アグネスタキオンの思い出

正直言ってあまり無い。
2000年終わり頃から2001年の前半ってのはいろいろあって競馬に力を注げなかった時期だし、余裕があったらトゥザヴィクトリーを追いかけていたので。
そういった中でアグネスタキオンといえば、弥生賞に良い馬が出走してくると話題になったのでボーンキングに注目していたら、軽々5馬身差を付けていった事を思い出します。その後の皐月賞でおぉっと思わせられたけれども、それが最後のレース。
種牡馬としても期待出来ないと思っていて、初期の産駒が長持ちしないのを見たときにはやっぱりそんなモノかとね。それはダイワスカーレットが出てきて桜花賞を取ったときにすらまだ引きずっていた思いです。3歳いっぱいのダイワスカーレットの活躍でようやく払底されました。だから種牡馬アグネスタキオンを真っ当に見られた期間もまた短いのです。
とはいえ種牡馬として8シーズン稼働していますし、毎年の種付け頭数から考えれば優に1000頭を超える産駒を出した事にはなるんですよね。何というか11歳ということを重く見るか、8シーズン種付けしていたという方向で捕らえるかでやや印象の変わる面はあるかなと。とはいえリーディングサイアーをこの若さで失うのは惜しいの一言に尽きます。そういったこともあって何かまとまらない面が強くあります。
ところで何となく目についた検索リファ。
アグネスタキオン 種付け数 多すぎ (by ググル先生)
さて、どーなんだろ。結局のところそういう印象でしか語れないわけだし、多頭数種付けと死亡の因果関係なり相関関係なりを示すのは難しいとは思われます。そういった場合、厳密には種付け頭数ではなく、種付け回数を問題にすべきですが、一応そこは同値ではないけど等価と見ておく。
多頭数種付けは日本だけの話ではなく、シャトルで人気になる種牡馬なら年間300頭を超えるし、北米とオーストラリアのトップはシーズン200頭を超える種付けをこなします。
種付けシーズンというのは種牡馬が死にやすいシーズンであるというのは事実で、その種牡馬の種付け頭数の多寡に関わらず、今回のアグネスタキオンの事例のような心臓発作で死亡といったニュースは比較的よく目につくものです。日本でそういう死が強く印象に残っているのはCoronado's Questですなあ。これはJBBAの種牡馬でした。
社台の人気種牡馬の早世が目立つからそういう話になるのだろうけど、最近の事例としてエンドスウィープアドマイヤベガなら種付けの多寡を持ち出すのは間違いと言えるのではないでしょうか。エンドスウィープは種付け中の骨折が原因になっていますが、種付けが多いことを直接の原因とするのは無理があるでしょう。アドマイヤベガの死は種付けとは無関係に起こったものです。似たような人気種牡馬の早世は北米でもSaint LiamやVindicationが失われていますし、欧州ならDubai Millenniumが最初のシーズンで亡くなっています。その血統などからもいろいろと言われることがあるエルコンドルパサーにしても腸捻転ならそういった影響という問題では無いと思っているんですね。もうちょっと冷静な、データに立脚した議論をしたいところです。
アグネスタキオン急死に問う、社台スタリオンの種牡馬稼業と管理 - りきおの雑記・ブログ
社台の独占についてはかつて何度か書いたことがあるんですが、社台の責任にしてしまうのは話が違うとは思っています。社台に対抗すべき種馬場あるいは牧場がどれだけの手を打ってきたんだろうと。無策だったとは考えていませんが、成果を得ることが出来なかった。一方で社台がサンデーサイレンスという種牡馬を得た幸運はあるでしょうけど、数多くの繁殖牝馬を輸入し、サンデーサイレンスというブランドを創り上げた努力は買われるべきです。強者に制限を掛けた競争によってレベルアップが成されるとは思えません。
あと、サイアーリーディングだったら、英愛リーディングにおけるCoolmoreの独占状態もかなりのものです。
アグネスタキオン急死 種付け頭数制限を導入せよ:馬の写真with余計な一言:So-net blog
現代の馬産というのはIndustryという単語を宛がわれる様に、産業の側面を強く持っているんですよ。他の生産者が社台に圧倒されたというのなら、結局のところそれは社台より優れたサラブレッドを生産出来なかったということであって、強すぎる社台のせいで競馬が面白くないという類の意見に同意できないのはそういった事を強く思うからです。社台と同じ事をしていては勝てないというのなら、社台とは違った方法をとらなければなりません。規模のメリットを享受する社台の方法を、規模で劣る生産者が模倣しても勝てるわけがないのです。

種付けを朝から晩までやっている時期は
当然、種も薄くなる。
しかし繁網期を過ぎると種は濃くなる。
やはり、やり過ぎはよろしくないと言う事か?

濃い薄いは受精させられるかどうかでしかないので、多少薄かろうとも受精させられるのなら問題無いでしょう。
宝塚記念の展望 - ちゅうのうぶろぐ
真っ当な批判ならともかく、いわれのないただの中傷罵詈雑言まで相手にする必要は無いでしょう。アグネスタキオンを失って最も痛手を受けるのは他ならぬ社台であり、ただの印象であれこれ言ったところで何の益もありません。
私は何度かGiant's Causewayの種付け頭数が多すぎると書いたことがあります。それはセールにおいてGiant's Causeway産駒の落札額が伸びない、明らかに頭数が多い事で価値を損なっていると感じるからです。そういう意味では人気商売におけるバランスの問題はあろうかと思いますが、その側面からの制限は種牡馬所有者が判断することですし、生産者がそれを受けてどういう行動を取るかという事に過ぎません。
ある種牡馬繁殖牝馬が集中するのは種牡馬所有者側の問題ではなくて、繁殖牝馬を持つ生産者側の問題なのです。種牡馬は選択される側でしかないのです。