コミックREX 1月号

エスペリダス・オード(堤抄子

かつての勇者の死が、今回の勇者の覚醒を促すという風に考えればありがちな展開ではあるのかな。そして過去と現在の勇者の関係もしかり。ここに至るまでにエルハイアの側の事情がしっかり描かれていたので、この展開はまず避けられないものであったと言うことにはなるだろうが、ちょっと凄惨なシーンではあるなぁ。アースィファはアリア族に対して憎しみを持って勇者になったけれども、アリア族との戦いは酷いもので、また魔族=アリア族ということの意味するところをほぼ察していた。それでも政治に関与しなかったから、そういう社会を変える力を持てなかった。仲間のスハイルに任せてしまったんだけれども、スハイルは元からそうした社会を守る立場の人物であって、勇者たちはそのスハイルに戦いの後のことを全て任せてしまったために、そうした社会を許容してしまった。エルハイアは自身の立場と幼いときの経験からそういう社会で安穏と暮らす人間を許せないというのは前にも出てきていたことではあったし。とはいえこれはエルハイアにとっても最悪の展開であり、アルドを勇者として完全に敵に回してしまったことにはなる。エルハイアにとってはアルドは特別な人間であるわけで、今回は先の勇者に免じてということではあったが、この後に直接対峙したときにエルハイアはアルドを殺せるだろうかという問題があるのではないかな。一方のアルドはこれでアリア族に対する憎しみを持つことになるだろうし、この状況をスハイルあたりが利用してこないわけが無いとも思われる。アルドにとってのエルハイアとはエルハイアが思っているほど特別な存在ではないというのもエルハイアにとっては不幸なのかな。昔エルハイアと接したときはアルド自身がアリア族などのことについて知っていたとは思えないから意識してそうしたということですらないわけで、だからこそエルハイアにとってだけ特別な記憶になっているのではあるだろうなぁ。