競走馬の販路拡大…ねぇ

Brain Squallさまが取り上げておられるこの記事。
Le Moulin de Longchamp: 競走馬の販路を拡大する
近年の輸出頭数が出ていますが、大きな変化があったと思われる年はそこで何が起こっていたかというのを考えると良いかも。
まずは2005年に韓国への輸出が多い件。この年は韓国にて釜山競馬場がオープンするということで、韓国馬事会が競走馬資源の輸入に邁進していた時期に当たります。2004年から日本だけではなく、各地のセリ会場で多くの馬を落札しています。ただし、日本ではおおよそ100万円程度、アメリカでも1万ドルあたりの馬に集中していましたから、購買力としてそう強いものではなかったように思います。日本でサラブレッドを生産したとして幼駒1頭が100万円程度で黒字にするのは難しいのではないかなと素人考えに思う。その一方でJRAだったかJBBAだったかが落札してKRAに寄贈した馬が600万とかですからねえ。
シンガポールの2006年はコスモバルクが向こうで勝って日本馬に注目が集まったからかなと。今年もシャドウゲイトで勝っていますから、シンガポール向けは今年も現時点でそこそこの数が行っているようには見えます。
さて、韓国への輸出頭数がその後一気に減っているのは、韓国の方で競走馬資源が一通り揃ったという事情と韓国が自国生産指向を強めているということを指摘できるかと。Exploit、Yankee Victorが早い時期に韓国に入っていますが、近年はさらにVicar、Commendable、VolponiとGI馬が次々にKRAに購入されました。制度面でも国内生産馬の優遇がかなり行われているようです。ちょっと探したところJAIRの翻訳記事が見つかりましたので、これを参考に。
JAIR海外競馬情報: 飛躍する韓国競馬(韓国)
この記事中に以下のような事が書かれています。

「輸入頭数の制限はありませんが、購入価格には上限があります。馬主は外国で2万ドル(約240万円)以上の馬を買うことはできません」また、輸入馬は出走が制限されていて全体の30%のレースにしか出走できず、重賞競走にも出走制限があり、重賞8レースのうちダービー、オークス、大統領杯など5レースには出走できない。
飛躍する韓国競馬

こういう状況なので、どちらかというと繁殖牝馬を輸入して、韓国で生産を行うという形になっている模様。他にも現状では韓国は規制が強く掛かっているようで、海外から韓国競馬に進出するというのは現実的ではないと思います。
香港への輸出が少ない件についてはとにかく香港の競馬がオーストラリアの競馬と似た特徴を有し、そのオーストラリアから安価な競走馬の輸入が可能であるからでしょう。繁殖を行わない香港ではセン馬の多いオーストラリアの馬でも全く問題がありませんし。日本の場合はそもそも香港で勝負になるほどの馬となるとそう安くは無いだろうし、また、香港は現役馬の輸入が盛んであり、日本での現役馬の流動性の低さというものも影響しているのではないでしょうか。現役馬が上場されるセリが開かれるようになったら少しは状況が変わる気がします。
香港に限らず日本から輸入する場合には馬の価格以上に輸送などに掛かる経費が高すぎるという問題が付き纏うのだと思います。シンガポールの高岡調教師が今は亡き雑誌海外競馬のインタビューでおっしゃるには、日本から輸入するより、カリフォルニアから輸入する方が経費が掛からないということでしたし。結果的にトータルコストで日本の馬は高いというのは否定できないかと。
そのコストの高さをある程度許容してでもとなると、結局のところ欧米に売れるようにならないといけないのではないかなと。これまでにもサンデーサイレンス産駒を買いに海外の有力馬主がセレクトセールに来るというのはあったわけで、そこから進んで日本の馬を買いにくるという状況を作れればという事になるかな。それには日本の馬をもっと外に出して、実力を証明する機会を得に行かないといけないとなるかなあ。サンデーサイレンス産駒だから、社台の馬だから、という状況を越えて日本の馬だからとなればと。
というかですね、日本で売れないような血統の馬を海外に売り込もうたって無理ですよ。どうやったって日本の馬産は高コストになるでしょうし、オーストラリア産馬あたりとコスト勝負をやったら勝てませんよ。だからそれらを凌ぐ価値を持たせないといけないわけですが、普通に考えるとそれは生産になるんですよね。繁殖価値。ということは血統が良くないととなるわけです。
新興市場ですとこの繁殖価値という部分がほぼゼロになってしまうのが難点です。それでいてJRA南関東に限られるとはいえ、国内で走れば高い賞金(及び生産者賞)を期待できるのですから、積極的に新興市場にうってでるインセンティブは働かないでしょう。結局、国内で売れないから海外に売らざるを得ないという形になり、また、そういう血統の馬は海外でも顧みられる事は少ないと考えます。