Queen Elizabeth S: Royal Randwick (Australian Turf Club) Group 1 Turf 2000m

INTRODUCTION

春シーズンのハイライトがメルボルンFlemingtonならば秋シーズンのハイライトはイースター休暇に併せて行われるシドニーのRandwick。かつてのAustralian Jockey Club、現在のAustralian Turf Clubが管轄し、Royalを冠するRandwick競馬場で実施されるオーストラリアで最も権威のある開催です。

Queen Elizabeth Sは19世紀に当時のヴィクトリア女王を称えるQueen's Plateとして1851年に創設された歴史を持ち、1954年にはエリザベス2世女王の訪問を賜ったことで現在の名称であるQueen Elizabeth Sに改称されました。

長い歴史の中で開催条件は変更されており、1986年からは現在と同じ2000mで開催されています。古くから権威のあるレースであり、その勝ち馬にはオセアニアを代表する名馬が名を連ねています。Australian Turf Clubは本レースを”The Championships”と名付けた秋開催のハイライトに位置づけており、総賞金は400万オーストラリアドルだったのですが、出馬表では500万オーストラリアドルに増額されているようです。

そんなことよりQueen Of The Turf SにAlcohol Freeいるんですけど?!Waterhouse厩舎になっていてお前も移籍したんか…的な。あとAustralian OaksにはNZ-AUSのダブルタイトルを狙うPennywekaが来ていますね。そして3200mのSydney Cupには20頭のフィールドにオーストラリア産馬は1頭のみとなってしまい、おぉ、もう…って感じに。

OVERVIEW

常々、オーストラリアの中距離戦でニュージーランド系の馬に賭けてお金を増やしたいなどと妄想しておりました。まさかその機会が降ってくるとは思っていませんでしたね。そうはいってもAnamoeなんかをはっきりニュージーランドルーツと判断しなければならないので皆さんにはおすすめはしません。さらにMontefiliaはKermadec産駒だし、El Patronessもニュージーランド牝系だしと手を広げる模様。

高額賞金で日本のUnicorn Lion、イギリスのDubai HonorとProtagonistが遠征していますし、Alenquerのような移籍馬や輸入馬も押し寄せて簡単ではないかな。そもそも2000mのAnamoeはちょっと信頼しかねるというか去年もこのレースに出て酷いことになっているわけで。

Mo'Ungaから北半球産の上位馬ということでDubai Honour、Cascadian、AlenquerにZeyrekあたりが有力かなと見ていますが、まとめてAnamoeにぶち破られることも考えられるのでそうなったら諦めてAnamoeを賞賛します。

去年はHeavy 10という極端な馬場になってAnamoeとMontefiliaが消し飛んだ実績があり厄介です。

Anamoe: Street Boss - Anamato by Redoute's Choice

オーストラリア産の4歳馬ですが、これをニュージーランド馬と言い切る技術は必要です。

2歳からG1を勝つ活躍を見せ、通算24戦14勝でG1を9勝と現在はオーストラリアの最強馬となったゴドルフィンのエース馬です。3歳まではまだ詰めの甘いレースで取りこぼすこともありましたが、4歳になって完成されたといえます。距離としては2000mがやや苦しく、Cox Plateを勝っていますが、Moonee Valleyは独特のコース形状で距離が持つかどうかの判断はできないでしょう。FlemingtonのMackinnon Sでは4着と今シーズン唯一の敗北を味わっています。

本レースには去年も出走しましたが、重馬場になったことも重なり直線途中で追われず9頭中の最下位に終わって生涯最悪のレースとなってしまいました。

父はStreet Cryの初期後継種牡馬の一角であるStreet Boss。アメリカ西海岸で活躍するスプリンターでしたが、種牡馬としては中距離タイプの実績があります。

母Anamatoも傑物でG1 Australasian Oaksの勝ち馬。その後アメリカのAmerican Oaks Invitationalにも遠征し、南半球産馬として重い負担重量となっていましたがPanty Raidの3着に入っています。2007年でローブデコルテが遠征したときのレースです。

母系は18号族でSarten家が所有したBelle一族です。ニュージーランドを代表する牝系の一つで、現在その本流はSarten夫妻の娘であるMarie Leicesterが所有し、Haunui Farmに預託しています。ここから出たのがG1を14勝したMelody Belleです。したがってAnamoeのボトムラインニュージーランドに由来していることから、ニュージーランド系のお馬さんと判断しましょう。

Anamoeの流れはAnamatoの祖母Electric BelleからSarten家を離れていますが、特定の方向性で固められていた牝系が違った環境に触れた時にそのポテンシャルを一気に解放するのはよくあることで、Electric Belleからの発展もその例に漏れませんでした。Electric Belleの末裔にはAnamato以外にも香港のスプリント王者となったAbsolute ChampionやG1を7勝したオーストラリアの中距離チャンピオンGrand Armeeが出ています。

Dubai Honour: Pride Of Dubai - Mondelice by Montjeu

イギリス調教の5歳馬。前走でRosehillの2000m Ranvet Sを勝ってこれがG1初勝利。3歳時にChampion Sで2着、Hong Kong Cupで4着の実績を持っていますが、去年は映えませんでした。

父Pride Of Dubaiはオーストラリア産のStreet Cry産駒。現役時代は早熟のスプリンターでG1を2勝しました。オセアニアはかなりStreet Cryを好む印象で、本馬もオーストラリアの競馬が合っていたのかもしれない。従兄にInvincible SpiritやKodiacが出て、Green Desert×KrisとStreet Cry×Danehillでは結構違うところもありつつ、スピード豊かなところは共通しています。

牝系はデュプレからアガ・カーンに引き継がれたフランス由来で、そのファミリーからはTarnawaが出ています。

Montjeuミスプロをぶつけるのは良い組み合わせで、母Mondeliceの時点でそれが出来ています。この母は見どころのある血統で、MontjeuKingmambo、Entrepreneur、Darshaanという構成になっており、すなわちDarshaanが下支えして、Sadler's Wells自身のクロスにKingmamboによりNureyevが持ち込まれています。Pride Of DubaiがSadler's Wells系全般と相性が良さそうで、中距離をこなす産駒を出してくることもポイントです。

Alenquer: Adlerflug - Wild Blossom by Areion

ドイツ血統フランス産の5歳馬ですが、今年になってメルボルンのMichael Moroney厩舎に移籍しています。オーストラリアでの初戦となった前走はMoonee Valleyで高額賞金のマイル戦でしたが、全く合わず惨敗しました。距離は短いし、そもそもMoonee Valleyの周回コースの結果はあまり参考にできませんが。

Cascadian: New Approach - Falls Of Lora by Street Cry

イギリス産馬ですがオーストラリア歴が長いGodolphinの2頭目。やや短い距離を主戦場とし2000mはギリギリ範囲内といったところですが、8歳になった今年は2000mのG1 Australian Cupを勝っています。

Mo'Unga: Savabeel - Chandelier by O'Reilly

Savabeel→O'Reilly→Centaine→Imposing→Wharf→Oncidium→Summertimeとさかのぼる如何にもニュージーランドという血統馬。オーストラリアでデビューしこれまで25戦5勝。2000mのG1 Rosehill Guineas勝ちの実績を持ちますが、良績はもう少し短いところで、1400mのWinx Sも勝っています。前走はRanvet SでDubai Honour、Montefiliaに次ぐ3着。今シーズンはMackinnon Sで2着の実績もあって、Anamoeに負け続けのイメージですが2000mだと逆転の可能性を持っています。

牝系はコロニアルナンバーのC20号族。ニュージーランドに根付いた系統で近親にはステイヤー牝馬Chenilleが出ています。

Numerian: Holy Roman Emperor - Delicate Charm by High Chaparral

アイルランド産の7歳馬。前走はAustralian CupでCascadianの2着。欧州時代はリステッド勝ちがせいぜいで重賞では上位に来る程度でしたが、去年からオーストラリアに移ってG2のQ22 WFAを勝ちました。クイーンズランドのG2戦とはいえ賞金120万AUDでそれなりのメンバーが揃ったレースでした。今シーズンは前走の他は初戦のG2 Hill Sで2着が目立つ程度。ここでもCascadianに負けていますがMontefiliaには先着しています。

Unicorn Lion: No Nay Never - Muravka by High Chaparral

アイルランド産の7歳馬ユニコーンライオン。一昨年は条件戦からの連勝で挑んだ宝塚記念で2着に逃げ粘って名を上げました。その後怪我で1年の休養を余儀なくされ、復帰後は福島記念を勝ったとはいえ、いまいちな結果が続いています。

出走馬の相手関係を考えれば大阪杯よりは可能性があると思いますが、Randwickの2000mで大外から逃げるのは相当不利になるので厳しいでしょう。

8号族h分岐のDustwhirl支流で、半兄には2歳G1馬The Wow Signalが出ています。兄はあまりにも早く引退し、そして亡くなってしまいました。その兄の年齢を超えてなお現役のユニコーンライオンですが、父がNo Nay Neverでよくここまで保っているというべきでしょうか。

Zeyrek: Sea The Stars - Zerkava by Dalakhani

フランス産の6歳馬。母の名前でピンと来る人もいると思いますが、祖母があのZarkavaで、Zerkavaはその初仔です。まあ、Dalakhaniに行くのかよと言われた時の仔とも言えます。

そういったわけでアガ・カーンがフランスでデビューさせ、4戦2勝。3歳でデビューが遅れたこともありますが、リステッドでも2着に入るくらいには能力があったものの早々に手放されオーストラリアに移籍しました。フランス時代のリステッドではAlgiersの2着という実績もありました。

中長距離志向のタイプだと思いますが、それだとオーストラリアではレース選択に苦労し、適距離ではないレースにも出走していることもあって通算成績では20戦5勝。今年になってようやく軌道に乗った印象はあり、Sky High Sで2着、Neville Sellwood S勝ちとRosehillの2000mG3を連戦して結果を残しての参戦となりました。Dalakhani牝馬Sea The StarsとなるとMiswakiのクロスが生じ、Miswakiの特徴を強く持っているのであれば本格化後は侮れなくなります。

Progtagonist: Wootton Bassett - Sagariya by Shamardal

フランス産の6歳馬で、イギリスのHaggis厩舎からの遠征扱いですが、去年末にAustralian Bloodstockを中心としたシンジケートがオーナーとなっており、ほぼ移籍したものと考えてよさそうです。なので今年はオーストラリアに滞在しており、G3 Sky High SでZeyrekを下し、前走はG1 Doncaster Mileに出走し、連闘での出走になります。

ヨーロッパでは重賞への出走はなく、ハンデキャップホースでした。これがオーストラリアに来ていきなりG3を勝ってしまうのですから、オーストラリアの2000mクラスのレベルが疑問視されても仕方のないところです。

キャリアをあさっていたらGalwayのハンデキャップ戦で謎の日本産馬Crowns Majorに負けていてなんだこれはと思ったのですが、調べたらジャックドールの半兄で二度びっくりしました。

オーストラリアあるあるなので連闘になっているのは気にしなくてよいと思います。

Gear Up: Teofilo - Gearanai by Toccet

アイルランド産の5歳馬。今年からオーストラリアに移籍して、初戦の前走がG3のNeville Sellwood SでZeyrekの3着。2歳でG1 Criterium De Saint-Cloudを勝っていますが、3歳以降はさっぱりで、去年はCurraghの14FのG2 Curragh Cupで2着という実績もありますが、基本的には中距離路線の馬です。

Grey Flightにさかのぼる5-f族で、AdjudicatingやTime For A Changeを出したResolverの系統に属していますが、近年はあまり活躍馬が出ていませんでした。

Hezashocka: Shocking - Shezakiwi by Brilliance

ニュージーランド産の5歳馬。

ニュージーランドでデビューすると3戦目のG2 Trelawney Stud Champion Sで初勝利。その後オーストラリアに移籍しました。移籍後はMackinnon Sで3着の実績がありますが、基本的に重賞では敷居が高いタイプです。前走はAustralian Cupで5着。

Montefilia: Kermadec - Bana Wu by Shirocco

オーストラリア産の5歳牝馬。今シーズンは勝ち星に恵まれていませんが、シドニーエリアの中距離戦で良績を残す牝馬です。Ranvet Sで2着、Tancred Sでも2着とG1を連戦しての出走となります。Ranvet SではDubai Honour、Montefilia、Mo'Ungaという結果ですが、Dubai Honourにはちょっと差を付けられています。同条件のG2 Hill SではCascadian、Numerianに次ぐ3着ですが、こちらも勝ち馬とは少し差がありました。去年のこのレースでは8着に敗れていて極端に馬場が悪化すると厳しいかもしれません。

El Patroness: Shamus Award - Sure You Can by O'Reilly

オーストラリア産の4歳牝馬ですが、ニュージーランド牝系の出身です。

去年のAustralian Oaks馬ですが、今シーズンは不振で、前走のAustralian Cupでは7着に終わりました。

従姉にQueensland Oaksを勝ったProvocative、遠縁にDelago BromやWalton Streetがでる17号族のNZ土着牝系です。3代遡ったIceletteが活躍馬で引退後にオーナーだったWaikato Studで繁殖入りして牝系のクラスが上がっています。母Sure You CanはChittick家の手を離れてオーストラリアで競争生活を送ったのちに繁殖入りしEl Patronessを産みました。