Breeders' Cup Preview Part 1

Part 2があるかどうかは分かりません。先週東京に行った際に、牝馬戦の展望を書くんじゃないかと言われたので書いてみるのココロ。とはいえ今年はClassic、Turf、Mileに有力な牝馬が参戦するので、心が躍る。

Synthetic Track going on

数年前からの合成馬場というトピックについて、本邦でも合成馬場の導入は世界の潮流であるという風の論が活発に見られていた。そういった者たちは、日本にも合成馬場のトラックを導入するように主張していた。しかし、彼らは2008年初頭のSanta Anita開催のキャンセル連発に対して見解を述べることはほとんど無かった。そして2008年にはBreeders' Cupが初めて合成馬場をメイントラックとしたSanta Anitaで開催されている。そのメインレースであるClassicにおいては欧州から遠征したRaven's PassとHenrythenavigatorが、当時ダート路線で最強を誇ったCurlinを悠々差しきっての1着2着という結果に終わっている。こういった進展とは対照的に日本に於ける合成馬場導入の論調は低下していった印象しかない。
北米にあっても競馬場のメイントラックを従来のダートから合成馬場に置き換える作業は停滞していると言わざるをえない。昨年後期からの経済情勢が大きな出費を許さないという見方もできるだろうが、実際にはその経済危機の発生以前から新規の合成馬場の導入などという話はほとんど出ていなかった。Arlingtonに導入したCDIもその後の動きを見せていない。NYRAは興味すら示さない。彼らにとっては所詮西海岸の連中が何かやっているだけという気持ちもあるのではないか。
安全性についてはどうだろうか。これも昨年の話になるがNYRAはレーストラック及び調教トラックの双方に合成馬場を導入する予定が無いことを明言した。その際に安全性について、NYRAのCEOであるHaywardは納得できるデータが出ていないと語り、ある種の怪我はむしろ合成馬場によって増加していることを述べていた。これについては私自身が元データを確認していないので何とも言えないが、NYRAがこうした判断を下していることを示しておく。また、今年のOak Tree開催にあってもCalifornia Cup Classicで1頭が予後不良、もう1頭がレース後に引退に追い込まれる怪我を負っている。斯様に合成馬場だから安全と一様に言い切れるものではなく、合成馬場導入の名分として安全性を持ち出すこともなくなったのではないかと思われる。
さて個人的な印象を語れば、昨年のCurlinの結果も影響したとは思われるが、Rachel Alexandraに合成馬場なんか走らないもーんと言われてしまった時点で北米に於ける壮大な実験は失敗という形で終了している。合成馬場はダートに取って代わるものになり得なかった。現状その実績を考えれば、Rachel Alexandraに忌避されたという事実は限りなく重いのだ。
今年のBCで、馬場を理由として回避したのはIndian Blessingである。「Indian Blessingの調子は問題ないが、馬場が合わない。どうしようもない。苛つく」このように管理するBob Baffert調教師は語っている。なお、Baffert師はかねてから合成馬場に対して批判的な立場であった。昨年Filly And Mare Sprintに出走し2着に入っていることから絶望的にこなせないということもないのだろうが、Baffert師としては二度も馬場のせいで負けたくないといったところか。

Ladies' Classic: Which is the best Second, older or younger?

ZenyattaがClassicに向かうこととなったため、人気は古馬のMusic Noteと3歳のCareless Jewelが分けることとなった。Music Noteは東海岸を舞台としていたため今年はZenyattaと直接勝負していない。昨年はZenyattaCocoa Beachに敗れて3着だった。Careless Jewelも台頭が遅く、Rachel Alexandraが牡馬を相手にするようになってからスターダムに出てきている。ここに西海岸でZenyattaに打ちのめされて輝きを失ったLife Is Sweet、今年はほとんど目立たなくなったCocoa Beachが加わっている。Lady's Secretの2着馬Lethal Heat、Spinsterを勝ったMushka、同2着Provisoと出走し、更には昨年2歳での遠征は控えたRainbow Viewが参戦することになった。
Music Noteが9戦6勝、Careless Jewelが6戦5勝とキャリアは問題無い。どちらもZenyattaがいないこのレースタイトルは是非とも取りたいところだろう。Music NoteはCocoa Beachの援護を受けることが出来るだろうが、今年のCocoa Beachにそれだけの力が残されているかどうか。前走3着で出走体制が整うところまでこぎ着けたと見るべきか。走ってきたレースの相手を考えるとMusic NoteがCareless Jewelを上回っているが、圧勝を繰り返しているCareless Jewelも捨てがたいということだろう。しかしA.P. Indyのここ一番という不安は当然にぬぐい去ることが出来ない。一方Tapitならどうなんだと言われても困るが。
モーニングラインでは最低人気となったLethal Heatだが、彼女はTurf Sprintと両方に登録し、出走するなどと言っていた愛すべきバカである。これを応援せずに何を応援せよというのか。結局Sprint出走は無かったが、Cal Cup Classic2着から、Lady's Secretに連闘して2着と破天荒なキャリアを示している。産駒はDurableと称されるUnusual Heatの面目躍如だろう。9Fの距離が問題になるが、走れない距離ではないだろう。
Life Is Sweetはメイントラック挑戦などせずに芝に拘っていれば幸せになれたのかも知れない。

Filly and Mare Turf: Forever Dreamer

連覇を狙うForever Togetherがモーニングラインの一番人気である。前哨戦はKeenelandを選びFirst Ladyでのんびり構えすぎて届かず3着であった。無理なレースはしておらず、前哨戦なりのレースであったといえるのだろう。今年二度負けているDiamondrellaが出てこないので、Forever Togetherが脅かされる形にはなりにくいのではないかと思われる。
冷静に戦績を見る程にどうしてこうなったと思わずにいられないのがRutherienneである。昨年は7戦して1勝、残りは全て3着であった。今年になっても変わらず5戦して2勝、2着2回と3着が1回である。安定しているし、今年の方が数字の上ではよく見せているが、GIはわずかにDiana Sの3着のみ。そもそもGIに出走してこなかった点に不満がある。前走はBelmontのNoble Damsel Hを勝っているが、今更GIIIを勝って自慢する馬でもなかろう。どうしてもForever Togetherに勝てないのが問題で、今回も直線で決め手の差を見せられてしまうような気がしてならない。
BelmontのFlower Bowlからは勝ったPure Clanと6着のDynaforceが参戦する。今年はこの2頭がセットで走っていた印象がある。Dynaforceに関しては雨でも降ればといったところであろう。Pure Clanにしても今年の実績ではやや見劣りしてしまう。
Yellow Ribbonからは勝ったMagical Fantasy、2着Visitが参戦する。Magical Fantasyの今年はSanta MargaritaでLife Is Sweetに敗れるも、Santa Barbara、Gamely、John C. Mabee、Yellow Ribbonと4連勝。Forever Togetherを倒すならばこの馬という位置にあるのは間違いない。Visitは一枚以上落ちると見なければならないだろう。
欧州からの遠征はMiddayとなった。彼女はかつて遠征してこのレースを勝った欧州馬に匹敵するほどの馬とは思えず、Oasis Dreamの娘ならVisitの方が良く見える。Sariskaあたりに遠征して欲しかったというのが正直なところである。

Juvenile Fillies

期待されたMi Suenoが引退に追い込まれ、モーニングライン一番人気はそのMi Suenoに負けているBlind Luck。Oak Leafを2馬身半差で勝っていることから弱い馬ではないだろうが、Mi Suenoがいればという想いが消えない。人気は割れており、これに続くのが前走のデビュー戦を勝ち上がったばかりのConnie And Michaelである。7馬身3/4差が評価されたが、Frizetteを勝ったDevil May Care、Alcibiadesを勝ったNegligeeより上の評価となるのは疑問である。Oak Leaf2着のAlways A Princess、Alcibiades2着のShe Be Wild、WoodbineのMazarineを勝ってきたBiofuelも出走する。
Devil May CareとBlind Luckの勝負になるのではないかなと。

Filly and Mare Sprint

Indian Blessingはいないが、連覇を狙うVenturaにSeventh Street、Informed Decision、Evita Argentina、Game Faceと実に濃いメンバーとなって楽しみなレースになりそうだ。
Venturaは今年はこれまで4戦しかしていないが全てGIで、2勝、2着2回と文句なしである。牡馬相手でもWoodbine Mileを勝ち、Kilroe Mileが2着と実績を残した。今年はMileに行っても期待出来そうだったし、Goldikovaとの勝負となれば燃え尽きるほどヒートしそうだったが、7Fは最も得意としており、連覇が掛かっているならこれも仕方ないか。充実したメンバーでも8-5という人気になるのだから恐ろしい。
Venturaと真っ向勝負となりそうなのがInformed Decisionである。今年6戦5勝と充実しており、4月のMadisonではVenturaを下している。後ろからのVenturaとの末脚勝負に持ち込んで何とかしたいところだろう。Ballerinaのように序盤に前に行ってしまうとやや保たなくなるので展開に注意は必要か。
Seventh StreetはGodolphinの使い分けでMusic NoteがLadies' Classicに回ったためこちらに出走となった。正直BallerinaでIndian Blessing、Informed Decisionを下した実績があるMusic Noteの方が向いているのではないか。Zenyattaと走るのヤダとか言ってるのが何とも言えない。7Fも未知数。モーニングラインとはいえこんな馬人気にするなよ。
西海岸で実績を持つEvita Argentinaは合成馬場で使われてきて嵌れば怖い存在だが、VenturaにしろInformed Decisionにしろ合成馬場を苦手とするタイプではなく、付けいる隙があるようには思えない。3歳馬はBelmontのGallant BloomでIndian Blessingの2着に入ったSara Louiseも参戦する。鞍上Dettoriは怖い。
Game Faceは合成馬場への適合に疑問を残す。ダートトラックであれば本命の一角として扱えたであろうに。
これだけのレースにIndian Blessingの不在が残念を通り越して勿体ない。

Juvenille Fillies Turf

プレップに指定されているJessamineからは上位3頭、House Of Grace、Smart Seattle、Hatheerが出走するも、もう一つのプレップHappy Ticketからは出走無し、カナダのNatalmaからも2着Jungle Tale、4着Elusive Galaxyの出走という状況。Belmontの芝重賞が雨でダート変更となったため参考にならねえや。