出走で驚いたものですが、それで2着に入ったのでもう一度驚きました。去年一年もドバイの後、日本、シンガポール、欧州、オーストラリア、香港と飛び回って、今年もMeydanのメインレースに出走します。
Side Glanceはイギリスの下級戦から勝ち上がってきた馬で、重賞に通用するようになった際にカナダのWoodbine Mileに遠征しています。他にもKemptonでの出走経験がありますが、基本的には芝で走っていた馬でMeydanでもJebel Hattaをステップにしての参戦でした。
African Storyはフランスでデビューしており、2012年からMeydanのTapedaで走っています。Godolphin所属でSaeed bin Suroorのドバイの厩舎を拠点としている様子で、2012年以後欧州での出走はありません。2013年に初めて大舞台を踏むことになりました。

負けた北米ダート馬たち

2010年にはGio Ponti以外だとRichard's Kidが参戦しています。Richard's Kidは西海岸を活躍の舞台にしており、このころの西海岸は合成馬場ばかりでした。ですのでDel MarのPolytrack、Santa AnitaのPro-Ride、HollywoodのCushion Trackで上位に入る結果を残していますが、TapetaのあるGolden Gate Fieldsでは出走していません。2011年、2012年もMeydanには来ていますが、どうも根本的に合わないような結果に終わっています。2012年には本戦出走を諦めてGodolphin Mileに回る有様。芝は走ってみたけどダメだったという結果ですから、やはり芝を走れない馬ではMeydanのTapetaは難しいということかもしれません。
2011年は前年のBelmont S、Travers Sを2着したFly Downが出走して12着に終わりました。勝つところまでは行かなくとも3歳で他にBC3着も含めてそこそこの実績を持っていました。
2012年はRoyal DeltaとGame On Dudeが出走しています。Royal Deltaは3歳でBCを勝って、明けて4歳となってGulfstreamで軽くたたいての参戦でしたが9着とさっぱりでした。2013年にも前年にBC連覇を決めてから同じ臨戦でしたが10着とどうにもふるいません。Santa Anitaがメイントラックをダートに戻した関係でRoyal Deltaはほとんど合成馬場でのレース経験がありませんでした。Game On Dudeは12着。前年はSanta Anita Hを勝ち、BC Classicも2着と十分な結果を残しての参戦でしたが、全く良いところがありません。Game On Dudeはここぞというところで負けるのでどうかなというのはありますけども、あの時点の成績で12着に負けるのはちょっとね。その後アメリカに戻ったら勝ちまくるし。ただしBCを除く。
2013年はKentucky Derby馬のAnimal Kingdomが勝ったわけだから良いだろと言われそうですが、その陰でRoyal Deltaが10着、Dullahanが11着と散々。

というわけで

Transcend以外の上位馬は芝で少なくとも重賞クラスの実績を有しています。北米のチャンピオンクラスがRoyal Delta程度しか出走していないという事情はあるにしても、Meydanのメイントラックでは比較的芝での実績を求められるコンディションになっていると言えそうです。だからと言って芝で走っている馬がすべて適応するということではないのですし、スプリントではありますがRocket ManがTapetaをこなしたのと対照的に、J J The Jet PlaneがどうにもTapetaを苦手としてAl Quoz Sprintに回ったという事例があります。
北米の古馬路線はこの数年間低迷していて、ドバイでの出走馬が振るわない一因ではあります。それでも今年のDubai World Cupへの出走予定馬に北米調教馬が見当たらないという事態になっており、北米のメイントラックと大きく異なる様相を示すTapetaによるトラックは北米調教馬にとって魅力のないものとなっています。
今年のDubai World Cup開催の出走表を見て思うことは、Dubai World Cupにダート馬2頭を並べDuty Freeには3頭出しなどというくらいなら、Just A WayあたりはDubai World Cupを走ってよ的な。まあそれはSheema ClassicのDenim And RubyとGentildonnaのどちらかってのでも成り立つ感慨ではあるのですが。
とはいえ勝ち時計自体はNad Al Sheba時代の方が速かったんだけどねえ。