History breaking foreigner will come on February S

フェブラリーSの特別登録が発表されましたが、事前登録のあったShirl's Speightは来日日程も発表されており、どうやら本気でフェブラリーSを走るようです。なので、軽くバックグラウンドの紹介をしましょう。以下の内容の一部はThoroughbred Daily NewsがFipkeのアドバイザーを務めるSid Fernando氏に取材した次の記事を参考にしています。

In Historic First, Fipke's Shirl's Speight To Run In February S. In Japan

オーナー: Charles E. Fipke

Charles E. Fipkeはカナダ出身で地下資源の探索に従事する実業家である。カナダでのリアルなシーキングザダイアで知られ、その代表的な所有馬であるTale Of Ekatiは彼を含むグループが発見したダイアモンド鉱山の名称に由来して名付けられた。

80年代より競走馬のオーナーブリーダーとして活動しており、本業もそうであるが、カナダのみならず世界各地で活動し競走馬を所有する。メインはカナダで名調教師Roger L. Attfieldの顧客の一人であり、Woodbineでの出走が多い。JRA馬主資格も有しており、カナテープを所有している。

所有馬の命名は父と母の名を組み合わせたものになることが多く、Forever UnbridledUnbridled Foreverの姉妹も彼のオーナーブリードであった。カナテープにしてもロードカナロアティッカーテープからの合成馬名である。フェブラリーSに出走するShirl's Speightsも父Speightstownと母Perfect Shirlからきているし、Perfect Shirl自体がその父Perfect Soulとその母Lady Shirlに由来している。

2022年のG1級で活躍したのはShirl's SpeightとLady Speightspeareで、その馬名から知れる通りいずれもSpeightstown産駒で、Lady Shirlを祖母に持つ従兄妹の間柄である。Shirl's SpeightがBC Mileで2着ならLady SpeightspeareはBC Filly And Mare Turfで3着であった。また、フランスで生産しアイルランドに預けていたSpirit GalをBC Juvenile Fillies Turfに出走させている。

Shirl's Speight

5歳馬。去年はMaker's Mark Mileを勝ち、Breeders' Cup Mileでは人気薄ながら2着に入っており、芝マイルの活躍馬である。

2020年に3歳になってからのデビュー戦からしてWoodbineの芝戦であったが、2戦目のG3 Marine SはWoodbineのオールウェザーすなわちポリトラックであった。デビューから連勝して3戦目がG1のWoodbine Mileで、新星として注目を集めたが勝負にならなかった。その後は雌伏の期間となりレースに間隔が空いていたり、芝にもダートにも出てみるという状況であった。

2022年にTampa Bayの芝戦で久しぶりの勝利を挙げると芝重賞路線に向かいG3 Tampa Bay S、G1 Maker's Mark Mileと連勝を決める。その後は距離を延ばしたG1 Turf Classicで4着に終わるとダートのG3 Salvator Mileに出てMind ControlとHot Rod Charlieのたたき合いを後ろから見るに終わった。ダートはその1戦で終わってまた芝に戻るとG2 Connaught Cup、G1 Woodbine Mileと出走するも勝負のファクターになるような存在にはなれなかった。

こうした戦歴からBC Mileでは人気を大きく落としてしまったが、内で我慢すると直線入り口でModern Gamesに馬体を併せに行くように進路を取って2着に入り波乱を演出した。直線でModern Gamesが斜めに切れ込んでいったためRegal Gloryとの間に挟まれる影響がありながら、脚色が衰えずIvarをとらえ、最後にはKinrossの追撃を凌ぎ切ったのは見事と言える。

戦績を見るならば芝向きの馬だろうと思われるが、Salvator Mileを見ているとダートで走ること自体に問題はないと見える。

父Speightstown

父Speightstownは大種牡馬Gone Westが後期に残した傑作で安定した産駒成績が売りの種牡馬である。今年で25歳と高齢であるが、近年でも100頭前後の種付けをこなしている。

産駒成績はダートのやや短距離に寄っているイメージだが、芝ダートを問わず中距離までならこなす万能の種牡馬である。産駒で最初にG1を勝ったのがフランスのLord Shanakillであったし、日本でもモズスーパーフレア高松宮記念を勝ちリエノテソーロはNHKマイルで2着の様な実績がある。10Fでも初期にHaynesfieldを出し、去年もJockey Club Gold Cupを勝ったOlympiadが出ている。

問題はG1を複数勝つような産駒が出ないことで、これといった代表産駒を挙げるのが難しいところである。種牡馬実績を踏まえればMunningsということになるだろうか。現状唯一のG1 2勝馬であるRock Fallは調教中に倒れ安楽死措置となっているし、CharlatanはArkansas Derbyの失格がなければMalibu Sを併せて2勝を挙げていたことになる。

母父Perfect Soul

母の父Perfect SoulはSadler's Wellsを父に持つCharles E. Fipkeのオーナーブリードホースであり、北米の芝マイル路線で活躍した。カナダの名調教師Roger L. Attfieldが管理し、G1はKeeneland Turf Mileの1勝のみだが、カナダの芝チャンピオンに選出されている。種牡馬入り後はPerfect ShirlやSeeking The Soulを得た。いずれもCharles E. Fipkeのオーナーブリードである。

Fipkeには大事にされ、他の活躍馬も上位はほぼ彼の生産馬であるし、種牡馬を引退した後はFipkeが引き取って牧場で余生を過ごしている。

Lady Shirlファミリー

祖母Lady ShirlからのファミリーはFipkeの生産馬でも活力のあるファミリーであり、特にSpeightstownと相性が良く活躍馬が続出している。

Lady Shirlは北米芝の活躍馬で遡ればStrikingに至る名牝系の出身である。G1 Flower Bowl Invitational Sを勝っているが、長く現役にとどまり7歳シーズンいっぱいで引退した。繁殖入り後、Theatricalの晩年の名馬Shakespeareを産んだ。ShakespeareがG1を勝った2005年にKeeneland NovemberにTheatricalを受胎して上場され、Fipkeが落札し、以後はFipkeの所有である。

この時のTheatrical産駒がLady Shakespeareで、彼女はG1には届かなかったが芝重賞で活躍した。Lady Shakespeareは繁殖入り後に欧州に送られてGalileoを付けるなど非常に期待されているのが分かる。北米に戻ってSpeightstownを父に産まれたのがLady Speightspeareで、2歳のG1 Natalma Sを勝っている。その後もWoodbineを中心に活躍を続け、先日のPegasus World Cup Turfで4着に入ったのを最後に引退繁殖入りとなった。

Shirl's Speightの母Perfect ShirlはLady Shakespeareの一つ下であり、Lady Shirlを手に入れたFipkeが最初にその相手に選んだPerfect Soulの産駒となる。Stacelitaが吹っ飛んだBreeders' Cup Filly And Mare Turfの勝ち馬である。

Perfect Shirlの全妹にShirl's Soulがおり、未出走のまま繁殖入りしているが、Speightstownとの間にSpike's Shirlを産んでおり、これがこのファミリーにSpeightstownを付けた最初の産駒である。

Fipkeの生産になる3頭の牝馬の繁殖履歴を見ているとSpeightstownかMore Than Readyかという判断があるようで、Perfect ShirlではSpeightstownが優位であるが、Lady Shakespeareからは孫でMore Than Readyを父とするReady For The LadyがG3を勝っている。

フェブラリーS

2月にはサウジアラビア、3月にはドバイと国際招待レースが開催される中で、Shirl's Speightは渡航費が自費となるフェブラリーSへの出走となる。北米の芝G1タイトルがあり直前のBC Mileで2着なら招待を受けられないこともないと思われるが、日本への遠征を決断したのはCharles E. Fipkeだからというところに理由をつけるしかない。もっともその後はDubai Turfを視野に入れているようで、そうなると日本に来る分の負担で済むようである。

フェブラリーSにはすでにJoao Moreiraを確保しているようで、勝負は掛けてきているのだろう。

TDNの記事において、Sid Fernando氏は遠征の理由を2点あげている。一つにはFipkeが日本での馬主資格を持つオーナーであるということ。もう一点は日本にも繁殖を送り種付けをしているということ。カナテープの存在もあり、ノーザンファームとの関係が深いようだ。

こういう事情があるから一般化するような遠征ではないが、フェブラリーSに海外から遠征馬が来るというだけで興奮するので歓迎する。

楽しもうではないか。