Breeders' Cup: Journey Thorough the Dark

二年連続でPro-RideのOak Tree at Santa Anitaでの開催となったBreeders' Cup。LA Timesがこの開催に合わせて掲載した合成馬場に対するコラムのタイトルに釣られて土曜に会社で流し読んだらなかなかの内容で、そちらの紹介にも時間を取りたいところですが、まずは初日のレース結果を。

Ladies' Classic - Life Is Sweet

スタートで先手を取ったのは父Tapitから受け継いだ芦毛が目立つCareless Jewel。Lethal Heatが埒沿いからこれを追い、その外にMusic Note、Rainbow Viewと3頭が並んで2番手を形成して1コーナーへ。Provisoが続いて、MushkaとCocoa Beachが並んでその後ろから、そして最後にLife Is Sweetが追走していた。2コーナーから向こう正面に入ってCareless Jewelが後続を大きく引き離すがこれは明らかにオーバーペース。Lethal Heatはつきあわず、後続のペースは落ち着いたものだっただろう。3コーナーに差し掛かる時点でProvisoがLethal Heatの内に入り込み3番手に進出している。Careless Jewelは4コーナーを回って直線に入るところで後続に捕まり、馬群は広がり横一線の直線勝負となった。大外からLife Is Sweetが一気に突き抜けて、内に進路を取ったMusic Noteの脚は伸びない。2着にはこれも外に進路を取っていたMushkaが入り、Music Noteが3着。以下Proviso、Rainbow View、Cocoa Beach、Lethal Heat、Careless Jewelという順に決着した。
レースラップは23.50-22.28-23.96-26.14-12.70の乱ペースで勝ち時計1:48.58。Careless Jewelが22.28などというスプリント戦まがいのラップで明らかに飛ばしすぎた影響は後続が一気に差を詰めた26.14のラップに出ている。逃げて圧勝を積み重ねてきた馬だったが、今回はやり過ぎだった。2番手Lethal Heatは平均的な24秒前後のラップを刻んでいたのではないかな。
Life Is Sweetは父Storm Cat、母Sweet Life、その父Kris S.。通算15戦6勝。John A. Shirreffs調教、Garrett K. Gomez騎乗。Mr. & Mrs. Martin J. Wygodのオーナーブリード。Sweet Catomineの全妹であり、今年の序盤に芝路線で台頭してSanta Margaritaを勝っている。その後AW挑戦を敢行し、Zenyattaを倒すのはこの馬かと期待されたこともあったが、逆にZenyattaの強さだけが際だつという結果になってしまった。どちらも後ろに着けて末脚勝負のタイプなのでZenyattaの鮮やかさを印象づける立場になっていたとも言える。Hollywood Gold Cupにも出走して3着に入るという実績を残しているが、スローペースに嵌められると脆いところがある。今回はLethal Heatがペースを握れば怖いところだったのだが、Careless Jewelの暴走でそれほどペースが落ちず、直線入り口でほぼ横一線の展開になったのが利した。今年になってShirreffs厩舎に移籍し、Zenyattaとは同厩であったが、これまでShirreffs師が使い分けずにぶつけまくったのだが、今回はZenyattaのClassic挑戦で使い分けが成り立った。これでしっかり取るあたりShirreffs師も素晴らしい。
2着Mushkaは前走Spinster SではProvisoの降着を受けて繰り上がり勝利。大きな影響を受けていたのでProvisoを上回っていたことは間違いないが、ここで改めて示すことが出来たと言える。
2年連続で3着に終わったMusic Noteは主戦G. GomezをLife Is Sweetに取られてR. Maraghが乗っていた。その影響もあったのかも知れないが、まあA.P. Indyだからという部分で全て納得することが出来たり。BCを勝つような奴はA.P. Indy産駒と認めない(嘘
Lethal Heatはもう少しペースを落としたかったところだが、BCでそれを望むのは難しかったか。最後は9Fの距離も影響していたように思われる。面白い馬なのでまた頑張って欲しい。

Filly and Mare Turf - Midday

Santa Anitaの芝10Fは3,4コーナーの中間地点がスタートであり、その先の4コーナーではシンボリルドルフを引退に追い込んだメイントラックを横切るという極悪設定だが、スタートが綺麗に揃って大きな影響は無し。内枠から好スタートを切ったVisitが先行してレースを引っ張った。1週目のホームストレッチでは外からVisitに並びかける2番手にDynaforce、その内にRutherienneと着けて、外からMaram、Middayは埒沿いの5番手で、その後ろがやや空いてMagical Fantasy、さらに後ろから外Pure Clanと内Forever Togetherが並んで追走する展開となった。向こう正面でMiddayは内埒沿いに3番手に並びかける位置に上げる一方、Forever Togetherは淡々と最後方のレース。直線に入るとMiddayが内を突いて抜け出し、そのMiddayが開いた進路をPure Clanが突いて一気に迫るが1馬身差まででMiddayの勝利。Forever Togetherは直線で外に出して鋭く伸びるも届かず3着だった。4着には逃げたVisitが粘り、以下Magical Fantasy、Maram、Rutherienne、Dynaforceと決まった。
レースラップは24.14-24.69-24.12-23.13-23.06の上がり勝負。道中で大きく動く馬がない淡々としたレースだった。このペースで中団の馬に切れ味を出されてしまえばForever Togetherは届かないか。Pure Clanは上手く進路が空いていたが、そこを突いて抜けてくる脚は素晴らしかった。
Middayは父Oasis Dream、母Midsummer、その父Kingmambo。通算11戦4勝。Henry Cecil調教、Thomas P. Queally騎乗。Juddmonteのオーナーブリード。今年は英愛のOaksでSariskaに負けるも10FのNassau Sで勝利。10Fがベストという印象の馬だったが、Prix de l'Operaでは3着に敗れている。このくらいの実績ならまだ北米路線の馬でも対抗できるのだが、レースが瞬発力勝負になると欧州馬の強さが際だつという印象。向こう正面で前が空いて労せず良い位置を確保できたのが勝因の一つだろう。Henry Cecil師はBC初勝利となった。
Pure Clanは直線でよく進路を見つけたなと思うが、こういう展開だったら強さが出るのか。現役に残るなら楽しそうだがどうだろう。
Forever Togetherは3着で引退する。2年近くトップに居続けたのだからもう十分だろう。

Filly and Mare Sprint - Informed Decision

Informed Decisionがスタートを決めてレースを引っ張りそうだったが、内からFree Flying Soulが出てきて、Informed Decisionは2番手で落ち着いた。Informed Decisionの外にはSeventh Streetが並んで、大外スタートのVenturaはいつものように控えて後ろから。4番手Sara LouiseでさらにGame Faceが続いている。Venturaの後ろにEvita Argentinaが着け、4コーナーではVentura、Evita Argentinaともに外から捲りに掛かるも、Evita Argentinaはその先伸びず。直線に入るとFree Flying Soulを軽く交わしてInformed Decisionが先頭に立つ。この時点でSeventh Streetは脱落し、外から伸びてくるVenturaとの勝負になるが、Informed Decisionが馬体を並べることすら許さず1馬身1/4差で逃げ切った。Venturaも普段通りの競馬で届かないのは仕方ないか。Informed Decisionは合成馬場だと最後まで止まらない。3着には逃げたFree Flying Soulが粘りきり、以下Sara Louise、Only Green、Silver Swallow、Evita Argentina、Seventh Street、Game Face。Seventh Streetは勝負所で手応えがなく、Game Faceはやはり馬場が合わなかったか。
レースラップは23.23-22.72-23.71-12.00。Free Flying Soulもこれならフロックということはないか。
Informed Decisionは父Monarchos、母Palangana、その父His Majesty。通算14戦11勝。Jonathan E. Sheppard調教、Julien R. Leparoux騎乗。C. Kidder & N. Cole生産でAugustin Stableの所有。今年はKeenelandのMadison SでもVenturaを下しており、合成馬場には自信を持っていた。一方でダートではBallerina SでIndian Blessingと揃ってMusic Noteに負けるといったこともあり、このあたりの結果でもダートと合成馬場は別物といえるだろう。
VenturaはまたしてもInformed Decisionにやられたというところだろう。それでも今年は5戦して2勝、2着3回と素晴らしい安定感。この中に牡馬相手の芝マイル戦Kilroe Mile2着とWoodbine Mile勝ちがあるは特筆に値します。今回出走せず引退となったIndian Blessingも含めて今年の牝馬短距離はタレントが揃っていました。これならこのレースのGI昇格も当然といった感じですし、今後もこういう状況が続けば何よりかなと。
4着は斤量差があったとは言え前走Gallant Bloom HでIndian Blessingに迫った3歳馬Sara Louise。来年に期待ということになるか。

Juvenile Fillies - She Be Wild

Always A PrincessがShe Be Wildを制して先行。コーナーから向こう正面でConnie And Michaelが外から進出して2番手に上がり、She Be Wildは埒沿いの3番手を追走という形になった。有力どころはBlind Luckが中団で、Devil May Care、Negligee、Biofuelは後ろからの競馬。直線半ばでShe Be Wildが粘るAlways A Princessを内から交わし、外ではBlind LuckやBeauticianが、更に大外を回してBiofuelが飛んでくる展開だったが、She Be Wildが粘りきる。2着はBlind Luckとの競り合いを制したBeauticianで、3着がBlind Luck。以下Biofuel、Always A Princess、Negligee、Zilva、Connie And Michael、Ms. Vanessa、Bickersons、Devil May Care、Champagne d'Oro。
レースラップは23.88-24.09-25.44-6.75。
She Be Wildは父Oflee Wild、母Trappings、その父Seeking The Gold。通算5戦4勝で前走Alcibiades SではNegligeeに差されて2着だった。Wayne M. Catalano調教、Julien R. Leparoux騎乗。M. & N. Mazzoniのオーナーブリードでオーナー名義はNancy Mazzoni。父Oflee WildはWild Againの後継種牡馬で名種牡馬を多数出しているGolden Trailのファミリーに属する。叔父にDynafomerである。この世代が初年度産駒にあたり、産駒GIはここが初勝利。

Juvenile Fillies Turf - Tapitsfly

このレースはノングレード戦のまま。
Rose Catherineが逃げてTapitsflyが2番手からの競馬。4コーナーで外から仕掛けたTapitsflyが直線でRose Catherineとのマッチレースに持ち込み勝利。2着Rose Catherine、以下House Of Grace、Hatheer、Jungle Tale、La Nez、Potosina、Lillie Langtry、Smart Seattle、Lisa's Kitten、Elusive Galaxy、Junia TepziaでDad's CrazyとIn The Slipsがスクラッチしている。
レースラップは22.95-24.07-23.31-11.73-12.19とちぐはぐ。
Tapitsflyは父Tapit、母Flying Marlin、その父Marlin。Tapit芦毛産駒は目立ちますね。通算7戦3勝。芝ではSaratogaのP.G. Johnson Sを勝っていた。またメイントラックに変更されたがBelmontのMiss Grillo Sでは2着。それにしてもTapit牝馬に出ると面白い。Dale L. Romans調教、Robby Albarado騎乗。Frank L. Jonesのオーナーブリード。Frank L. Jonesは30年以上馬主をしてきたが、BCに出走させたのはこのTapitsflyが初めてだった。またDale L. RomansもBC初勝利。Dale L. Romans師にとってFrank L. Jonesは父親のJerry Romansの時代から預けてもらっていたということもあり感慨深いだろう。

Marathon - Man Of Iron

今年から距離延長によって14Fとなった。
Man Of Ironは後ろに控える競馬。3コーナーからCloudy's Knightがリードを取り、これをSt. Leger馬Masteryが追い詰めるという展開で直線へ。更に内に進路を取ったMan Of Ironを加えた3頭の勝負となり、Masteryが脱落。内外離れた勝負だったがMan Of Ironがハナ差前で勝利。2着Cloudy's Knight、3着Mastery、以下Gangbuster、Muhannak、Father Time、Eldaafer、Nite Light、Black Astor、Sir Dave。
レースラップは48.23-25.43-25.45-25.25-25.23-24.52。平均ペースではあるか。北米で長距離戦なんてやったらこんなものというラップにしか見えない。
Man Of Ironは父Giant's Causeway、母Better Than Honour、その父Deputy Minister。Belmont S馬を2頭出したBetter Than Honourのスタミナは凄いねといったところだろう。通算10戦4勝で前走はDundalkのAW11F戦を勝っていた。これでAW戦績が4戦3勝であり、明らかにそれに向いたタイプという事だろう。昨年勝ったMuhannakもDundalkのAW11F戦からの参戦で勝っていて、距離実績とかを気にせずAWで実績のある欧州馬で安定するのではないかと思わせられる結果だった。

Las Palmas - Tuscan Evening

おまけのアンダーカード。牝馬限定の芝マイルと狙い所を心得ている条件設定。
で、勝ったのはOasis Dream。