30th Breeders' Cup @Santa Anita Park

30回目のBreeders' Cupになる今年は例年以上にBCの歴史を振り返る的な特集が多くあって楽しませていただきました。久しぶりに事前に出走馬などチェックしていましたので、その辺をだらだらと。
今年は去年に続いてSanta Anitaでの開催。来年の開催もSanta Anitaに決まったということですし、このところはSanta AnitaとChurchill Downsでばかりになってしまいました。かつてテキサスのLone Star Parkでの開催を決めた時のようなお題目はどこに行ったやら。ま、経済状況の変化やらLone StarとMonmouthで懲りたとか考えられなくもないですが。開催地のことはこのところのBCが抱えている問題の一つということで、その辺のことも込みで現在Breeders' Cupの議長を務めるLane's EndのWilliam Farishの記事が出ており、読み応えがありました。
Farish: BC Needs Consistent Host-Site Plan | BloodHorse.com
Breeders' Cupは種牡馬登録や産駒登録の形で広く登録料を集めて賞金の原資としていましたが、今では総賞金の2700万ドルに対して登録料収入が1200万ドルと半分にすら届いていないと。そんな状況なのでスポンサーからの資金が重要となっているものの、イベント全体のタイトルスポンサーを獲得できず、レース毎に個別のスポンサーがついているのが現状と。
Santa Anitaは今年が7回目の開催で、来年で8回目。もちろんBCをホストする回数はトップです。これに続くのがChurchill Downsで6回の開催実績を有しています。これに続いて複数回の開催実績を持つのはBelmontの4回、HollywoodとGulfstreamの3回といったところ。
しかしこれ、Belmontoを持つNYRAが手を挙げなかったらこの二ヶ所の他に開催するところあるのかなとも思わされますね。Hollywood Parkは無くなってしまいましたし、Canadian Turfの開催時期を直前に持ってきているWoodbineが誘致するとも思えませんし。
久しぶりにレース前に出馬表を見ました。かつて初めての二年連続開催となった2009年のSanta Anitaでも連覇する馬が多く出ましたが、今年もそんな傾向がありそうです。今年の出走馬のうち去年のBCで勝っているのは次の8頭となります。(去年勝ったレース→今年の出走レース)

  • Fort Larned (Classic→Classic)
  • Little Mike (Turf→Turf)
  • Royal Delta (Distaff→Distaff)
  • Wise Dan (Mile→Mile)
  • Trinniberg (Sprint→Sprint)
  • Groupie Doll (Filly and Mare Sprint→Filly and Mare Sprint)
  • Beholder (Juvenile Fillies→Distaff)
  • Mizdirection (Turf Sprint→Turf Sprint)

欧州からの遠征馬は合計16頭で、TurfのThe Fugue、ClassicのDeclaration Of War、MileのOlympic Glory、Juvenile Fillies TurfのVordaなどが有力馬として参戦してきます。
今年の2歳戦ではフロセミド(商品名:ラシックスまたはサリックス)を使用せずに行われます。Farishの記事を読んでいるとラシックスを使わない開催を目標とはするものの、そこまでは難しいようですね。来年はまた使用可能となるようですし。
では、適当に各レースについて。

Classic

去年の上位馬が揃って上位人気を占める形となりました。
去年このレースを勝ったFort Larnedですが、今年の古馬戦線の中心を担うというわけにはいきませんでした。G1ではStephen Foster Hを勝っているものの、Whitney Hで5着に敗れています。臨戦もG1を選ばずにChurchill Downsのノングレード戦を叩いて来ました。BC Classicを連覇となればTiznow以来のことで、Tiznowも2年目のシーズンはパッとしない成績ではありましたが、今年のFort Larnedはそんなものじゃないので、これで連覇されてもとは思いますね。
Morning Lineで一番人気に設定されたのはGame On Dudeです。去年は圧倒的な一番人気に支持されての出走でしたが7着と惨敗しています。ただ、その1ヶ月後にNative Diver Hを勝つとそこから無敗でBCに戻ってきました。高額賞金のG2 Charles Town Classicを取りに行きましたが、それ以外は西海岸に残り、Santa Anita H、Hollywood Gold Cup、Pacific Classicをスイープ、Santa AnitaとDel Marは好時計で圧勝という無敵モードに入っています。Pacific Classic以来の出走となることと6歳以上でBC Classicを勝った例がないあたりが不安材料になるようです。とはいえBC Classicでまともに勝負できるレベルの馬を6歳まで現役で引っ張るケースが少なくて、6歳以上は出走していないような年もかなりあります。またZenyattaやかつてのCigarなんぞは勝負の綾的な敗戦で通じないことはありません。Game On Dudeも大丈夫でしょう。
前哨戦は東のJockey Club Gold CupをRon The Greek、西のAwesome Again SをMucho Macho Manが勝ちました。ここにGame On Dudeを加えると古馬のいつもの面々になるということでお察し。どちらも前哨戦を勝つことで何とか評価をもとのレベルに戻してきたにとどまります。Morning Lineでは4番手なのにRon The Greekの空気感半端ない。
かつて一時期、Jockey Club Gold CupはBC Classicへの臨戦として不向きとされ、Woodward Sから直行する方が良いとされたこともありましたが、Curlin以降は遠征馬のRaven's Passと牝馬Zenyattaとを除けばずっとJockey Club Gold Cupを使った馬が勝っています。これはRon The Greekが貰ったな(勝ち馬はCurlin以外来ていないことからは目を逸らす。
3歳のG1馬はPalace MaliceとWill Take Chargeが出走します。Palace MaliceはTraversでWill Take Chargeに負け、その後のBelmontでRon The Greekにぶっちぎられてはダメでしょう。
Aidan O'BrienとBallydoyleの挑戦はDeclaration Of Warを送り込んできました。今年Queen Ann SとInternational Sを勝ってG1を2勝。ダートは初挑戦ですが、欧州でPolytrackやFibersandの経験はあります。まあ、どれか走らせるというのならDeclaration Of Warを選んだのは間違ってないのでしょう。今年ならGame On Dudeさえ何とかなれば勝機はあります。

Distaff

6頭しかいませんが、三連覇を狙うRoyal DeltaにPrincess Of SylmarとBeholderが挑む展開で燃えます。
Royal Deltaはよほど馬場が合わないのか今年もMeydanで大敗していますが、アメリカに戻るとDelaware Hを圧勝して貫録を見せています。前哨戦となるBeldame SではPrincess Of Sylmarに敗北したのが少し気がかり。
Princess Of SylmarはKentucky Oaksを勝った3歳馬で、その後CCA Oaks、Alabama Sも圧勝して3歳に敵なしとなりました。前走ではついにRoyal Deltaまで下しています。ただ、どちらも照準をこちらに合わせてのレースでしたからそこがどう出るか。Princess Of Sylmarは西海岸が初めてというあたりでややマイナスかな。
Beholderは去年のJuvenile Filliesを勝ち、今年もSanta Anita Oaks勝ちからKentucky Oaksを2着。その後Gary Stevensを鞍上に迎えた復帰戦とZenyatta Sを快勝して臨みます。西海岸にずっといて、休養も十分な状態で大一番を狙います。
Royal DeltaのWilliam I. MottとPrincess Of SylmarのTodd A. PletcherはそれぞれClose HatchesとAuthenticityを2頭目として参戦させます。Close HatchesはG1を連勝しての参戦となるわけですが、どうも上位3頭とは差がありますね。

Turf

The Fugue参戦。去年はFM Turfに出走して3着だったThe Fugueですが、今年は一段強くなっている印象はあります。遠征馬が少ないこともあってか、牡馬相手に回ってきました。このレースの連覇を狙うLittle MikeはTurf ClassicでBig Blue Kittenを下して何とか格好をつけてきましたが、The Fugueが相手ではきついでしょう。
全体としてはThe Fugueが中心となり、Little Mike、Big Blue Kitten、Point Of Entry、Indy Pointの北米勢との勝負です。今年9Fと10FのG1を連勝してきたPoint Of Entryはもともと12Fを余裕でこなせるだけに、久しぶりに12Fに戻ってきて期待ができます。

Filly and Mare Turf

The FugueがTurfに回ったので混戦ですが、レベルは高くなさそう。
FM Turfはこういうことがあるから、そのタイミングで日本からちゃんとしたレベルの馬が遠征したらとれそうだけど、勝って何の意味があるのかと言われたら困ります。

Mile

Morning LineでEvensになったWise Danに挑むのが遠征馬Olympic Gloryという構図になりました。Moonlight Cloudならもっと楽しめたんですが、仕方ないのでOlympic Gloryで我慢してやります。
Silver Maxは馬場変更となったKeenelandのTurf MileでWise Danを下しましたが、芝でWise Danをどうにかできる馬ではないと思います。

Dirt Mile

10F戦で2度の惨敗を喰らったVerrazanoが一番人気。Monmouthの9Fなら圧勝するわけで、More Than Readyらしさに溢れて楽しい。大一番で勝ちきるだけの力はなさそうですが、このメンバーが大一番かといわれるとそうでもなく、何やかやで勝つところまで見えるのが何とも言えません。

Sprint

今年の西海岸のスプリントG1を両方勝ち、一番人気になることが確実だったPoints Offthebenchが土曜の調教中に骨折しそのまま安楽死処置となりました。
これで中心は東のトップPrivate Zoneとなりましたが、Justin Phillipらとは差がなく混戦。
去年勝ったTrinnibergは今年不振で、結局前走でも建て直せていませんでした。去年のBCも人気薄の一発ではあって、今年その再現を期待するのは無理でしょう。

Turf Sprint

Mizdirectionが安定しているからそれで十分に見えます。

Filly and Mare Sprint

前走で負けたけど評価が揺るがないGroupie Dollが人気。去年ほど抜けた人気ではないにせよ7Fが得意な感じですし妥当なところかな。

Marathon

Ever Riderが人気になっているものの、どの馬が勝ってもおかしくない混戦という評価。Ever Riverはアルゼンチン調教馬で6月にPalermoのG2 General Belgranoを勝ってBC Marathonの出走権を得ました。これは去年のCalidoscopioと同じです。欧州からくるオールウェザー経験馬の次はアルゼンチンのダートステイヤーに持っていかれるという結果になりますか。

Juvenile

Strong Mandateが勝つ以外の結果を認めるつもりはありませんが、14頭立ての大外枠を引いており心が折れそうです。
Havanaも13枠を引いてしまい、これはもう荒れるなと。

Juvenile Fillies

Artemis AgroteraとSweet Reasonの勝負になるレースですが、前者が1枠、後者が外の9枠と枠順に恵まれませんでした。ややSweet Reasonが有利でしょう。

Juvenile Turf

全くわからん。

Juvenile Fillies Turf

Alcibiades Sを勝ったMy Conquestadoryがこちらに回ってきました。Woodbineの芝戦でも勝っていますから問題ないでしょう。
去年はフランスのFlotillaが勝ちましたが、今年はCheveley Park Sを勝ったVordaが参戦してきました。Prix Mornyで2着、Robert Papinも勝っていると北米調教馬より能力は上です。

結論

Game On Dudeマジキチ。
北米のメインストリームは去年から危惧されていた通り4歳馬が弱いままにBCまで来てしまいました。Cross TrafficがWhitney H、AlphaがWoodward Sを勝ちこそしたもののそれだけで、揃ってJockey Club Gold Cupで大敗を喫していては話になりません。結果的にBCの前哨戦となる東西のG1を勝ってまとめてきたのはMucho Macho ManとRon The Greekで、そこにFlat Outが安定して絡んでくるような状況は去年と変わり映えしません。3歳馬の台頭もなく、人気上位は去年も走っていた古馬連中というのが今年のBC Classicです。
Fort Larnedでは難しいでしょうが、実績があり、今年もそれに準じた結果を残してきたRoyal Delta、Wise Dan、Groupie Doll、Mizdirectionは連覇の可能性がかなり高いと見ています。Royal DeltaにはPrincess Of Sylmarという強力なライバルが現れていることもあり、このDistaffが今年もっとも楽しみなレースとなっています。