2022年のFrankelとGalileo後継種牡馬

今年のG1馬を見ていて、Frankel産駒が去年をはるかに上回るペースで勝っていたのでちょっとまとめようと思ったら、余計なものがいっぱい付け加えられたといういつものパターンでまとまりのない記事です。

FrankelのG1馬

Frankel 2008(BMS: DanehillDanzigNorthern DancerNearctic

まずはFrankel産駒の今年のG1馬から。

  • Outbox(カタール
  • Converge(オーストラリア)
  • Homeless Songs(アイルランド
  • Inspiral(2勝: イギリス、フランス)
  • Nashwa(2勝: フランス、イギリス)
  • Westover(アイルランド
  • Alpinista(2勝: フランス、イギリス)
  • McKulick(アメリカ)
  • Onesto(フランス)

カタールのAmir Trophyを勝ったOutboxを入れているのは私の趣味である。

Frankelは現役時にマイル戦で圧倒的な戦績を残し、最後は中距離も制して14戦無敗、最強馬としての評価をゆるぎないものとして引退した。種牡馬入り直後では初年度産駒のソウルスターリング、モズアスコット、CracksmanがG1を勝っているが、それでも生産界の期待に応えたとは言いにくいものであり、2年目、3年目の産駒からもG1馬こそ出すものの、大物産駒を得られないといった状況が続いていた。

この状況が変わったのは2021年で、春先にオーストラリアでHungry HeartがAustralian Oaksなどを勝って頭角を表すと、その6月にはイギリスでAdayarがDerbyを、Hurricane LaneがIrish Derbyを勝った。また古馬ではドイツでAlpinistaが台頭しており、この年に亡くなった父Galileoからリーディングサイアーの座を奪取した。

今年に入ってもFrankelはここまで9頭で12勝という圧倒的な成績である。特に3歳のマイルからクラシックに強く、Homeless Song、Inspiral、Nashwa、Westover、McKulick、Onestoを出した。

なお去年の年間で8頭が14勝なのだからすでにこれに匹敵している。去年これを上回っていたのはDeep Impactの12頭で17勝だけであるが、今年のFrankelはこれを超える可能性が十分にある。年間でG1馬が10頭を超えたのは近年ではDeep ImpactGalileoだけであったが、Frankelもここに並びそうである。

Frankel以外のGalileo直系

Frankelはすごいといったところで、ではFrankel以外のGalileo直系の現状を確認しよう。

Galileo 1998(BMS: MiswakiMr. ProspectorRaise A NativeNative Dancer

Galileo直仔はイギリスとアイルランドオークスをTuesdayとMagical Lagoonで制して健在であるが、その他には香港のRussian Emperorと長距離のKypriosとなり、世代交代は明らかである。

TuesdayとMagical LagoonがまとめてAlpinistaに蹴散らされたYorkshire Oaksは象徴的なレースだったと言える。

Galileo後継一代目種牡馬産駒

今年G1馬を出している種牡馬のみ挙げる。

Teofilo 2004(BMS: DanehillDanzigNorthern DancerNearctic
Cima De Triomphe 2005(BMS: DanehillDanzigNorthern DancerNearctic
  • Wild Ones(アルゼンチン)
  • Una Arrabalera(アルゼンチン)
New Approach 2005(BMS: Ahonoora→Lorenzaccio→Klairon→Clarion)
  • Cascadian(オーストラリア)
Nathaniel 2008(BMS: Silver Hawk→Roberto→Hail To Reason→Turn-To)
  • Desert Crown(イギリス)
Ruler Of The World 2010(BMS: KingmamboMr. ProspectorRaise A NativeNative Dancer
Intello 2010(BMS: DanehillDanzigNorthern DancerNearctic
Australia 2011(BMS: Cape CrossGreen DesertDanzigNorthern Dancer
Gleneagles 2012(BMS: Storm CatStorm BirdNorthern DancerNearctic
Churchill 2014(BMS: Storm CatStorm BirdNorthern DancerNearctic
  • Vadeni(2勝: フランス、イギリス)

Galileo後継種牡馬でも初期産駒はかなり淘汰が進んでおり、2008年産のFrankelやNathanielですら古い方に分類される。2008年以前で産駒がまだまだ活躍しているのはFrankel、Nathanielに加えてNew ApproachとTeofiloで、それ以外は南米のCima De Triompheの様にニッチな領域で勝たせているにとどまる。Cima De Triomphe産駒のWild OnesはPalermoのGP Gilberto Lerena勝ちでダートの2200mというレースである。

New ApproachとTeofiloは初期の活躍馬でともにJ.S. Bolger厩舎に所属した。後継種牡馬としての実績も十分にあり、Teofiloの方がステイヤー領域までカバーする分実績で上回っている。Bolgerがこの2頭に見せるこだわりは並外れており、Mac Swineyという怪配合馬でG1を勝ったのは記憶に新しいところ。リバもアリなので業が深い (cf. Boundless Ocean)。

すでに母父としての実績も積みつつあり、今年だけでもNew ApproachはModern Games、TeofiloはCoroebusやDreamloperを得ている。

Nathanielはデビュー戦と引退戦のChampion SをFrankelとともにした。種牡馬入り後、初年度産駒から名牝Enableを出し、その後も牝馬の活躍馬が続いていたが、今年は待望の牡馬G1勝ちをDesert CrownがDerbyで決めるという最高の結果を得た。しかしその後脚部不安を発症したDesert Crownはキングジョージを回避し出走の目途が立たなくなっている。

Ruler Of The Worldは半兄にDuke Of Marmaladeを持ち、自身は3戦無敗でDerbyを勝ったという輝かしい実績であるが、Derby以降がぱっとしないまま4歳まで現役を続けた。引退後Coolmoreで種牡馬入りするが恵まれた環境とはいいがたく、すぐにフランスに送られ、今年からはイタリアに移っている。

IntelloはWertheimer兄弟の生産馬でフランスで現役を送り、Prix Du Jockey Clubを勝った。安定した戦績ではあるがG1は仏ダービーのみで凄みに欠ける。種牡馬としてはCheveley ParkとHaras Du Quesnayを行ったり来たりとなっている。

Ouija Boardを母に持つAustraliaは英愛ダービーに加えてInternational Sを勝つ実績で種牡馬入りした。初年度産駒こそ振るわなかったが、2年目の産駒からGalileo ChromeとOrder Of Australiaが出て、以後もコンスタントにG1馬を出している。

Gleneaglesは母You'resothrillingがGiant's Causewayの全妹であり、自身の全姉妹のMarvellous、Happily、Joan Of ArcもG1を勝っており、他のきょうだいもG1で2着程度の実績なら軽く持っているという血統である。その中でもGleneaglesは2歳から活躍し、3歳では英愛の2000 GuineasとSt. James Palace Sを勝って3歳マイラーの頂点に立った傑物である。しかしその後はエントリーするも回避を繰り返し、10月になって復帰したものの以前の輝きを見せることのないまま引退した。Coolmoreで種牡馬入りし、初年度からHighland Chief、2年目からLoving DreamとG1馬を出して順調なスタートを決めている。

Churchillも2歳からの活躍馬で、3歳になると英愛の2000 Guineasを勝ったが、St. James Palace Sで負けると距離を延ばしたがうまくいかず、最後はダートのBC Classicを走って引退した。今年の3歳が初年度産駒にあたり、VadeniがPrix Du Jockey ClubとEclipse Sを勝った。

Galileo後継二代目種牡馬産駒

Kermadec 2011(BMS: Fuji Kiseki→Sunday Silence→Halo→Hail To Reason
  • Montefilia(オーストラリア)

後継二代目はまだ出始めで、初期の二枚看板であるTeofiloとNew Approachの次代が実績を上げている。KermadecはTeofiloがオーストラリアにシャトルされていた時期にニュージーランドに持ち込まれた産駒である。

この他にG1馬を出したことがあるのはTeofilo産駒のHavana GoldとNew Approach産駒のDawn Approachである。Poetic Flareを出したDawn Approachが少し抜けているか。